著者
福島 卓矢 辻 哲也 中野 治郎 石井 瞬 杉原 進介 佐藤 弘 川上 寿一 加賀谷 斉 田沼 明 関根 龍一 盛 啓太 全田 貞幹 川井 章
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.143-152, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
24

【目的】がん診療連携拠点病院における入院がんリハビリテーション(リハ)治療の詳細を明らかにし,基礎データを確立することである.【方法】質問紙を用いた調査研究であり,リハ専門職種を対象に,施設概要,入院がんリハ実施の有無,Dietz分類,対象疾患,治療内容を調査した.【結果】Dietz分類の回復で最も関わりが多く,対象疾患は肺,大腸,血液,胃,肝・胆・膵がんの順に多かった.大腸や胃がんでは一般病院,血液がんでは大学病院,骨軟部腫瘍ではがん専門病院,口腔・咽頭・喉頭がんでは大学病院およびがん専門病院での実施割合が有意に高かった.治療内容は歩行練習が最も多く,次いで筋力増強練習,基本動作練習,日常生活動作練習,呼吸リハと続いた.呼吸リハにおいては,大学病院および一般病院での実施割合が有意に高かった.【結論】施設特性に応じて入院がんリハが実施されており,これらの効果検証と発展が課題である.
著者
辻 哲也 園田 茂 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.301-309, 1996-05-18
参考文献数
13
被引用文献数
26 51

機能的自立度評価法(FIM)を用いて, 脳血管障害患者190例の入院・退院時のADL評価を行った.項目別自立度により運動, 認知項目の難易度パターンを調べ, Rasch分析により運動, 認知項目の合計点別に各項目の点数分布を分析した.運動項目では, 難易度パターンは入院・退院時とも同様であり, 損傷病巣側, 年齢による差もなかった.認知項目では損傷病巣側により差がみられた.痴呆は難易度パターンに影響を与えていた.また, Rasch分析により, 運動項目は合計点別に50点未満の介助群から80点台後半の応用歩行自立群までの5つのグループに分けられた.一方, 認知項目では症例の一元性に問題があり, Rasch分析以外の解析手法を検討すべきであると思われた.
著者
工藤 由紀 伊藤 郁乃 新藤 直子 永井 英明 辻 哲也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.217-222, 2015 (Released:2015-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】最期までトイレで排泄を希望する患者は多くみられるが,トイレ歩行が行えた最終時期や影響因子についての報告は少ない.【方法】緩和ケア病棟で2010年1月~2011年12月に死亡退院した154名(中央値75.0±11.6歳)のがん患者について,死亡1カ月前・2週前・1週前のトイレ歩行の可否を後方視的に調査した.加えて6項目(①疼痛②呼吸苦③傾眠④せん妄⑤オピオイド投与⑥酸素吸入)の有無を調査し,トイレ歩行/非トイレ歩行の2群間で比較した.【結果】トイレ歩行症例は死亡1カ月前79名(51.3%),2週前54名(35.1%),1週前33名(21.4%)であった.傾眠・せん妄は非歩行群に,呼吸苦は歩行群に有意に高い頻度で認められた.【考察】がん終末期において①トイレ歩行の実態を示した②リハ介入の余地があると思われたが,意識障害の発現と労作時呼吸苦への対策が必要である.
著者
辻 哲也 園田 茂 千野 直一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.301-309, 1996-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
13
被引用文献数
41 19

機能的自立度評価法(FIM)を用いて,脳血管障害患者190例の入院・退院時のADL評価を行った.項目別自立度により運動,認知項目の難易度パターンを調べ,Rasch分析により運動,認知項目の合計点別に各項目の点数分布を分析した.運動項目では,難易度パターンは入院・退院時とも同様であり,損傷病巣側,年齢による差もなかった.認知項目では損傷病巣側により差がみられた.痴呆は難易度パターンに影響を与えていた.また,Rasch分析により,運動項目は合計点別に50点未満の介助群から80点台後半の応用歩行自立群までの5つのグループに分けられた.一方,認知項目では症例の一元性に問題があり,Rasch分析以外の解析手法を検討すべきであると思われた.
著者
宮田 知恵子 藤原 俊之 補永 薫 辻 哲也 正門 由久 長谷 公隆 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.301-307, 2008-05-18 (Released:2008-06-10)
参考文献数
17

