- 著者
-
高田 時雄
BATTAGLINI M
VITA Silvio
森賀 一恵
井波 陵一
MARINA Batta
SILVIO Vita
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 国際学術研究
- 巻号頁・発行日
- 1995
十六世紀末葉から、イエズス会をはじめとするカトリック各会派は精力的に中国布教を開始した。ローマ及びイタリア各都市には彼ら宣教師によって中国からもたらされた、明清代の漢籍が数多く保存されている。しかしこれらはほとんど手つかずのまま放置されているのが実状である。これらの書物は、それ自身が東西文化交流史の貴重な財産であるばかりか、中には学術的価値の高い資料も含まれ、その調査は、中国学の各方面に新たな材料を提供するものであることは確実である。今回の国際学術研究のプロジェクトにおいては、主としてイタリアの公共図書館に所蔵される中国書を調査し、それを目録化するための基礎研究を行うことであった。ローマの国立中央図書館をはじめとして、全国に散在する中国書を徹底して調査するため、アンケート調査を行いつつ、カード採取を実施した。その結果、公共図書館の所蔵漢籍については、ほぼすべての調査を完了し、現在コンピュータ入力中である。その作業の終了を待って、冊子目録の刊行の運びとなる。調査によって明らかになった要点は以下のごとくである。(1)16世紀末あるいは17世紀初頭にヨーロッパにもたらされたと思われる明版本が少数ながら存在する。これらのほとんどが未報告の書物で、研究に資するところが大きい。(2)ローマ国立中央図書館には、義和団事件の時にイタリア軍によって持ち帰られた殿版が相当数存在することで、これも今まで知られなかった事柄である。(3)同じくローマの図書館には広東の曲本の古い刊本が大量に存在し、俗文学研究の上に貴重な資料を提供する。(4)古く伝来した書物の中には、宣教師による書き込みが見られ、ヨーロッパにおける中国学の発展史を知る上での参考となる。