著者
名部 正彦 馬場 健一 村田 正幸 宮原 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-1, 通信1-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.pp.428-437, 1997-06-25
参考文献数
12
被引用文献数
107

インターネット・インフラの高品質化を目指すためには, インターネット・トラヒックの特性を考慮した容量設計が重要であるにもかかわらず, 十分に明らかにされていなかったのが現状である. 本論文では, インターネット・アクセスネットワークにおけるWWWトラヒックの分析とモデル化を行い, アクセスネットワークの遅延特性について検討している. まず複数の組織のサーバの利用記録を分析し, モデルの作成に必要となるWWWのトラヒック特性を明らかにしている. 次いで分析結果に基づき, アクセスネットワークをM/G/1/PS (プロセッサシェアリング) システムでモデル化しネットワーク設計に必要な遅延時間特性について検討している.
著者
浅見 重幸 田子 晃 小林 保
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.519-527, 1996-08-25
被引用文献数
9

有線LANはケーブルを使用するため,機器の設置,再配置にコストがかかる.また,工場や構内の情報化に伴い,移動体との情報通信を含めたシステム化への要求が増加し,無線LAN利用への要望が高まっている.今回我々は,2.4 GHz帯直接スペクトル拡散変調方式(DS-SS)を用いた伝送速度2 Mbpsの無線LANシステムを開発した.本装置は, IEEE802.3 (イーサネット)インタフェースを備え,ユーザが使用している既存ネットワークOSを変更することなしに,無線化できる特長を備えている.本論文では,SSモデムのビットエラー率(BER)の測定結果,多重アクセス制御(MAC)の計算機シミュレーション結果,バッファサイズの検討,および室内伝搬特性としてフレームエラー率の測定結果を示す.更に,LANシステムとして実効データ伝送速度測定結果を報告する.
著者
村本 充 石井 望 伊藤 精彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.J78-B2, no.6, pp.454-460, 1995-06-25

移動体通信端末のアンテナは形状と共に小さくなり,その電気的特性は著しく劣化している.小形かつ高性能な携帯機を実現するためには,アンテナを高効率化することが重要となる.その際,重要なパラメータとなるのが放射効率であり,Wheeler法を用いて簡易に放射効率の測定が可能である.この手法は,アンテナをラジアン球程度の大きさのキャップで覆うと入力電力が損失電力に等しくなるという仮定に基づいて実施される.しかし,この仮定が成立しなければ,計算されるWheeler効率は正確な放射効率とならない.実際にWheeler法を用いた放射効率の測定を行うと,測定値は理論的な値と異なる落込みを生じることがある.本論文では,キャップをワイヤグリッドで近似し計算機上でWheeler法のシミュレーションを実現している.そこで,問題の落込みが測定方法に起因するものではないことを明らかにし,その原因として,キャップをかぶせたとき内部のリアクティブな電磁界が変化しないというWheeler法適用の前提条件が成り立っていないことを示している.また,Wheeler法に使用するキャップの大きさがラジアン球より大きい場合でも十分適用可能であることを示し,その適用限界について検討している.
著者
合志 清一 苗村 昌秀 和泉 吉則 山口 孝一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.290-298, 1993-03-25

本論文は,MUSE方式の色信号処理に関するものである.動画領域の画質を改善するために色差信号をフレーム単位で処理する新手法を提案すると共に,コンピュータシミュレーションの結果について述べる.提案する手法を用いると色差信号の2次元伝送可能帯域が2倍となり画質が向上する.本手法は現行のエンコーダおよびデコーダに導入することも容易であり,現行のMUSEシステムとのコンパチビリティも保たれている.
著者
山中 直明 塩本 公平 長谷川 治久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.542-553, 1997-07-25
被引用文献数
2

