著者
箕輪 啓太 今 明秀 野田頭 達也 後村 朋美
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.294-298, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
14

63歳の中国人女性. 奥入瀬渓流を自動車で走行中に道路から遊歩道へ転落し, ドクターヘリが出動した. ショック状態でフレイルチェスト, FAST陽性を認め, ヘリ内で蘇生的開胸術を施行した. 病着前にPEAに移行し, 救急外来でdamage control surgeryの方針として脾臓摘出術を施行した. 精査で脳挫傷, 胸郭損傷 III b, 左肺損傷 I b, 脾損傷 III b, 骨盤損傷 I a, 第7頸椎横突起骨折, 右上腕骨骨折と診断. 第4病日に閉腹術とフレイルチェストに対して肋骨固定術を行った. 術後に創感染や膵液漏を認めたが, いずれも保存的加療で軽快し, 第97病日に独歩退院した. 病院前において生命徴候が消失する可能性のある重症出血性ショックは蘇生的開胸術を考慮すべきである.
著者
吉村 有矢 今 明秀 野田頭 達也
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.304-311, 2016-07-20 (Released:2016-07-20)
参考文献数
28

【目的】地方病院におけるPreventable Trauma Death(以下PTD)の検討,外傷診療の質の評価と向上【対象と方法】当院の2010〜2014年度における日本外傷データバンク登録症例を対象とし,Trauma and Injury Severity Score(TRISS)法と第三者を加えたpeer reviewによりPTDを判定した.【結果】死亡例は147例.受傷30日以内に死亡した予測外死亡は17例.peer reviewで5例をPTDと判定した.その原因は救急室の初期治療の遅れ4例,搬送先選定の誤り1例.一方,予測外死亡が死亡回避不可とされた理由は,既往症4例,重症頭部外傷3例,高齢2例,死因不明2例,合併症1例であった.【考察】本邦におけるPTDの報告は少ない.TRISS法のみのPTD判定には限界がある.第三者を加えたpeer reviewを追加することで,外傷診療の質の評価と問題点の抽出が可能となり,改善に取り組んだ.【結語】客観的なpeer reviewによるPTDの検討が必要である.
著者
箕輪 啓太 今 明秀 野田頭 達也 後村 朋美
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.35.4_03, (Released:2021-09-07)
参考文献数
14

63歳の中国人女性. 奥入瀬渓流を自動車で走行中に道路から遊歩道へ転落し, ドクターヘリが出動した. ショック状態でフレイルチェスト, FAST陽性を認め, ヘリ内で蘇生的開胸術を施行した. 病着前にPEAに移行し, 救急外来でdamage control surgeryの方針として脾臓摘出術を施行した. 精査で脳挫傷, 胸郭損傷 III b, 左肺損傷 I b, 脾損傷 III b, 骨盤損傷 I a, 第7頸椎横突起骨折, 右上腕骨骨折と診断. 第4病日に閉腹術とフレイルチェストに対して肋骨固定術を行った. 術後に創感染や膵液漏を認めたが, いずれも保存的加療で軽快し, 第97病日に独歩退院した. 病院前において生命徴候が消失する可能性のある重症出血性ショックは蘇生的開胸術を考慮すべきである.
著者
吉村 有矢 今 明秀 根本 学
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.35-44, 2019-05-20 (Released:2019-07-20)
参考文献数
89

ドクターカー, ドクターヘリによる病院前外傷診療が日本全国で展開されている. かつて腹部外傷手術戦略として提唱されたdamage control は, 病院前, 初期診療, 手術, 集中治療を包括する重症外傷治療における基本的な概念に発展し, damage control ground zeroという病院前外傷診療の新しいパラダイムが誕生した. damage control resuscitationを病院前に導入し, 出血の迅速な制御, 気道管理, permissive hypotension, hemostatic resuscitation, 低体温の回避などを含む高度な病院前外傷診療を実践するためには, 病院内と異なる戦略が必要となる. 病院前におけるdamage controlは外傷蘇生の一部であり, 最低限の侵襲と時間で患者の状態悪化を防ぎ, 病院到着後のdefinitive therapyにつなげるものである.