著者
橋本 廣子 宮田 延子 下井 勝子 山田 小夜子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-38, 2008
被引用文献数
2

本研究は,育児支援の立場から母親にどのような育児不安があるのか,育児不安を軽減させるために,何時,どのような支援や施設を利用しているかを調査し,今後どのような育児支援が必要であるのかを明らかにすることを目的に研究を行った。調査結果から,80%以上の母親が育児についての心配事を持ち,心配事は妊娠中から3歳児まで続いており,相談相手としては夫と実家の母親が主であった。手助けが欲しかった時期は妊娠中からあり,子どもの3〜4ヵ月時点で手助けして欲しい内容は変化した。育児のために利用した主な施設は児童センター・公園・育児サークルであったが,利用者は少なかった。家族形態・就業形態・子どもの数と心配事の有無・相談の有無・手助け希望の有無・育児施設利用の有無との関係を見たが,いずれも有意の差は得られなかった。育児不安内容では,「叱りすぎなど子どもを虐待していると感じていると思う」において,核家族より他に同居家族がいる母親に多く,有意差が見られた。
著者
小木曽 加奈子 安藤 邑惠 阿部 隆春 平澤 泰子 山下 科子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-19, 2011

Purpose:The purpose of the research was to obtain fundamental materials regarding changes in BPSD which used Moore functional dementia evaluation standards. Method : The research was carried out from September in 2009 to February in 2010. Institution residents of four floors of two Intermediate Facilities were used as subjects. We used "Texas Tech Functional Rating Scale for Symptoms of Dementia", and our subjects were elders with dementia with whom care practitioners felt a degree of difficulty. PASW ver.18 was used for the statistical analysis. Finding:The core focus of our study consisted of three males(42.86%) and four females(57.14%).The average and the standard deviation of their ages were 85.14±6.573. Findings showed that perception declines severely as time progresses. However, issues such as aimless wandering showed a decreasing tendency. Conclusion:When dementia was high-level, it was necessary to consider all facets of daily life in regards to self-care, and it became clear that subjects tend not to improve. However, memory and mental confusion issues such as checklist problematic behavior showed a tendency to improve with attention.
著者
神庭 純子 藤生 君江 吉川 一枝 山口 明子 中野 照代 荒木田 美香子 仲村 秀子 山名 れい子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.47-53, 2007

乳幼児健診の場を育児支援の機会としてとらえ,継続的なフォローアップを行うことが求められている。そこで,育児機能アセスメントッール(PAFFAT. ver. II)を用いた調査を行い3歳児健診における要経過観察群(92名)と非経過観察群(332名)を対象として育児機能の比較を行った。その結果,要経過観察群と非経過観察群において有意な差がみられた項目は4項目であった。家族の情緒機能における「家庭内の重要な決定をするのに家族がいてくれてよかったと思う」,家族の健康機能(遊び)における「子どもを友達と遊ばせている」,家族の教育的機能における「弱い人や動物を大事にするように話している」,育児満足感における「子どもを授かってよかったと思う」の各項目において,要経過観察群の方に否定的な回答が多くみられた。また,母親の経過観察が特に必要であると判断された群では,育児負担感因子4項目において育児機能の低下がみられ,育児負担感を強く感じているという結果であった。要経過観察群の育児機能の特徴をふまえて,健診後の継続的な育児支援をしていくことが重要である。
著者
松下 延子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
no.1, pp.141-154, 2007-03
被引用文献数
1

