- 著者
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京極 博久
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2011
最近の研究から, 核小体を除去(脱核小体)した卵核胞期(GV期)の卵母細胞は, 正常に成熟するが, 受精後の前核期の核中に核小体は形成されず, 胚は2~4細胞期で発生を停止することが示された。正常な前核期胚の核中に形成される核小体は, 卵核胞期(GV期)の核小体と同様に緊密な形態をしている。2細胞期以降, この緊密な卵母細胞型の核小体の周囲から体細胞型の核小体が形成され始め, 胚盤胞では完全に体細胞型の核小体となる。本研究では, 前核中の核小体が, それ以降の胚発生に必須であるかを前核から核小体を除去することによって調べた。また, 脱核小体した前核期胚から発生した胚に核小体が再形成される可能性を探った。まず, 顕微操作により雌雄両前核から核小体を除去した後, 体外で発生させ, 胚盤胞への発生率を調べた。また, 2細胞期へと発生した胚を移植することによって産仔への発生を調べた。GV期で脱核小体した胚は発生しなかったが, 前核期で脱核小体した胚は正常に胚盤胞へ発生し, 胚移植により正常な産仔となった。次に, 核小体の形成を確認するために, GFPタグのついた卵母細胞の核小体に特異的な蛋白質NPM2のmRNAを用いたライブセルイメージングと体細胞の核小体に特異的な蛋白質(B23, UBFなど)に対する抗体を用いた免疫蛍光染色を行った。前核期で脱核小体した胚は, 卵母細胞型の核小体なしに, 発生過程で体細胞型の核小体を形成した。以上の結果から, 卵母細胞型の核小体は前核期以降の胚発生に必須ではないこと, 卵母細胞型の核小体がなくとも胚は体細胞型の核小体を形成することが明らかとなった。