著者
京野 千穂 内田 由紀子 吉成 祐子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.56-67, 2015-03-31 (Released:2017-04-26)

援助場面を叙述する際に使用されるテモラウとテクレルの違いを明らかにするために,日本語母語話者に対し2種類の調査を行った.調査1では援助を受けた場面について,その状況と援助時における与え手との会話を思い出し,記述してもらった.その結果,会話内で与え手からの申し出があった場合,テクレルで状況を記述する傾向が見られた.一方,会話での受け手からの依頼は,テモラウによる記述には結びつかなかった.調査2では,テクレルあるいはテモラウで記述された状況文を呈示し,援助の与え手と受け手の会話を想像して記述してもらった.会話内の依頼表現と申し出表現を数えたところ,テクレルを含む状況文に対しては,与え手からの申し出表現が約8割,そして依頼表現が2割となった.一方,テモラウを含む状況文に対しては会話内の依頼表現と申し出表現がそれぞれ5割と同程度出現することが明らかになった.これらの結果から,テクレルと与え手からの申し出のほうが,テモラウと受け手の依頼との結びつきより強く,また,テモラウは与え手の申し出とも結びつくものであることを示した.上記結果は,テモラウ・テクレル文の構造と関連し,また,後続する感情表現とも関連することを論じる.
著者
京野 千穂 キョウノ チホ Kyono Chiho
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-16, 2011-03

研究論文本稿は、KYコーパスを分析し、学習が進みにくいとされる「非ノダ」の機能を明らかにする。ノダは聞き手の想定内に存在しない情報で、聞き手に物事の把握を促すために用いられる。非ノダは、聞き手の想定に関わらない、話者側の正否判断を明示するものである。また、ノダが聞き手に物事の全像把握を促すための、関連周辺情報を提示するのに対し、非ノダは独立した中核的情報を示すことを明らかにする。This paper clarifies the discourse functions of the sentences without the nominalization marker, noda. Noda provides the information that does not exist in the hearer's assumption to promote his understanding of the whole situation. On the other hand, when the speaker uses non-noda sentences, he does not concern if the information is within the speaker's assumption or not. It conveys speaker's definite affirmation or negation of propositions. While noda provides related and background information and induce the hearer to grasp the whole picture, non-noda sentences present independent and central information not relating to other events/states.