著者
辻 恵 渡邊 肇子 井合 瑞江
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.266, 2015

はじめに短腸症候群は小児における小腸機能障害の最多原因である。小腸移植の対象であるが、我が国の移植医療の現状では未だ経静脈栄養を半永久的に必要とする病態であり、家族・本人の抱える負担は大きい。われわれは先天性多発小腸閉鎖術後に短腸症候群となった脳性麻痺児に長期経静脈栄養管理を行った例を経験し、発達支援と管理上の問題点について検討する。症例34週2870g、Apgar scor5/7で出生。臍帯損傷による重症貧血、DICを認めた。先天性多発小腸閉鎖の診断で日齢16に回盲部を含む小腸を大量切除し残存小腸は6cmであった。短腸症候群のため中心静脈栄養管理が開始された。脳室周囲白質軟化症、症候性てんかんを合併。2歳1カ月で在宅へ移行したが、自宅での養育困難となり3歳5カ月で当施設入所。入所時の発達レベルは定頸までで、発語なし、刺激による啼泣が多く情緒不安定さが見られた。この時点で中心静脈ルート入れ替えの既往がすでに5回あった。使用したすべての中心静脈に血栓形成を認め、入所後も感染と閉塞、入れ替えを繰り返した。6歳8カ月時、左鎖骨下静脈の血栓除去術と中心静脈カテーテル再挿入後、抗血小板薬内服を開始したところ消化管出血から出血性ショック、敗血症となり集中治療を要した。6歳10カ月現在、経静脈栄養主体で少量の経腸栄養と経口摂取を併用し安定が得られている。未だ移動運動は不可であるがあやし笑い、聴覚刺激に対する表情変化や上肢の探索行動がみられ緩徐ながらも知的発達が見られている。考察脳性麻痺に加え中心静脈ライン維持の困難さは、在宅養育の難しさを容易に想像させる。度重なるカテーテル感染の完全制御は困難でエタノールロックなどの特殊対応をせざるを得ず医療依存的な状態といえる。今後は残存小腸の延長術も検討されており、安定したエネルギー供給と発達促進が期待される。多臓器に障害を抱えた本児への包括的対応が発達発育支援に不可欠であると考えられた。