著者
井垣 竹晴
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Suppl, pp.174-187, 2015-03-31 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

シングルケースデザイン(Single-Case Designs: SCD)は、少数個体のデータをもとに独立変数と従属変数間の因果関係の検討を行う実験法のひとつである。SCDを利用した研究において、個々の行動は、独立変数のある場合とない場合の両方において繰り返し測定される。SCDは、群間比較法(つまりランダム化比較試験)に比べ、迅速にまた柔軟に独立変数の操作を行うことができるという重要な利点を持つ。しかしながら現在の実験心理学研究においては、群間比較法が、因果関係を検討するゴールデン・スタンダードとみなされ、SCDは実験法として正当な評価を受けているとは必ずしも言えない。しかし近年、国外ではSCDに関する関心がさまざまな領域で高まりつつある。本論文では、SCDの歴史や国内外の現状について述べ、SCDの普及や発展のために必要とされる諸点についての展望をレビューする。併せてエビデンスに基づく実践の運動や、SCDの基準作成についての研究にも触れる。