著者
山下 仁 大川 祐世 増山 祥子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.156-165, 2019-08-01 (Released:2020-07-13)
参考文献数
45

2019年5月に発刊された 「腰痛診療ガイドライン2019 (改訂第2版)」 の鍼治療に関する記載において、 文献選択、 データ抽出、 データ入力などの間違いにより逆の結果を示している深刻な誤情報を複数発見したので、 それらを指摘して正しい情報を提供する。 1. 日本人の腰痛に対する日本の鍼治療のランダム化比較試験 (RCT) のメタアナリシス論文の存在が無視されている。 2. 急性腰痛に対する鍼治療については解析ソフトにRCTデータを正負逆に入力する誤りがあり、 鍼が対照群に対して優位でないという逆の結論を導いている。 また、 機能障害のデータ統合の一部で疼痛のデータを入力して解析している。 3. 慢性腰痛に対する鍼治療についてのメタアナリシスで組み入れたRCT5論文の介入の内訳は鍼、 耳ツボ指圧、 レーザー鍼、 椅子の指圧背もたれ、 耳ツボ指圧であり、 鍼灸針を刺入する鍼治療は1編のみであるため、 これは鍼治療のメタアナリシスではない。 誤入力も多く、 図7と8はその内容が逆である。 4. ヨガの医療経済効果のメタアナリシスとして引用している論文に医療経済効果についての記載はなく、 ヨガ以外については明確に示しているものはないとしているが実は鍼治療の費用対効果のメタアナリシス論文が存在する。 Minds診療ガイドラインの手引き2014に 「完全準拠した」 とする腰痛診療ガイドライン2019だが、 システマティックレビューチームを設けておらず、 外部評価委員会の編成については記載がない。 このような状況が深刻な誤りを見逃してしまったことと関連していると推測している。 他の療法に関しても多数の誤りを確認しており、 このままでは日本の診療ガイドラインの社会的信用を大きく失墜することになるため、 できるだけ早い時期に修正版が発行されることを望んでいる。
著者
福田 文彦 石崎 直人 山崎 翼 川喜田 健司 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-86, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
72
被引用文献数
2 1

臨床ガイドラインは、 臨床医師が特定の疾患を治療する際の意思決定を支援することによって最高の診療を推進するという目的のもとに、 系統的に作成されるものである。 それらはエビデンスと連動しており、 より良い診療を行うために作成される。 鍼灸治療は、 医師や看護師、 理学療法士、 助産婦などの保健医療従事者や医療訓練を受けていない施術者などによってさまざまな状況で行われる可能性があるにもかかわらず、 一般の保健医療施設における安全な鍼灸診療のためのガイドラインはない。 ここに示すガイドラインはがん患者の症状、 特に疼痛症状の緩和やその他 (ホットフラッシュなど) の非疼痛性の症状に用いるために作成された。 本ガイドラインは、 がん患者における鍼治療の方針を提示する必要がある鍼灸師のための雛形として示すものである。 本稿には、 ガイドライン及びガイドラインとともに利用するための、 鍼治療のメカニズムや効果、 安全性についての総括的レビューが含まれている。 付記には、 自分自身で鍼治療を行うための方法を示した。 ガイドラインには、 役割と責任、 鍼治療の基準、 適応、 禁忌及び注意事項、 鍼治療、 調査及び監査のセクションが含まれている。 これらのガイドラインは治療に関する基本的で最低限の標準を示すものであり、 今後のデータとエビデンスの蓄積に応じた再評価と確認が必要である。
著者
井上 悦子 七堂 利幸 北小路 博司 鍋田 智之 角谷 英治 楳田 高士 會澤 重勝 西田 篤 高橋 則人 越智 秀樹 丹澤 章八 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.635-645, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)

