著者
赤尾 光昭 今中 常雄
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

申請者らは漢方方剤が経口服用されることに着目し、著明な配糖体成分の経口投与後のラット体内動態、薬効発現について検討を行ってきた。ポリフェノール配糖体であるバイカリンはユニークな動態を示し、特に腸管での代謝、排出がその動態に大きく関わっていた。現在、強力な抗酸化作用で注目されているポリフェノール類のバイオアベイラビリティーは極端に低く、in vivoでの効果には疑義がある。そこで、ポリフェノール類の動態に及ぼす消化管の寄与について検討することを目的としている。代表的ポリフェノールであるエピカテキン及びケルセチン、さらにlithospermate Bについて検討し、いずれも腸管から吸収されにくいことを明らかにした。特に、lithospermate Bはわずかに吸収されたものも速やかに肝臓でメチル化され胆汁中に排出されるため、血中にはほとんど検出されなかった。バイカリンのユニークな動態の腸管代謝として、配糖体であるバイカリンは腸管上皮細胞への取り込みも僅かであるが、アグリコンであるバイカレインは腸管上皮細胞には取り込まれる。しかし、取り込まれたバイカレインは速やかにバイカリンへと抱合され、血液側ではなく管空側へ排出されるため、やはり難吸収性であった。この腸管上皮細胞からのバイカリン排出は、自然発症MRP2欠損ラットEisai hyperbilirubinemic ratの空腸反転腸管において有意に低く、さらにバイカレイン経口投与後の本ラット血中バイカリンのAUC値が通常ラットより5倍高く、バイカリン排出にMRP2が関与することが示唆された。また、ヒト腸管薬物動態in vitroモデル系であるヒト結腸癌由来Caco-2細胞においても、バイカリンの取り込みはわずかであるが、バイカレインは速やかに取り込まれた。この際も、取り込まれたバイカレインは速やかにバイカリンへと抱合され、バイカリンは主に頂側膜側に排出された。その排出はMRP2選択的阻害剤で抑制され、Caco-2細胞においてもバイカリン排出にMRP2が関わっていることが明らかとなり、ヒト腸管においてもラット同様のユニークなバイカリン動態が推測された。ヒトにおいてもラット同様、ポリフェノール類の腸管における吸収、代謝、排出がバイオアベイラビリティーに大きく関わっていることが示唆された。