著者
杉田 裕一 澤田 直司 根本 学 大河原 治平
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.500-502, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
4

【はじめに】今回, 幸帽児に対して, 現場で破膜処置を施した症例を経験したので報告する。【症例】30代の1経産婦。妊娠36週で陣痛を訴え救急要請となった。観察開始から17分後に児が娩出されたが, 破水せず羊膜に包まれた状態であったため, 救急救命士が破膜処置を実施した。【考察】本症例について産婦人科医を交えて事後検証した結果, 卵膜が被膜したままでは新生児の死亡や高次脳機能障害を招くため, 児の救命を目的として速やかに破膜処置を行った判断および処置は適切な活動であったとされた。一方, 救急救命士に許可されている産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置はなく, 今回の活動は救急救命士法に抵触する可能性が指摘された。【結語】破膜処置が許可されていない現行の法制度では, 救急現場で娩出された幸帽児の生命が脅かされる可能性があることから, 産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置を加える検討がなされることが必要と考える。
著者
根本 学 佐藤 陽二 後藤 英昭 澤田 祐介 行岡 哲男 松田 博青 島崎 修次
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.717-724, 1999-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

乗車用安全帽(以下ヘルメット)の着用が頭部保護に関し,効果の高いことは周知のごとくである。一方,臨床の場ではヘルメットを着用していたにもかかわらず,頭部・顔面外傷にて救急医療施設に搬送される患者は少なくない。ヘルメットは日本工業規格(以下JIS規格)により3種類(A種,B種,C種)に分類されており,一般使用者の多くはA種もしくはC種を着用している。臨床検討として,過去2年間に経験した着用ヘルメットが判明している二輪車事故患者157例を対象とし,頭部・顔面外傷の有無とその損傷部位,および着用ヘルメットにつき検討した。実験的研究として,同一条件下で市販されているJIS規格AおよびC種ヘルメットの衝撃吸収試験を行った。統計学的検討はχ2検定およびt検定を用いて行い,危険率5%未満を有意とした。また,実験における測定値は,平均値±標準偏差で表示した。臨床例では157例中,A種着用群は56例,C種着用群は101例であった。頭部・顔面外傷の頻度はA種着用群60.7%であり,C種着用群25.7%に対し有意(p<0.001)に多かった。衝撃吸収試験ではA種よりC種が有意差(p<0.001)をもってすぐれた衝撃吸収能を示した。とくに376cmからの落下実験では,A種で脳に損傷を与えるとされている衝撃加速度400Gを超える値が測定された。JIS規格では125cc以下の排気量に対し,A種ヘルメットの着用を許可しているが,今回の検討でA種ヘルメットの危険性が判明した。ヘルメットの生産・販売にあたり,消費者に保護性能を明確に伝え,消費者自身がヘルメットの機能を認識することが大切であり,今後,現状に見合ったJIS規格の再検討が必要と考える。
著者
広田 知良 山﨑 太地 安井 美裕 古川 準三 丹羽 勝久 根本 学 濱嵜 孝弘 下田 星児 菅野 洋光 西尾 善太
出版者
日本農業気象学会
雑誌
生物と気象 (ISSN:13465368)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.34-45, 2017 (Released:2017-04-10)
参考文献数
67
被引用文献数
10

Although climatic conditions had hindered the introduction of Pinot Noir, a cultivar of wine grape (Vitis vinifera), to areas such as Yoichi and Sorachi, Hokkaido, northernmost Japan, the growing region of the cultivar has recently extended. We analyzed meteorological data to obtain the rationale for the successful cultivation of Pinot Noir in Hokkaido; climate shift since 1998 pointed by Kanno (2013), i.e., rise in summer temperature, facilitated cultivation of the variety. Today, Yoich and Sorachi have become the right locations for growing the cultivar, and it has also been grown in other areas. Indeed, the vintage chart in Tokachi indicated the consistent, good harvest of grape since 1998. There is negative correlation in the average monthly temperature between April and August, and positive correlation between August and September ever since the climate shift. We hypothesize the benefits of the climate shift in terms of wine production as follows: 1) in years with low April temperature and high summer temperature, the growth rate in early stage delays, but the temperature required for grape maturation is secured by high temperature in August and September; and 2) in years with warm April and subsequent cool summer, early growth start keeps the growing season long enough, which may have compensated the risk of poor grape maturation in cool summer. Thus, climate change is considered to have favored the cultivation of Pinot Noir in Hokkaido.
著者
根本 学 京谷 圭子 菅野 壮太郎 高木 正人 北山 勝博 水村 勝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.792-800, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
15

日本は高齢社会を迎え,救急現場においてもその影響は避けられない。今回,人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関して,日本臨床救急医学会の提言を参考に地域メディカルコントロール協議会のワーキンググループにより指針を策定し,運用を開始したので報告する。現場の救急隊員からの要望に応え,「救急救命処置についての説明と同意書」と「心肺蘇生に関する医師の指示書」を策定し,2017年12月1日より運用を開始した。運用開始から2018年11月30日の期間における内因性心肺停止525件中,心肺蘇生を望まなかったのは23件(4.4%)であった。救急隊員へのアンケート調査では,不安や精神的ストレスを感じている者がいることが判明した。人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関しては,地域メディカルコントロール協議会を中心とした活動指針の策定と事後検証が重要と考える。
著者
吉村 有矢 今 明秀 根本 学
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.35-44, 2019-05-20 (Released:2019-07-20)
参考文献数
89

