著者
佐々木 嘉光 井場木 祐治 植松 俊太
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.G1282-G1282, 2008

【目的】当院では診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ:クリクラ)を導入し他の2施設も同じ方式で臨床実習を行っている。今回、当院の臨床実習形態の効果を検討するため学生に対するアンケート調査を行ったので報告する。<BR>【十全式臨床実習の内容】患者担当制を含むクリクラを臨床実習指導体制として選択し当院を含む3施設で導入した。学生は指導者の監視下で評価・訓練を行い、担当チームの仕事を常に手伝う形で実習に参加した。患者担当制については症例報告を行う症例を1例とし、初期・最終評価レポート・発表用のレジュメ作成を課題とした。その他の担当症例は学生の能力に合わせて徐々に増やし、約2ヶ月の実習で4~5症例の担当を目標とした。<BR>【方法】静岡県内にある3年制専門学校の3年生60名を対象としアンケート調査を行った。患者担当制とクリクラについては理学療法白書(1997年)に記載してある内容を用いて説明した。アンケートは各期の臨床実習終了後(2ヶ月を3期実施、延べ180施設)に行い、実習の判定が不可であった13施設を除く167施設を調査対象とした。アンケートの内容は1.臨床実習の満足度、2.患者担当制の満足度、3.臨床体験の充実度、4.1日の平均見学時間、5.1日の平均睡眠時間、6.精神的苦痛について調査を実施した。調査対象の167施設のうち十全式臨床実習を行った14施設(実施群)と他の153施設(他施設群)について、各アンケート項目の比較と検討を行った。また、アンケートの実施にあたり調査の内容について口頭および紙面で説明し同意を得た。<BR>【結果】1.臨床実習の満足度について「満足」と回答したものは実施群64%、他施設群38%であった。2.患者担当制の満足度について「満足」と回答したものは実施群71%、他施設群38%であった。3.臨床体験の充実度について「充実していた」と回答したものは実施群64%、他施設群41%であった。4.1日の平均見学時間について「2時間以内」と回答したものは実施群86%、他施設群28%であった。5.1日の平均睡眠時間について「4時間以上」と回答したものは実施群86%、非実施群57%であった。6.精神的苦痛について「全く苦痛でない」「苦痛でない」と回答したものは実施群60%、非実施群45%であった。<BR>【考察】今回の調査では、十全式臨床実習の実施群において実習及び患者担当制の満足度が高く、臨床体験が充実し、見学時間が非常に少ない結果となった。また、睡眠時間が長く、精神的苦痛が少ない傾向を示した。今回の結果から、患者担当制を含むクリクラの有用性が示唆されたが、調査を行った養成校と当院が関連施設であるためアンケートの結果に影響を及ぼしている可能性があり、今後さらに実施施設数を増やして検討していく必要があると考えられる。また、睡眠時間の改善が今後の課題と考えており、患者担当制のレポート作成について実施内容を検討する必要があると考えられる。