本格的なマルチメディア通信網の実施を目指して, 新しいコンセプトに基づいたネットワークアーキテクチャ, フレキシブルマルチプロトコルエミュレーションネットワークALPEN(An A__-TM Multi-P__-rotocol E__-mulation N__-etwork)を提案する. ALPENでは, ATMレイヤの各種プロトコル, 例えば, ABR(Available Bit Rate), FRM(Fast Resource Managment), SHM(Short Hold Mode)プロトコル等をシンプルでかつ単一な中継網で実現する. 各種プロトコルは, WAN(Wide Area Network)のエッジのノードでエミュレーションされ, 中継網の状況把握は周期的なルートの空帯域情報等の性能チェックによりのみ行う. 新しいサービスやプロトコルを導入する場合も, エッジノードのみの変更により実現できるため経済的でかつフレキシビリティに優れたネットワークアーキテクチャである. ALPENでは, エッジノードが周期的に事前にルートの帯域情報を知っているため, ユーザの帯域要求変更に対して高速に応答できる可能性がある. 特にWANのようなRTT, (Round Trip Time, 周回時間)が長い網では, 応答性能の問題を解決する可能性がある. 周期的ルートの空帯域情報は分散的にエッジノードが入手しているが, 情報が古い可能性や, 複数のエッジノードで独立に処理を行う必要がある. そこで, 統計的な手法により実効的な空帯域を推定し, かつ複数のエッジノードで許可した帯域変更が中継線で重複する(オーバブッキング)ことも統計的に設計する. 本論文では, この統計的な帯域変更の手法についても述べる. 本論文で提案したALPENは, 各種サービスやプロトコルの混在する将来のマルチメディア時代において新サービスの追加や多様で不確定なネットワークサービスに柔軟に対応できるネットワークアーキテクチャと考えられる.
著者
尾形 努 高野 和夫 河野 勝 吉田 一樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.719-726, 1993-10-25
被引用文献数
3

通信用電源システムには,バックアップ用として鉛蓄電池が使用されている.鉛蓄電池は,通常は維持充電が行われ,停電発生時に放電し,通信機器への電力供給を継続する.停電発生時に,鉛蓄電池から電力を供給できなければ,社会に及ぼす影響ははかりしれないものがあるため,NTTの各事業所は,鉛蓄電池の容量試験を行って,規定の容量以下のものは,取替えを実施している.現在の容量試験法は,作業時間が20時間以上と長時間に及ぶため,保守者の負担が大きく,簡便に行える劣化判定法の確立が強く望まれるようになった.本論文では,鉛蓄電池の劣化のメカニズムを整理し,内部抵抗と劣化,すなわち容量減退が極めて相関性が強いことを説明している.次に,この内部抵抗を求める手段として,極めて短時間の充放電特性測定が有効であることを述べ,500μs以下の充放電特性測定から求めた内部抵抗と容量の相関性が極めて強いことを明らかにし,これらの相関図より劣化判定が可能であることを述べている.
著者
長澤 正氏 椋本 介士 福田 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 1993-01-25
被引用文献数
1

流星が大気圏に突入する際に生ずる電離気体柱により,見通し外の無線通信路が確率的に設定できることが知られ,この通信路を用いて効率良くデータ伝送を行うために多くの伝送制御手順が発表されている.この通信路は任意の2地点間に独立に発生するという特徴をもつので,異なる複数の地点から同一メッセージを一つの局に送信することができ,それにより当該メッセージの受信確率を向上させることができる.この特徴を利用して,受信に成功した局がそのメッセージを他の局に中継送信することにより伝送時間を短縮できると考えられる.しかし,今までこのような中継に関する研究はほとんどされていなかった.そこで本論文ではその一形態として,放送システムにおいて無条件拡散中継方式と呼ぶ中継方式を提案し特性を解析する.この方式では受信に成功した局が無条件に中継放送するという形態がとられる.ここで考察された代表的な数値例の場合,未受信の局が残らない確率が99%以上になる放送時間を,受信局数が2局の場合で約2/3に短縮できることが示され,2局以上では更に短縮でき,20局程度で改善効果が飽和することが示される.また30局程度から逆に悪化することが示される.
著者
南 英城 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.728-737, 1996-11-25
被引用文献数
1

ブロック符号の軟判定復号法には種々のものがあるが,線形符号および非線形符号の区別なしに適用可能で,所要の計算量が少なく特性の優れた方式は少ない.本論文では,受信信号の2値判定系列でユークリッド距離比較を行う符号語の候補をテーブルを参照することによって限定し,最ゆう復号法に近い特性を維持しながら計算量を削減する方式を提案した.非線形符号であるβ符号を対象に提案方式の有効性を確認するため加法的ガウス雑音伝送路およびフェージング伝送路におけるブロック誤り率特性と計算量を計算機シミュレーションで検討した.その結果,加法的ガウス雑音伝送路における提案方式のブロック誤り率特性は,チェイスの第2アルゴリズムの特性とほぼ等しく,最ゆう復号法からの劣化は微小であった.計算量については,最ゆう復号法に比べて大幅に(約1%に)削減が可能であり,チェイスの第2アルゴリズムよりも削減できることがわかった.一方,フェージング伝送路では,提案方式のブロック誤り率特性は,最ゆう復号法の特性に比較してE_b/N_0で1dB程度劣化したが,チェイスの第2アルゴリズムに比較して良好な特性であることが確かめられた.また,BCH符号への適用や4値判定系列に対する候補語のテーブルを用いた擬巡回符号/4値ASKへの適用も検討し,良好な結果が得られた.
著者
外山 昌之 岡田 実 小牧 省三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.271-277, 1996-05-25
被引用文献数
22

