著者
加藤 太喜子 井川 昭弘
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
no.2, pp.69-75, 2008-03

生命倫理学領域において自己決定権論は重要な地位を占めるが,自己決定権論の限界もまた生命倫理学領域の重要な話題であり続けてきた。本稿は,自己決定権論の限界について考察するために,その対抗理論となりうる人格主義生命倫理学に着目し,人格主義生命倫理学の視座から胚の道徳的地位に関するこれまでの議論を検討する。種に基づく議論,連続性に基づく議論,同一性に基づく議論,潜在性に基づく議論に対する人格主義生命倫理学の取りうる立場を検討したのち,人格主義的生命倫理学の立場からの現在の取り組みを,自己決定原理の持つ限界を超えうるものとして評価する。