著者
荻野 雅史 稲岡 忠勝 渡邊 彰 米田 光宏 佐々木 和人 浅野 賢 鈴木 英二
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.10-13, 1996 (Released:2003-07-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

健常中高年女性63名を中年群,高年群の2群に分類し,骨密度に関連している因子の検討を体重,BMI,体脂肪率,体脂肪量,除脂肪量,握力について行った。その結果,各々の平均値では,骨密度,握力において高齢群で有意に低値を示した。骨密度との相関関係について,骨密度と体重,BMIとの関係では,両群ともに有意な相関が認められた。しかし,骨密度と体脂肪率とでは,両群ともに有意な相関は認められなかった。骨密度と体脂肪量との関係では,両群ともに有意な相関は認められたが,骨密度と除脂肪量とでは,中年群でのみ有意な相関が認められた。骨密度と握力との関係では,中年群でのみ有意な相関が認められた。骨密度は,体脂肪率といった体組成の割合による影響は認められず,体重,体脂肪量などその重さ(絶対値)が関係していた。また,筋力も重要な因子であることが確認できた。正しい体重管理,スポーツ,運動による筋力の向上などの外的因子を考慮した生活習慣の管理・指導が骨粗鬆症には重要であることが示唆された。
著者
赤坂 清和 高倉 保幸 陶山 哲夫 石川 雅樹
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.2-7, 2001 (Released:2003-07-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高齢者の転倒による受傷が多い大腿骨頚部・転子骨折の理学療法を行う場合、寝たきりを予防するためにも出来るだけ早期より立位歩行練習を行うことが推奨されている。理学療法士は骨折部の固定性、術側下肢の荷重量、整形外科的治療後の合併症に対して充分な知識を持ち、患者が訴える疼痛を予測し、実際に疼痛がある場合には迅速かつ適切に対応できなくてはならない。本稿では、大腿骨頚部・転子部骨折の分類に対する理解を深め、大腿骨頚部骨折では、Cannulated Cancellous Hip Screw(CCHS)、ハンソンピン、セメント人工骨頭置換術における理学療法の実際とその注意点、大腿骨転子部骨折では、Compression Hip Screw(CHS)およびγnailによる骨接合術後の理学療法および理学療法を遂行する上での注意点を簡潔にまとめた。
著者
佐野 千絵 工藤 昌弘 中濱 正利 佐野 勇介 下村 景太 佐野 芳一 楢松 雅裕 橋本 視法
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.47-51, 2005 (Released:2005-07-29)
参考文献数
15

当院では膝前十字靭帯断裂に対しての再建術として,平成12年6月よりDouble-Looped Semitendinosus and Gracilis Graft(以下DLSTG)移植術を採用している。リハは術前より介入し,術後翌日より全荷重許可,膝装具不要,14日以内の独歩獲得を基本方針とするプロトコールを作成した。プロトコールを実施し,術後4ヶ月以降膝の安定性および全可動域の獲得,大腿部筋力の患健比(健側の80%以上)の回復,競技に必要な能力の獲得が確認され次第主治医が許可し,早期スポーツ復帰が可能となった。
著者
仲林 理子 高篠 瑞穂 逸見 裕子 刈田 淳 長谷川 芳男 小菅 弘
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-39, 2002 (Released:2003-06-27)
参考文献数
3

高齢者の主な疾患である骨粗鬆症の増加に伴い、脊椎圧迫骨折患者が増加している。安静臥床を保持するだけで骨折椎体は再構築するが、長期臥床により合併症を併発する可能性は高くなる。合併症を未然に防ぐためには早期離床が必要である。そのためには骨折椎体にかかる負担を軽減しなければならない。また、軽微な外傷であっても受傷時より比較的大きな損傷を呈していたり、経過中に椎体の圧潰を生じ遅発性神経麻痺を引き起こすことがある。このような複雑な疾患に対し、当院では受傷時のMRI診断による病型分類と治療法に基き、理学療法を施行している。早期より体幹ギプス固定、および体幹筋の筋力強化を行い、脊柱の抗重力能を補うことで早期離床を可能とし、合併症を予防することができた。しかし、早期に退院が可能となっても患者や家族の不安により入院期間が延長してしまうことが多く、退院に向けての指導が今後の課題として残された。
著者
熊井 満喜 柊 幸伸
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.33-38, 2005 (Released:2005-07-29)
参考文献数
6

臨床における理学療法評価の中の動作分析は,理学療法士の手と目による動作分析が主であり,技量と経験に依存している部分が多い。動作分析の客観的評価機器には3次元動作分析装置や床反力計等が用いられているが,価格,操作性,設置場所等の問題があり,臨床で広く普及するには至っていないのが現状である。近年,加速度や角速度が計測できる小型のセンサが容易に入手できるようになり,理学療法やその隣接領域でそれらセンサを用いた動作分析の試みがなされてきている1-3)。今回,我々は市販の3軸角速度センサとA/D変換器を用いた動作分析システムを使用する機会を得た。3軸角速度センサを大腿部,下腿部,足部の3カ所に装着し,トレッドミル上の歩行分析を試みた。下肢の各関節の運動が細部にわたって記録できており,運動方向と運動速度の関係から動作の分析が可能であった。比較的安価に作成することが出来た今回のシステムは,臨床での客観的な動作分析に有用であると考えた。また,コンパクトで動作を拘束することが少ないため,歩行分析だけでなく,あらゆる動作分析に応用可能なものであると考えた。
著者
細田 多穂
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.2-16, 2003 (Released:2003-06-24)
被引用文献数
2

