著者
尾山 慎
出版者
大阪市立大学国語国文学研究室
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.49, pp.18-30, 2009-03

はじめに : 論者はこれまで、萬葉集を対象として子音韻尾字音仮名について検証し、次のようなことを指摘した。まず、集中においては、連合仮名という方法が実践されておらず、略音仮名と二合仮名の二種で認められること、そして前者は一字一音の仮名書きの浸透に伴って使用度数を伸ばすが、後者は萬葉第二期頃を頂点として衰退の一途に向かうこと、また、略音仮名の字種において、使用頻度を伸ばし続ける頻用字群と、概ね一回性の字種とがあること、二合仮名は訓字主体表記における使用頻度が高いという特徴があること、等である。……
著者
丹羽 哲也
出版者
大阪市立大学国語国文学研究室
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.51, pp.44-58, 2011-03

一 はじめに : 連体修飾構造は、その主要な部分が、連体節によるものと連体助詞「の」によるものとによって占められるが、両者は別々に論じられることが多い。これらを統合して論じるのが望ましいことは言うまでもないが、連体「の」の研究が不十分にしか進んでいない現状では、全体的な考察をすることは難しい。本稿は、連体節の「内の関係」と、「外の関係」の「内容補充」と「相対補充」という三者に、それぞれに大まかに対応する連体「の」を加えることで、この三者の性格付けや分類法を検討するという方法を取り、ある程度の統合的な考察をめざす。
著者
井本 海
出版者
大阪市立大学国語国文学研究室
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.52, pp.40-63, 2012-03

はじめに: 周知のとおり、延慶本『平家物語』(以下、延慶本)は、頼朝賞賛をもって結ぶテキストであり、それはいわゆる「平家断絶型」あるいは「灌頂巻特立型」という結びの形が大半を占める「平家物語」(以下、『平家』)諸本中にあって、きわめて特異なものである。このテキストは、頼朝および東国武士の物語を多く持ち、さらに、頼朝が挙兵し自らの体制を樹立する以前に、すでに頼朝の将来を予見し、東国武士がその中に組み込まれているかのような描き方をする点に大きな特徴がある。……