著者
黒田 美保 浜田 恵 辻井 正次 稲田 尚子 井澗 知美
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は,心理士を中心にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された自閉スペクトラム症幼児療育方法であるJASPER日本版を実施し,効果検証を行った。(方法)参加者:介入群は病院や療育施設より紹介を受けた8名で,対象群は1つの療育施設に通う8名。手続き:介入群は,中京地区と関東地区の3施設で実施した。実施回数は週1回で20回,1回のセッションは,UCLAと同じく40~45分とした。対象群は,関東地区の施設で,従来からやっている構造化による療育を週1回20回行った。実施前に,子ども自身に,新版K式発達検査,ADOS-2(自閉症観察検査第2版)を実施。効果検証としては,子どもには,SPACE(Short Play and Communication Evaluation)および「心の理論課題」中のアイトラッキング(視線移動計測)を行った。SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査とアイトラッキングは介入前後のみである。保護者には,Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し,これらの変化を比較する。現在は,データを蓄積している段階であるが,JASPERを実施した介入群では,現在までに,要求行動・共同注意行動の改善と遊びの水準の向上が見られた。また,視線移動計測による自閉スペクトラム幼児の「心の理論」の理解については,両群を合わせた初期データを解析した。その結果,自閉スペクトラム児でも近親化課題では全員正解することができたが,「心の理論」課題では正答率は低下し個人差が大きくなった。同時に,SPACEの妥当性を調べるために,定型発達児10名についてSPACEとADOS-2を行い,現在解析中である。また,心理士のJASPERの実施スキルの向上のための勉強会を月1回実施した。