著者
井沢 功一朗
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-14, 1997-10

本研究では, 抑うつ症状に対する性格素因としてA. T. Beck (1983)により概念化された屈折した社交性-自律性(Sociotropy-Autonomy; SOC-AUT)に焦点が向けられた. まず始めに, 101人の大学生サンプルを用いたAlternating Least Squares SCALing(ALSCAL)によってSociotropy-Autonomy Scale (SAS; Beck, Epstein, Harrison, & Emery, 1983)の妥当性と信頼性が確認された. この結果を受けて, SOC-AUT に関する主要な仮説であるパーソナリティスタイル-ストレス交互作用仮説とパーソナリティスタイル-ライフイベント対応一致仮説が二元配置分散分析により検証された. その結果, 3つのSOC-AUTパターンと自律性に関するネガティブなライフイベントとの間でパーソナリティスタイル-ストレス交互作用仮説が確認された. しかし, パーソナリティスタイル-ライフイベント対応一致仮説は, 予測されたSOC-AUTと, ネガティブライフイベントとのいかなる結びつきのパターンにおいても確認されなかった. こうした結果を導いた要因として, それぞれのパーソナリティスタイルによって方向付けられたライフイベントに対する個人的認知のゆがみが論じられ, ネガティブライフイベント測定のために, 各パーソナリティスタイルに対応し標準化された測定手段の開発の必要性が唱えられた.