上肢局所性ジストニア患者においては,大脳皮質興奮性の増大が認められ,皮質興奮性を低下させる低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が,症状の改善に有効であることが知られている.より簡便な経頭蓋直流電流刺激(tDCS)も皮質興奮性の修飾をもたらすことが報告されており,局所性ジストニアの治療に有効な可能性がある.さらに装具を用いた上肢運動の抑制により,局所性ジストニアが軽減することも報告されている.そこで,われわれは,上肢局所性ジストニアに対して,tDCSと装具の併用療法を施行した.Cathodal tDCSは刺激強度1 mA,刺激持続時間10 分間,1 日1 回,5 日間連続して施行し,その後,右母指と右示指の指節関節固定装具を装着させた.5 日間連続のtDCSの後には,書字動作時の長母指屈筋と第一背側骨間筋の過剰な筋活動が減少し,刺激間隔20 ms,100 msにおける相反性抑制ならびに皮質内抑制の出現を認めた.さらにスプリントの装着により,その効果は3 カ月後にも維持されていた.tDCSとスプリントの併用療法は,局所性ジストニアの治療に有効である可能性が示唆された.
著者
中野 克己 今井 基次 辻 哲也 里宇 明元
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.28-31, 1997 (Released:2003-07-30)
参考文献数
4

