著者
井門 ゆかり
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.356-363, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
20
被引用文献数
3

目的:簡便に認知機能低下の疑いのある患者を発見するためのスクリーニング検査(Imon Cognitive Impairment Screening Test:ICIS)を開発し,信頼性・妥当性を検討した.方法:検査は対面式で所要時間約3分,時間の見当識(年月日・曜日,各1点,計4点),3単語の遅延再生(各1点,計3点),柔軟性(語の流暢性)として,「か」で始まる言葉を1分間で出来るだけたくさん言う(2語以下0点,3~5語1点,6~9語2点,10語以上3点),構成失行の評価として,「指でキツネ・ハトの模倣」(キツネ左右各0.5点,ハトは迷わずできたもの1点,試行錯誤してできたもの0.5点,できないもの0点)を入れ,12点満点とした.対象は,健常高齢者(C群)30例,軽度認知障害患者(MCI群)34例,認知症患者(認知症群)76例(軽度51例,中等度18例,高度7例).結果:ICISの平均は,C群10.5点,MCI群8.3点,軽度認知症群5.5点,中等度認知症群3.0点,高度認知症群0.7点で,各群間で有意差を認めた.認知症群+MCI群を疾患群とし,ICIS 9点以下を検査陽性とすると,感度0.94,特異度0.93,正確度0.94,陽性尤度比14.0,陰性尤度比0.07であった.ICISとMMSEの得点には,有意な相関を認めた(r=0.82,p<0.0001).結論:ICIS 9点以下では,他覚的認知機能の低下があり,認知症精査に進む簡便な目安になると思われる.