- 著者
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井本 海
- 出版者
- 大阪市立大学国語国文学研究室
- 雑誌
- 文学史研究 (ISSN:03899772)
- 巻号頁・発行日
- no.52, pp.40-63, 2012-03
はじめに: 周知のとおり、延慶本『平家物語』(以下、延慶本)は、頼朝賞賛をもって結ぶテキストであり、それはいわゆる「平家断絶型」あるいは「灌頂巻特立型」という結びの形が大半を占める「平家物語」(以下、『平家』)諸本中にあって、きわめて特異なものである。このテキストは、頼朝および東国武士の物語を多く持ち、さらに、頼朝が挙兵し自らの体制を樹立する以前に、すでに頼朝の将来を予見し、東国武士がその中に組み込まれているかのような描き方をする点に大きな特徴がある。……