本論文では,光ファイバマイクロセル方式においてスロット付きアロハ方式に最大比合成マクロダイバーシチを適用することにより,伝送特性を改善する新しいマイクロセルパケット伝送システムを提案し,その伝送特性の解析を行っている.提案システムでは,制御局において受信信号をすべて用いるのではなく,受信電力の高い信号を選択した後最大比合成を行う.このため,ハードウェア規模を増大させることなくダイバーシチを構成することが可能である.端末の分布がサービスゾーン内で一様な場合および分布に偏りがある場合について,スループット特性およびパケット送信成功確率を計算機シミュレーションにより解析する.その結果,提案ダイバーシチ受信方式により高いスループットが得られることを示す. また,端末分布が集中する領域においても高い送信成功確率が得られることを示す.
著者
若原 俊彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.494-506, 1998-08-25
被引用文献数
8

近年のマルチメディアの普及に伴い, ATM-LAN等が大学や企業等を中心にさかんに導入されている.本論文は, ATMネットワークをPVCモードにより遠隔の講師と受講生の間でリアルタイムの講義空間を実現するため, 予約ベースで講師端末と複数の受講端末間にポイント・ポイントVCコネクションおよびポイント・マルチポイントのVCコネクションを併用する質問者切換型遠隔講義システムを提案する.本システムは, あらかじめ予約した時刻に講師と複数の受講端末間にポイント・ポイントおよびマルチポイントのATM-PVCコネクションを同時に設定する回線設定サーバと, そのVCコネクション上に映像・音声・データのTCP/IP通信, MPEG2通信を実現しインタラクティブな講義空間を提供する講義サーバから構成され, 一人の受講者が順次, 講師に質問しながらリアルタイムの遠隔講義を進めることができる.本システムの構成法およびパラメータ設定法について述べると共に, ATMネットワークを用いて遠隔講義サービス実験を行い伝送特性等を測定してその有効性を確認した.
著者
堀江 等 尾崎 透 白井 秀行 飯塚 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.953-966, 1993-12-25

2値画像の符号化・復号化プロセッサImPC(Image Pipeline Codec,MN86063)のアーキテクチャ,性能評価,装置への応用例について述べる.ImPCは高機能ファクシミリに必要な2系統(以下2チャネル)の符号化機能,2チャネルの復号化機能,主走査・副走査方向の解像度変換機能,符号変換機能,DMA転送機能を1チップに集積した.ImPCは符号器,復号器,解像度変換器のパイプライン化と画像の入出力,符号化または復号化,解像度変換を並列処理によって高速処理を実現している.符号化方式は,MH,MR,MMRと非標準符号化方式である.ImPCは100nsのマシンサイクルで,4,096画素の1ビットの白黒交番パターンを約0.84msで符号化または復号化できる.A4サイズの平均的文書画像は,約0.17秒で符号化または復号化できる.ImPCチップは1.2ミクロンCMOSプロセスで,98mm^2上に約48OKトランジスタを集積して実現した.
著者
及川 弘 西野 正和 山森 和彦 牧野 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.66-74, 1994-01-25
被引用文献数
3

音声スイッチ回路(VS)は,マイクロホンとスピーカを用いて拡声通話を実現する通信機器におけるエコー抑圧やハウリング防止などに広く使用されている.また,最近では,エコーキャンセラの性能を補完する形で,エコーキャンセラと併用して使用されることも多い.加藤らは,このVSをアナログ回路を利用して実現する際の動作特性と設計法について詳しく検討し,音響・側音特性の変化に自動的に適応して切換え損を小さくできる自動損失切換え形VS(ALS)を提案している.しかし,このALSは,アナログ回路のみで構成するため,設計が複雑で,今以上に切換え損を小さくすることは極めて困難である.そこで,本論文では,マイクロプロセッサ(μP)を用い,プログラム制御でALSの機能を実現することで優れた通話性能が得られるプログラム制御形音声スイッチとして(1)全通話帯域に適用するもの(Type A)と,(2)通話帯域を分割し各通話帯域ごとに適用するもの(Type B)とを提案する.
著者
黒木 祥光 太田 諦二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.672-679, 1995-11-25
被引用文献数
8