理学療法士は平成14年現在で33,415名となり、今後も養成施設の急増に伴い、増加の一途をたどることが予測される。2000年4月からは公的介護保険が導入され、理学療法士が他職種の中でいかなる役割を果たしていくべきかが問われるなど、今後、保健・医療・福祉の分野で多くの仕事が山積している。本論文では、20世紀を振り返り、21世紀に求められる理学療法士のあり方について私見を踏まえ記載した。
著者
大久保 純
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-38, 1995 (Released:2003-08-05)
参考文献数
2

片麻痺患者はある程度の非麻痺側の代償を用いて,動作の獲得を学習していく。これに感覚障害を伴うことは,麻痺側の機能回復の妨げになるとともに,より非対称で異常な代償にて動作を学習していくと考えられる。報告する症例は弛緩性右片麻痺,深部感覚障害が重度で歩行は困難な状態で転入院してきた。治療は感覚障害に対して視覚代償による自己管理だけを進めるのではなく,運動機能と感覚との関係に注意して運動療法による感覚の回復を求め異常性の少ない歩行の獲得を図った。その結果,右下肢の深部感覚障害は軽度となり自宅周囲の散歩が可能なレベルの歩行を獲得し退院することができた。脳血管障害の感覚障害の改善と運動機能の回復は別々に治療を行うのではなく,互いの関連を考え同時に進めていくことの必要を改めて感じることができた。
著者
中野 克己 今井 基次 辻 哲也 里宇 明元
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.28-31, 1997 (Released:2003-07-30)
参考文献数
4

代表的なADL評価法の1つである機能的自立度評価法(FIM)を用いて,移動能力が他のADL項目とどのように関わっているのかを検討した。対象は,リハビリテーション科に入院していた73名。本研究では,FIMを1)セルフケア,2)排泄コントロール,3)移乗,4)移動,5)コミュニケーション,6)社会的認知の6つの大項目にまとめ指標に用いた。その結果,FIM総得点のうち,移乗・移動の合計は27%を占め,運動項目全体では72%を占めていた。そして入院中の得点向上率は,移乗13%,移動16%と6大項目中の上位2つを占めていた。またFIMは,主成分分析の結果,運動能力因子及び認知能力因子の2因子構造からなり,移乗・移動の大項目は,他の運動項目との間に高い相関を示したが,認知項目とは,低い相関を示した。以上より移動・移乗の大項目は,運動項目を通じてFIM総得点に深く関わっているが,認知項目との関与は少なく,他職種との連携がより要求されることが示唆された。
著者
荻野 雅史 江連 和己 渡辺 彰 佐々木 和人 鈴木 英二
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-24, 1995 (Released:2003-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

三郷市健康フェアーに参加した一般県民74名(男性31名,女性43名)を対象に,ウエストヒップ比と肥満指標(Body Mass Index,体脂肪率,皮脂厚)及びWBIの関連性について調査検討した。その結果,ウエストヒップ比と肥満指標・WBIとの間には相関関係が認められた。このことから,ウエストヒップ比は,肥満の評価には有用であり,また,筋力低下による下肢痛などの障害発生の一指標になる可能性があると考えられた。
著者
里宇 明元
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.2-21, 2000 (Released:2003-07-29)
参考文献数
42
被引用文献数
1
著者
中浜 正利 工藤 昌弘 國沢 洋介 宮本 明輝美
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.18-22, 2001 (Released:2003-07-03)
参考文献数
7

近年、肩鎖関節脱臼および鎖骨遠位端骨折の手術には、フック付プレートが用いられるようになり、これによって従来の術法に比し術後早期からの肩関節可動域の獲得が可能となってきた。今回我々は、本法を用いた11症例(Wolter clavicular Plate 8例、Best社製Plate 3例)について、術後理学療法の指標として肩関節可動域を測定することにより本法の利点、問題点を検討したので報告する。肩関節外転角度は術後3週で平均85度、術後8週では平均142度であった。従来法では術後3週間の外固定を要し、6~8週間は外転を90度までに制限されるのに比べ、本法ではより早期に可動域の獲得が可能であった。なお、Wolter clavicular Plateを用いた肩鎖関節脱臼の1例で、鎖骨の過度の下方圧迫による「挟み込み」のためと思われる可動域制限を認めた。また、Best社製Plateでは全般的に可動域の改善は良好であったが、プレート固定中の水平屈曲にのみ、他方向に比べ制限が認められた。以上より、フック付プレート固定法では、術後早期の可動域の獲得により日常生活や社会への早期復帰も可能であったが、プレートの構造による問題点も存在し、これらを考慮に入れた可動域運動が必要であると思われた。

1 0 0 0 OA 高齢者の転倒

著者
解良 武士
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-13, 2002 (Released:2003-06-27)
参考文献数
17
被引用文献数
2

転倒は様々な原因によって発生するが、その防止には要因の分析とそれに応じた対応が必要となってくる。本稿は転倒、特に高齢者の転倒について、文献考察を交えて理学療法士の立場より解説する。