著者
今井 公俊
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

当科で体外受精・胚移植を受けた患者で、Veeckの基準による形態良好胚を2回以上子宮腔内に移植したにも拘わらず妊娠に至らなかった者を登録した。その中で次回予定体外受精・胚移植の前の月経周期の分泌期に所定の子宮鏡検査、採血、内膜組織診を行えたのは5名であった。この5名の平均年齢は37.2歳、平均不妊期間12.4年、過去に行った体外受精・胚移植の平均回数は5.4回であった。子宮鏡検査当日に経膣超音波断層装置で測定した子宮内膜の厚さは約10mmであった。子宮鏡検査で異常所見のあったものは1例で、子宮底左に小ポリ-プを認めた。従来通りのH&E染色で子宮内膜日付診をしたところ、out of phaseが4例で、4例共従来の診断基準上子宮内膜不全と考えられた。次の月経周期に体外受精・胚移植を受け、妊娠に成功したものは2例、失敗したものは3例であった。成功症例と非成功症例に分けて、それぞれの検査項目に於いてこの二群間に差が有るか否かを検討したが、症例数が少なく、2群間の差については統計学的に有意差を認めなかった。今回の研究対象は不妊期間も長く過去に施行した体外受精・胚移植の回数も多かったが、5例中2例に子宮鏡検査・子宮内膜掻爬の次周期に妊娠に成功したことは、不妊症を起こす何らかの原因が子宮内膜に存在し、それを掻爬して新しい内膜の再生を促した事が寄与したと考えられる。今後症例数を増やし如何なる因子が関与しているかを検討する予定である。