21世紀をにらんだシステムとして考えられている超高精細画像は約4,000本もの走査線を有し,極めて高品質な画像となっている.本論文は超高精細画像の静止画符号化を行うものである.超高精細画像を,その高画質性を損なうことなく符号化するには,予測符号化が有効と思われる.そこで,予測方式としてHDTVの高能率符号化法として提案され,フレーム内符号化に用いられている外挿内挿予測[1]を採用する.外挿予測誤差は1次元ハフマン符号で符号化する.一方,内挿予測は外挿予測に比べ予測効率が高い[2].更に,本論文で使用する画像は画素間の相関が極めて高いため[9],量子化代表レベルが0になる確率が高くなる.従って,本論文では内挿予測符号化において,予測誤差を2値化した後,その2値情報をJPEGで採用されている算術符号の一種であるQM-Coder[4]で符号化する手法を提案する.2値情報を符号化する際,参照画素の条件付きエントロピーの均一性に着目し,情報量を増加させることなく状態数の低減を行った.画像符号化シミュレーションを行った結果,外挿内挿ともに1次元ハフマン符号で符号化した場合に比べ,本手法はビットレートが0.350〜0.458bits/pel低減され,1.653bits/pel以下でSN比50dB以上の高品質な画像を得ることができた.
著者
藤谷 宏 奥谷 武則 水野 俊郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.31-40, 1996-02-25
被引用文献数
2

既存網(電話網, N-ISDN網等)を統合して, ATMによる広帯域ISDN (B-ISDN)網を構築するためには, STMデータとATMセルとの相互変換を行うATMアダプテーションレイヤ(AAL)処理,すなわちセル組立分解処理を最適に,経済的に実現することが重要な課題である.経済的実現の要は一つの回路で任意速度の多数のチャネルのAAL処理を行う多元速度多重処理技術である.本論文では, AALタイプ1の多元速度多重処理を実現するための技術として,(1)多重化された各チャネルのセル生成タイミングの偏りにより生じるセル送出待ち遅延の発生を抑える技術, (2)_n×64 kb/sの任意速度に対応したセル受信時の揺らぎ吸収バッファ制御技術,に着目して検討を行った. (1)については多元速度通信において各チャネルの速度とSTM回線上で割り当てられるタイムスロット(TS)位置とからセルの生成タイミングを導出するアルゴリズムを求め,遅延時間縮小化の効果を考察した.(2)については,より少ない制御メモリ量で実現する方法を検討した.これらの技術を用いることにより,2,000 ch 規模のAAL多重処理回路のLSI化が実現可能となる.
著者
渡邊 敏明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.216-226, 1994-04-25
被引用文献数
8

B-spline曲面は各ポリゴン頂点値に画像処理を与えるだけで,発生曲面に処理を施したのと同様な結果を得ることが可能である.そこでB-spline曲面上の点の値を画像データに対応させ,この曲面を発生させるポリゴン頂点を符号化対象とする圧縮方式が確立できれば,原画像に対してではなく,圧縮されたデータつまりポリゴン頂点に対して直接画像処理が適用できることになるため,処理画像の蓄積,伝送,表示が一段と効率的になる.従来このような曲面の圧縮符号化への応用は検討されていなかったが,本論文では上述のようなメリットを有するB-spline曲面を画像の圧縮符号化に応用する場合の適用手法とその性能について考察する.シミュレーション検討の結果,曲面発生のためのパラメータとポリゴン頂点数を画像の絵柄に応じて適応的に設定することにより,従来のDCT方式と同等以上の性能が得られ,B-spline曲面が圧縮符号化にも十分応用できることがわかった.
著者
渡邊 敏明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.445-453, 1996-06-25
被引用文献数
2

圧縮されたデータに直接画像処理が適用できる符号化方式として,筆者らはさきにB-spline曲面を用いた画素値変化の近似手法(B-spline符号化)を提案し,圧縮効率についても従来のDCT方式と同等以上の性能が得られることを示した.一方,画像データを扱う各種圧縮符号化システムのなかには, 1枚の画像に対してあらかじめ設定された符号量で符号化を終了することが要求される場合がある.しかしB-spline符号化に関しては,このような符号量制御問題はいまだ検討されていないのが現状である.本論文では,上記問題点に対する実現手段を提案し, B-spline曲面の圧縮ツールとしての性能を強化することを目的としている.ここでは符号化レートが設定されたときに,絵柄の細かさや実際の発生符号量に応じて,ブロック単位での適応的なフィードバック処理を行うことによって符号量を制御している.性能評価の結果,従来のDCT方式と同等以上の圧縮性能を保ったまま,実際の発生符号量と設定符号量とのずれが1%程度におさまることが示され, B-spline符号化においでも符号量制御が実現可能であることが確認できた.
著者
渡邊 敏明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.694-703, 1996-10-25
被引用文献数
1

