著者
佐々木 良江 仁平 昇 坂野 雄二
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.p13-21, 1982-12

本研究は, フィードバックが完全になされている状況における, 自己強化(SR)手続き顕在化の動機づけ効果を, 発達段階や達成動機の側面から検討することを目的として行われた。2×2×2の実験計画が用いられた。第1の要因は, 学年(2年・6年)であり, 第2の要因は達成動機である。予め実施された達成動機の調査から得点の高低により, それの高い群と低い群が設けられた。第3の要因はSR手続きである。すなわち, 自ら遂行量を記入し, それに対してよくできたと思ったら○を, あまりよくできなかったと思ったら×をつけるというSR手続きをする自己強化群(SR群)と, 遂行量のみを記入しSR手続きをとらないフィードバック群(FB群)から構成された。課題はWISC知能検査の符号問課(8歳以上用)が用いられた。主な結果は次の通りである。(a)2年生・6年生ともに, 達成動機の高低はSRの動機づけ効果に影響を及ぼさない。(b)2年生ではSR手続きを顕在化させた方がフィードバックのみよりも動機づけの効果は大きいが, 6年生では逆の関係になっている。(c)SR群において, 2年生・6年生ともに, 達成動機の高い群では負のSRの方が動機づけ効果が大きいが, 低い群では, 2年生児童において正のSRの方が動機づけ効果が大きいという傾向がみられた。(d)SR群における, 正か負のSRの決定に関して, 2年生の達成動機の高い群以外は, 正のSR前の方が負のSR前よりも遂行量の上昇量が多く, その傾向は6年生の方がより安定している傾向にある。しかし, (c), (d)においては被験者数が少なく, 有意な差は得られなかった。以上のことから, 6年生ではSR手続きを顕在化しなくても, covertなSR, つまり内潜的自己強化が行われていることを示唆している。しかし, これは