著者
今井 絹子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.352-359, 1994-12-01 (Released:2011-05-30)

人間として小さな生命が誕生しても, 脳に何らかの病変が生じ, 脳性麻痺による心身障害児になったらその生涯は苦難の道を歩まなければならない。本院に来院した障害児は約9年間で55名である。そのうち重症児は40名, 中等度の障害のもの15名であった。重度心身障害児では著しい症状の改善判定は難しいが, 中等症児の軽症化, 健常児化への改善は著しかった。心身障害児の治療は早期発見, 適切なる早期教育と治療永続性が成績改善への重要なポイントと思う。治療穴は身柱穴 (第2胸椎棘突起の下に取った) と私自身が身体障害者で, 体験の中から発見した新穴・股I穴 (下肢外側面大転子中央上部直上腸骨稜との線上中点) と股II穴 (上前腸骨棘の下方にあって縫工筋と大腿筋膜張筋の間陥凹部大腿直筋上) 等を使用した。現代医学的治療に於いて得られない治療効果を鍼治療において示すことにより, 障害児の自立へ向けて教育, 啓蒙してきた。小児の鍼治療分野は複雑で困難だが, 計り知れない小児の生命力に大きな可能性を賭け, 挑戦する機会を得られた事に感謝致します。