圧縮されたデータに直接画像処理が適用できる画像符号化方式として,我々は先にB-spline曲面を用いた画素値変化の近似手法について検討し,圧縮効率についても従来のDCTと同等以上の性能が得られることを示した.しかし今までは適用すべきポリゴン頂点数が固定されていたため,高い圧縮性能が得られる符号化レートの範囲が限定されるという問題点を有していた.本論文では上記問題点に対する解決手段を提案し,B-spline曲面の圧縮ツールとしての性能を強化することを目的としている.ここでは,絵柄の細かさに応じて曲面を発生させるポリゴン頂点の数を適応的かつ自動的に選択する手法を提案し,広い範囲の符号化レートにおいて安定して高い圧縮性能が実現できることを示す.更に,利用するポリゴン頂点数の種類そのものを増加させることによる性能改善手法についても検討すると同時に,ポリゴン頂点値を求める際に,ブロック境界部の符号化誤差を減少させるような重み付け処理を適用することによって,符号化レートが低いところで発生していた再生画像のブロックひずみを低減できることも示す.
著者
中川 学 永瀬 文昭 橋本 洋一 下川 義弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.322-329, 1997-06-25
被引用文献数
12

衛星回線と地上回線を組み合わせ, インタラクティブなマルチメディアサービスを時間や場所の制約にとらわれることなく容易に提供可能なシステムの実現を目指し, 東海大学とNTTは共同で遠隔教育を適用例としたマルチメディア双方向衛星通信システムを構築し, フィールド実験を行っている. 今回はその基礎的なシステム特性として遅延時間, TCP/IPによる1:1通信, UDP/IPネットワーク同報のスループットの測定, 評価を行った. 受信端末からping (ICMP echo) によりラウンドトリップタイムを測定し, その結果から実際のTCP/IPによる通信でのラウンドトリップタイムを見積もった. またTCP/IPのスループットを測定し高速な情報転送が可能であることを確認し, その値は見積もったラウンドトリップタイムから求めた理論値によく一致した. UDP/IPでは使用している専用線の帯域による上限である約6Mbpsのネットワーク同報が可能であることを確認した. TCP/IP, UDP/IPともウィンドウサイズや専用線の帯域の変更により更に高速の情報転送が可能である見通しをえた.
著者
小島 久史 三好 匠 田中 良明 富永 英義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.362-370, 1998-06-25
被引用文献数
11

B-ISDNが実現されると, 放送をはじめとする各種マルチキャストサービスがトラヒックのかなりの部分を占めると考えられる.そのなかでも, 今後多数出現すると考えられているミニ放送や専門放送等の視聴率の低いサービスでは, 視聴者のいる局が少なく, また時間と共に変化するので, 動的なマルチキャストルーチングを行う必要がある.また, B-ISDNの基盤となるATM網においては, VPが網の目のように張りめぐらされており, VP環境を意識したルーチングが必要である.本論文では, VP使用の制御を行う直通VP制限アルゴリズムを提案し, ATM網に適用したときの特性評価を行った.その結果, 物理網が非階層構成の場合は提案アルゴリズムが適していること, 階層構成の場合は静的ルーチングで十分であることがわかった.
著者
庄山 正仁 倉地 敏明 二宮 保
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.614-620, 1995-11-25

力率改善形コンバータの出力端子間には,通常,大容量の電解コンデンサが用いられており,高周波スイッチングによるリプル電圧の低減と同時に低周波リプル電圧の低減も行っている.この場合,電解コンデンサにリプル電流が流れることにより,その等価直列抵抗において電力損失を生じ,素子温度を上昇させ,ひいては素子の寿命を短くしかねない.従って,この電解コンデンサを流れるリプル電流の実効値を正確に見積もることは,電解コンデンサの選定を的確に行い,期待寿命を確保するうえで非常に重要である.本論文では昇圧形の力率改善形コンバータを例にとり,出力端子間に用いられる電解コンデンサのリプル電流について詳細な解析を行った.具体的にはリプル電流を低周波成分と高周波成分に分け,それぞれの周波数成分におけるリプル電流の実効値を導出した.また,解析の妥当性を実験により確認した.