ドクターカー, ドクターヘリによる病院前外傷診療が日本全国で展開されている. かつて腹部外傷手術戦略として提唱されたdamage control は, 病院前, 初期診療, 手術, 集中治療を包括する重症外傷治療における基本的な概念に発展し, damage control ground zeroという病院前外傷診療の新しいパラダイムが誕生した. damage control resuscitationを病院前に導入し, 出血の迅速な制御, 気道管理, permissive hypotension, hemostatic resuscitation, 低体温の回避などを含む高度な病院前外傷診療を実践するためには, 病院内と異なる戦略が必要となる. 病院前におけるdamage controlは外傷蘇生の一部であり, 最低限の侵襲と時間で患者の状態悪化を防ぎ, 病院到着後のdefinitive therapyにつなげるものである.
著者
広田 知良 古賀 伸久 岩田 幸良 井上 聡 根本 学 濱嵜 孝弘
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究資料 (ISSN:13478125)
巻号頁・発行日
no.69, pp.1-13, 2011-09

2010年の気象の特徴は,これまでの北海道の夏季冷涼で梅雨がないという気候条件とは異なり,夏季(6~8月)の統計開始以来の記録的高温(全道平均で+2.3℃)と併せて7~8月の多雨,さらに春先の低温が重なった点にあった。平年より2℃以上の記録的な高温は,作物の生育を過度に促進し,収穫までの生育期間を大きく短縮するとともに,多雨による多湿条件が病害を助長した。さらには春先の低温・多雨による播種の遅れや初期生育の不良の影響が重なったため,多くの畑作物(小麦,ばれいしょ,てんさい,大豆を除く豆類)の収量が大きく低下した。北海道において夏季の高温条件による畑作物の不作は,北海道開拓以来はじめてのことである。また水稲も作況指数が98と極端な高温年では初めて平年を下回った。気象庁温暖化予測情報第6巻による温暖化予測シナリオ(SRES-A2)と比較すると 2010年の夏季気温は,2100年頃,またはそれを上回っていた。これからは4年に1度程度で生じる冷害と併せて,4~6年程度毎に生じる高温,および今後の北海道の夏季に梅雨の発生が頻発するかについては, 異常気象が北海道農業に及ぼす影響を考える上で,重要な研究・技術開発課題となると考える。したがって,寒地にある北海道といえども冷害のリスクに備えながらと温暖化に対しても適切に対応するための技術開発が必要である。
著者
井上 聡 廣田 知良 濱嵜 孝弘 根本 学
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究報告 = Research bulletin of the National Agricultural Research Center for Hokkaido Region (ISSN:13478117)
巻号頁・発行日
no.203, pp.15-21, 2014-10

2011年から2012年にかけて豪雪が発生し,積雪調査の結果,南空知地方に集中したことが明らかになった。岩見沢での最深積雪(208cm)や長期積雪期間(163日)は,気象庁統計史上最大であった。重回帰分析の結果,冬型と低温が要因として説明できた。農業雪害として,積雪深がハウス骨組みの肩を超え,沈降力により倒壊被害が多数生じた。今回の積雪深の再現期間は73年になり,肩(145cm)を超える再現期間は4年であった。長期積雪期間の再現期間は83年になり,9月多雨の影響もあり,秋まき小麦の雪腐病被害が甚大となった。消雪日は4月25日と最も遅くなった(再現期間42年)が,生育遅れはその後回復した。
著者
広田 知良 山﨑 太地 安井 美裕 古川 準三 丹羽 勝久 根本 学 濱嵜 孝弘 下田 星児 菅野 洋光 西尾 善太
出版者
日本農業気象学会
雑誌
生物と気象
巻号頁・発行日
vol.17, pp.34-45, 2017
被引用文献数
10

Although climatic conditions had hindered the introduction of Pinot Noir, a cultivar of wine grape (<i>Vitis vinifera</i>), to areas such as Yoichi and Sorachi, Hokkaido, northernmost Japan, the growing region of the cultivar has recently extended. We analyzed meteorological data to obtain the rationale for the successful cultivation of Pinot Noir in Hokkaido; climate shift since 1998 pointed by Kanno (2013), i.e., rise in summer temperature, facilitated cultivation of the variety. Today, Yoich and Sorachi have become the right locations for growing the cultivar, and it has also been grown in other areas. Indeed, the vintage chart in Tokachi indicated the consistent, good harvest of grape since 1998. There is negative correlation in the average monthly temperature between April and August, and positive correlation between August and September ever since the climate shift. We hypothesize the benefits of the climate shift in terms of wine production as follows: 1) in years with low April temperature and high summer temperature, the growth rate in early stage delays, but the temperature required for grape maturation is secured by high temperature in August and September; and 2) in years with warm April and subsequent cool summer, early growth start keeps the growing season long enough, which may have compensated the risk of poor grape maturation in cool summer. Thus, climate change is considered to have favored the cultivation of Pinot Noir in Hokkaido.