先行研究で,「α波音楽とイメージ法を用いた簡易漸進的筋弛緩法,実施前・後の比較」により若干のリラクゼーション効果が確認できた。しかし,我々は日頃,日常の疲れやストレスを緩和するために,休息・睡眠等で自然に回復させる対処法は必然的で効果的である。そこで第一に,安静法に比べ筋弛緩法の方に効果が高いと仮定して比較する。第二に,眠気を催す,体温と体や手足の末梢が温かく感じる段階について効果を比較する目的で実験を試みた。対象は看護学生44名,主に女性である。効果測定はバイタルサインの客観的データーと気分や感じ方の主観的データーを分析した。結果,15分間の仰臥安静法で,最高血圧値・脈拍数・呼吸数や主観的データでも有意な低下が見られた。しかし,その後の簡易筋弛緩法ではさらに,呼吸数・体温の低下や「疲れている」という主観的データーはさらに低下が見られた。第二の比較では,安静後は体も手足もポカポカしていると感じる人が多く,リラクゼーション後は,体温は下がっても体は温かいと感じ,手足がポカポカしていると感じる人は減少した。つまり,休息・睡眠は活動が低下・停止した状態で身体の筋肉もかなり弛緩状態となり,共に筋肉を弛緩させる延長線上にあることで,意図的に筋肉を弛緩させる方に効果が高いことが示唆された。第二は,全身の筋肉を弛緩させることで熱の発生が抑えられるためと考えられた。
著者
丹羽 民和 丹羽 和子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-20, 2007

教育のIT活用が叫ばれ,サイバーキャンパスの必要性が教育面,学術研究面,大学運営面,学生サービス面で求められている。近年,教育面におけるIT化の功罪にはさまざまなFD報告があり,統一した見解は未だ得られていない。我々は同一学生群に対して,従来法の「コンベンショナル型」,完全デジタル化した「パワーポイント型」,従来法とパワーポイントを共に使用した「ハイブリッド型」の授業を実施し,IT化授業の影響を検討した。学習者評価では「コンベンショナル型」の学生満足度がもっとも高く,次いで「ハイブリッド型」であった。学習習熟度に有意差は認められなかったが,「パワーポイント型」は二極化傾向がみられた。外部評価としての国家試験血液領域得点とは「パワーポイント型」の相関がもっとも高かった。今回,血液形態学教育で実施した完全デジタルビジュアル化による「百聞は一見に如かず」教育は受講生にとって理解や復習がしにくく,満足度も低かった。しかし,学習成績は国家試験ともっとも相関した。この理由は,パワーポイント授業がより強く成績上位層と下位層を固定化し,クラス内により大きな二極化を生じさせたためであった。
著者
加藤 太喜子 井川 昭弘
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
no.2, pp.69-75, 2008-03

生命倫理学領域において自己決定権論は重要な地位を占めるが,自己決定権論の限界もまた生命倫理学領域の重要な話題であり続けてきた。本稿は,自己決定権論の限界について考察するために,その対抗理論となりうる人格主義生命倫理学に着目し,人格主義生命倫理学の視座から胚の道徳的地位に関するこれまでの議論を検討する。種に基づく議論,連続性に基づく議論,同一性に基づく議論,潜在性に基づく議論に対する人格主義生命倫理学の取りうる立場を検討したのち,人格主義的生命倫理学の立場からの現在の取り組みを,自己決定原理の持つ限界を超えうるものとして評価する。
著者
市原 正隆
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-59, 2010
被引用文献数
1

本研究は,居住環境と医療・福祉の関係を居住福祉学の立場を踏まえながら,建築学・環境学や医学・福祉学等の知見を収集した資料を整理・分析し,居住環境整備が本来求めるべき新たな方向性を見出すことを目的とする。先行研究・関連研究については,引用文献・参考文献のとおりであるが,従来,居住環境の整備については,居住医療・福祉にかかわるサイドからの研究は少ない。本稿は,従来の物理的な整備による住宅環境の整備から,医療・福祉といった生活の中の生理的要素に焦点を当て,ICFの分類にしたがい,居住環境における様々な環境因子を分析しハード要因・ソフト要因を見直し,整備の統合を目指す。その結果,居住環境整備における様々な科学の環境因子の総合化,統合化の手法を,ハウスアダプテーションに見出すことができた。すなわち,すべての生活空間を福祉化するユニバーサルデザインときめ細かなパーソナルデザインを獲得しうる手法である。今後の課題は,わが国のハウスアダプテーション政策の進展とそのサービスを実行する社会システムの構築がいまだ発達途上にあることから,西欧諸国の実践に学びつつ,わが国の居住環境整備の個別具体的な実践の構造化が重要となる。
著者
小木曽 加奈子 今井 七重
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
no.4, pp.19-26, 2010

