著者
中野 克己 今井 基次 辻 哲也 里宇 明元
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.28-31, 1997 (Released:2003-07-30)
参考文献数
4

代表的なADL評価法の1つである機能的自立度評価法(FIM)を用いて,移動能力が他のADL項目とどのように関わっているのかを検討した。対象は,リハビリテーション科に入院していた73名。本研究では,FIMを1)セルフケア,2)排泄コントロール,3)移乗,4)移動,5)コミュニケーション,6)社会的認知の6つの大項目にまとめ指標に用いた。その結果,FIM総得点のうち,移乗・移動の合計は27%を占め,運動項目全体では72%を占めていた。そして入院中の得点向上率は,移乗13%,移動16%と6大項目中の上位2つを占めていた。またFIMは,主成分分析の結果,運動能力因子及び認知能力因子の2因子構造からなり,移乗・移動の大項目は,他の運動項目との間に高い相関を示したが,認知項目とは,低い相関を示した。以上より移動・移乗の大項目は,運動項目を通じてFIM総得点に深く関わっているが,認知項目との関与は少なく,他職種との連携がより要求されることが示唆された。