著者
井上 英夫 井村 明弘 大塚 栄子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1214-1220, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
20
被引用文献数
21

糖部を保護した5-ヨード-2'-デオキシシチジン[3]とトリメチルシリルアセチレンとの縮合をPd触媒存在下行なうと,5-(トリメチルシリル)エチニル体[4a]が好収率で得られた。[4a]のN4-アセチル体[5a]は,CuI存在下DMF中加熱すると収率よく閉環体[6a]を与え,[6a]は脱保護により3-(β-D-2-デオキシリボフラノシル)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2(3H)-オン[7a,dF*]を与えた。同様にして1-ヘキシンを用いることによりdF*の6-位ブチル置換体[7b]も合成することができた。dF*を含む部分的に自己相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドdGGGAAF*NTTCCC(N=T,C,AまたはG)は固相リン酸トリエステル法により合成した。4種のドデカマーの熱的安定性(Tm値)の測定結果から,このピロロピリミジン塩基(F*)はグアニン塩基と塩基対を形成することがわかり,F*・G対を含む二本鎖ドデカマーは比較としたC・G対を含む二本鎖ドデカマーと同様な熱的安定性を有することが明らかとなった。dF*の発蛍光性についても述べる。