著者
栗田 孝昭 井合 知 北脇 信彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.331-339, 1993-04-25
参考文献数
8
被引用文献数
41

テレビ電話やテレビ会議などのオーディオビジュアル通信を経済的,効率的に提供するため,信号の高能率符号化や通信衛星,ATMなどの技術の通信網への導入が検討されている.これらの技術は信号の伝搬遅延時間を増加させるため,通信品質を劣化させる可能性がある.伝搬遅延が通信品質に及ぼす影響は電話による音声通信において多数検討されているが,オーディオビジュアル通信における検討例は少なく,音声に映像が加わったことによる遅延品質への影響は十分に把握されていない.本論文ではオーディオビジュアル通信における遅延品質規定に資するため,音声通信とオーディオビジュアル通信における遅延品質を主観評価試験により測定し,両通信の品質を比較することにより映像の有無が遅延品質へ及ぼす影響を検討した.その結果,音声と映像の遅延時間が等しい通話では,映像の有無による遅延品質への影響は認められず,遅延品質の支配的な要因は音声の遅延時間であることが明らかになった.また,音声と映像の遅延時間が異なる通話における許容遅延時間を検討した結果,音声の許容遅延時間は音声と映像の遅延時間が等しい通話の許容遅延時間に等しく,かつ音声と映像の遅延差は音声と映像のずれの検知限まで許容されることを明らかにした.