我が国では,人口の高齢化に伴い,身体障害や認知症などにより,介護を要する高齢者が増加傾向にある。2008年10月現在で471万人が要支援・要介護認定を受けており,高齢者人口の16.1%を占めている。要介護高齢者の発生率は,加齢に伴い上昇傾向にあり,85歳以上では56.1%の高齢者が要支援・要介護認定を受けており,約2人に1人が日常生活を送る上で何らかの介護が必要であることを意味する1)。介護の対象となる高齢者はさまざまな心身機能・身体構造の低下を伴っているため,安全・安楽に日常生活が営めるように援助する必要があり,介護福祉士の教育においては,利用者のリスクをあらかじめ予測をし,多方面から情報収集できる能力とアセスメント力の向上を目指すことが重要である2)。川村ら3)は,療養上の世話におけるヒヤリ・ハット事象としては,転倒・転落が最も多いことを指摘している。老年看護学実習におけるヒヤリ・ハットは,入浴,食事,排泄などの日常生活援助場面に多く,リスクとしては,転倒・転落が最も多い4)。また,祢宜ら5)も,介護福祉実習のインシデントとして転倒・転落が最も多いことを明らかにしている。このような事象により,利用者の自立支援のためには転倒・転落事故を未然に防ぐことが重要であり,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability andHealth,以下ICF)の視点6)を用いて,「活動と参加」や「環境因子」の側面からも情報収集を行い,「安全で安楽」なケアを実践するためのリスクマネジメントを行う必要がある。そこで,介護福祉実習の事後学習に実施するリスクマネジメント演習の一環である転倒・転落振り返りシートを分析することにより,転倒・転落に対する学生のリスクマネジメントの傾向が明らかとなったためここに報告する。
著者
藤生 君江 神庭 純子 富安 真理 鈴木 みちえ 長澤 久美子 蒔田 寛子
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.15-20, 2008

本研究は,在宅看護論における家族支援に関する学習効果について検討することを目的として,学生の介護者の自己実現に対する認識に焦点をあてて,マズローの欲求階層理論に基づく質問紙調査を実施した。対象者は,S大学看護学部2002年度大学生123名である。実習前後における平均値では,5基本的欲求に有意差はみられなかった。順位では,両者ともに安全が1位を占め,2位は,実習前は生理であったが実習後は自己実現に変化していた。生理に偏りがちな看護学生の認識を自己実現に変化させ視野を広げていると考えられた。基本的欲求下位項目で有意差がみられたのは,「常に睡眠不足のため身体の調子は良くない」のみで,実習前より実習後のほうが低かった。因子分析では実習前は,承認のみで占められていたが,実習後は,生理のほかに愛と所属,自己実現の欲求が出現し第1因子が異なり,学生の認識に変化がみられた。以上の結果から第1報における環境因子に着目した家族支援に関する学習効果が,在宅看護実習を経験することによりさらに定着されたことが本報でも示唆された。
著者
渥美 龍男
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.167-179, 2007

平成17年3月の名鉄美濃町線(関-岐阜間)の廃止後,地域社会に様々な影響が生じ,特に関市周辺では運転再開を望む声が高まっている。本稿ではこの軌道線が廃止に至った社会的背景の整理,統計データの分析,学生に対するアンケート調査の解析を行った。その結果,法改正により鉄軌道の撤退が届け出制になり,また,会社内での内部補助が難しくなった等の社会背景の元で,同規模の鉄軌道の中で輸送密度が大きいにもかかわらず,大手私鉄の運営が故に営業経費が高くかつ運賃が低い為に大きな赤字になり,そのままでは事業存続困難になり廃止に至った事が分かった。また,廃止により本学の看護学科の学生に関して,発表値と同様に通学利用者の半数強がバスに移行したが,経済的負担が増え,本学看護学科だけでも時間的な損失を含め概算で年間約240万円の損失が生じた事が分かった。さらに,5割強の学生が美濃町線の再開を望んでいることが明らかになった。