代表的なADL評価法の1つである機能的自立度評価法(FIM)を用いて,移動能力が他のADL項目とどのように関わっているのかを検討した。対象は,リハビリテーション科に入院していた73名。本研究では,FIMを1)セルフケア,2)排泄コントロール,3)移乗,4)移動,5)コミュニケーション,6)社会的認知の6つの大項目にまとめ指標に用いた。その結果,FIM総得点のうち,移乗・移動の合計は27%を占め,運動項目全体では72%を占めていた。そして入院中の得点向上率は,移乗13%,移動16%と6大項目中の上位2つを占めていた。またFIMは,主成分分析の結果,運動能力因子及び認知能力因子の2因子構造からなり,移乗・移動の大項目は,他の運動項目との間に高い相関を示したが,認知項目とは,低い相関を示した。以上より移動・移乗の大項目は,運動項目を通じてFIM総得点に深く関わっているが,認知項目との関与は少なく,他職種との連携がより要求されることが示唆された。
著者
篠澤 毅泰 吉田 和恵 波多野 陽子 辻 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E4P3184, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】 当院では入院患者に対し、リハビリ時間以外でも自主訓練が行えるよう、自主トレーニング(以下、自主トレ)を実施しているが、定着する患者と定着しない患者がいるのが実状である。渡邊らは外来患者を対象とし、自主トレの定着効果にセルフエフィカシー(ある結果を生み出そうとしたときの行動選択に直接的な影響を及ぼす因子のことで、自己効力感・自己遂行可能感と訳す、Banduraが提唱)が関与することを報告したが、入院患者を対象とした研究はいまだない。また、自主トレ定着効果についての研究は少なく、不明な点も多い。 本研究の目的は、入院患者を対象としてQOL尺度である生活満足度、セルフエフィカシー等を評価し、分析・検討することにより、自主トレ定着に影響を及ぼす因子を特定することである。【方法】 対象は当院入院患者のうち、認知症・失語症・高次脳機能障害の診断がなく、病棟内の移動およびトイレ動作が自立している当院入院患者とした。対象者に対して自主トレを導入、日々の実施記録を1週間記載してもらい、毎日自主トレを実施できた患者を定着群、1日でも実施できなかった患者を非定着群とした。 自主トレ提案時に、ADL評価としてFIM(機能的自立度評価法)、主観的QOL評価として生活満足度尺度K(以下、LSIK)、セルフエフィカシーの評価として一般性セルフエフィカシー尺度(以下、GSES)を評価した。 定着群、非定着群の2群間で各評価項目について比較検討を行った。統計処理にはMann-WhiteneyのU検定を用い、5%未満を有意水準とした。【説明と同意】 本研究の内容、自主トレの内容と効果については各担当者より説明し、同意を得た上で実施した。なお、当院の倫理委員会で承認を得た上で実施した。【結果】 対象者は18名、定着群は11名、非定着群は7名であった。内訳は男性8名、女性10名、平均年齢74.8±12.1歳、整形疾患8名、脳血管疾患10名であった。2群間に性別、年齢の有意な差は認めなかった。 2群間の比較では、GSESにおいて定着群10.9±2.8、非定着群5.9±3.9であり有意差(P<0.01)を認めた。一方、LSIKは定着群3.5±2.7、非定着群3.0±2.6、FIMは定着群107.4±8.2、非定着群103.1±10.1、発症からの日数は定着群100.9±42.0、非定着群94.1±28.8であり、いずれも有意な差を認めなかった。【考察】 渡邊らの先行研究と同様に、当院入院患者においても自主トレの定着効果にはGSESが関与していた。GSESは個人が生活していく状況の中で、困難な状況にどの程度耐えられるのかに関連する要因であり、広い意味での精神的健康と密接な関係があるといわれている。その得点が高い個人ほど困難な状況で、「問題解決行動に積極的に取り組み、自分の意志、努力によって将来に展望をもつという時間的展望に優れる」「自分の行動は努力や自己決定の結果であるという意識が高く、何に対しても努力しようという態度がみられる」と考えられている。 本研究においても自主トレという課題に対してGSESが高い患者ほど積極的に行い、定着するということが認められた。またLSIKにおいて有意な差が認められなかったことから、自主トレ定着には生活に満足している、満足していないという主観的QOLは関与していないことが分かった。 今後自主トレの定着効果を求めるうえで、GSESがその指標となる可能性が示唆された。GSESが高い患者は、自主トレ定着に対し特別な関わりを必要としないが、GSESが低い患者は、積極的に取り組むことが困難な場合があり、自主トレの提案方法や自主トレ提案後のセラピストの関わり方などに何らかの工夫が必要になると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 入院患者においても自主トレの定着効果にGSESが関与していることが分かり、LSIKは関与していないことが分かった。今後自主トレを提案する際にGSESの得点で、より積極的な関わりが求められる患者かどうかの選別ができる可能性がある。例えば、GSESの低い患者を集め、特定の関わり方をした群と通常の関わり方をした群で定着率に差が出るかを検証するなどして、GSESが低い患者の自主トレ定着には、どのような工夫や関わり方が必要になるかについて、今後検討していきたい。
著者
新藤 恵一郎 辻 哲也 正門 由久 長谷 公隆 里宇 明元 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.619-624, 2004-09-18
被引用文献数
2

書痙患者に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性を,ペン型簡易筆圧計を用いて検討した.書痙患者5例および健常群5名に対して,rTMSを一次運動野直上に安静時運動閾値の95%の刺激強度で1,500回施行した.書痙患者では,字体および書字評価のすべての指標(書字時間,最大筆圧,平均筆圧,変動値)で改善がみられたが,特に書痙患者に特徴的な拙劣さの指標である変動値の改善が著しかった.一方,健常群への影響は認めず,変動値において「健常群・書痙群」「rTMS前後」カテゴリー間の三元配置分散分析に有意な交互作用(p<0.01)を認めた.本研究により,rTMSによる書痙患者への効果が示され,また,簡易筆圧計による4つの書字評価の指標を組み合わせることにより,より鋭敏にrTMSによる治療効果をとらえることができる可能性が示唆された.