風邪症状に対する鍼灸の予防、治療効果に関する多施設ランダム化比較試験 (RCT) の経緯ならびに現状について紹介した。パイロット試験では2週間の鍼治療が明瞭な効果を示したのに対し、多施設RCTによる同様な咽頭部への鍼刺激、さらには普遍的な間接灸刺激 (2週間) の効果は、いずれも300名を超す被験者を集めながら顕著なものとはならなかった。そこで、治療期間を最低8週間として、各施設においてパイロットRCTを実施した結果、より有効性が高まる傾向が認められた。これまでの臨床試験の経験や反省をふまえた議論のなかで、被験者の選択や対照群の設定、実験デザイン等の再検討の必要性が確認された。
著者
佐藤 万代 山崎 翼 上坂 梨沙 音田 愛 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.157-167, 2012 (Released:2012-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】近年、 ストレスや生活の乱れなどが心身にさまざまな影響を及ぼし、 その結果、 肌状態の悪化を自覚する女性が増加している。 このような背景から、 局所的なケアだけでなく、 全身の健康増進を通して美容効果を得ようとする鍼灸治療が注目され、 「美容鍼灸」 という一つの分野として職域的に拡大している。 本研究では、 肌の不調を自覚する健常成人女性に鍼治療もしくは指圧療法を行い、 肌状態への効果と介入方法の特性について検討を行った。 【対象と方法】対象は肌の不調を自覚する健常成人女性14名とし、 鍼治療群7名と指圧療法群7名にランダム割付けした。 介入期間は4週間とし、 各群ともに週2回の介入を行った。 評価は介入期間の前後とし、 主観的評価として主観的健康感、 身体的・精神的疲労VAS、 ナーリス気分テスト、 肌状態アンケートを、 客観的評価として皮膚色調 (L*値、 a*値、 b*値)、 メラニン指数、 Hb指数、 HbO2指数、 角質細胞面積、 三次元画像変位量によるたるみ、 レプリカ (目尻・鼻唇溝) 解析によるシワ面積率、 および、 印象について評価を行った。 統計処理は、 2群の介入前比較には対応のないt検定を、 介入前後の群内比較には対応のあるt検定を用いた。 【結果】客観的評価においては、 両群の背景因子には有意差は認められなかった。 鍼治療群では主観的なシワ、 たるみ、 肌状態の有意な改善、 客観的評価では左鼻唇溝のシワ面積率減少傾向を認めた。 指圧療法群では主観的な皮脂、 ナーリス気分テストの有意な改善、 客観的評価ではL*値、 HbO2指数の増加傾向、 b*値、 メラニン指数の低下傾向を認めた。 【考察・結論】鍼治療はシワなどの形態的変化を、 指圧療法は皮膚色調を変化させる可能性が考えられた。 効果が異なる理由は不明だが、 介入の違いによるものと考えられた。 本研究は主観的、 客観的評価を用いて美容鍼灸の効果の一端を明らかにしたものであり、 意義のあるものと考えられた。
著者
福島 正也 藤井 亮輔 近藤 宏 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.176-184, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
9

【緒言】平成28年までの10年間で、 はり及びきゅうを行う施術所が59%増加している。 これまでに全国規模のあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう業に関する業態調査が実施されているが、 はり・きゅう業を中心に業態を分析した報告はみられない。 今後のはり・きゅう業の在り方を検討するためには、 はり・きゅう業の経営実態に関する調査が必要である。 そこで、 今回我々が実施した全国規模のあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう業の業態調査から、 はり・きゅう業者の患者数、 施術料金、 年収に焦点を当てて報告する。 【方法】全国のあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう業者を対象に、 層化系統抽出法による、 個人施術所15,000件、 法人施術所2,000件、 出張専門業者3,000件の計20,000件を抽出標本とする調査を実施した。 調査は郵送法で、 平成28年10月末に発送し同年11月18日までの投函を依頼した。 回収した調査票から、 営業中かつはり師・きゅう師免許を所持する業者を集計対象とし、 月間患者数、 施術料金、 年収について、 全体の集計と営業形態、 所持免許 (はり師・きゅう師免許、 あん摩マッサージ指圧師免許、 柔道整復師免許)、 性別、 年代の別による集計を行った。 集計値は、 実数値とパーセンタイル、 または、 中央値と四分位範囲で表記した。 【主な結果と考察】回収した調査票4,605票の内、 3,117票が集計対象であった。 はり・きゅう業者の標準的な経営実態として、 月間患者数98人、 施術料金3,000円、 年収324万円という数値が示された。 月間患者数、 施術料金、 年収の分布には大きなばらつきがみられ、 年収では低額層と高額層の極端な二極分化が認められた。 主な背景として、 はり・きゅう業の受療率の低さ及び柔道整復療養費の支給対象外疾患への支出が影響していると推測された。 はり・きゅう業の経営実態を明らかにするためには、 さらなるデータの解析が必要である。
著者
山口 創
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.732-741, 2008 (Released:2009-03-10)
参考文献数
2

本稿では第1に、 身体心理学の立場から、 自己と環境との境界としての皮膚感覚について論じられた。 第2に、 身体接触が心に与える影響に関する実験について紹介した。実験では、 触れる側、 触れられる側、 自己接触の3群の不安低減効果について検討した結果、触れられる側にのみ心理的変化があることを紹介した。 次いで幼少期の両親との身体接触は、 成人後にも対人関係に影響を与えている事実を紹介し、 皮膚自体が記憶をもつ可能性について示唆し最後に、 鍼灸治療における皮膚の機能や役割について論じた。鍼灸は皮膚へ介入する治療であり、 それが内臓や筋肉などに変化を及ぼし、 さらにその変化が皮膚に反映される。 つまり皮膚は入力と出力の界面である。 そのような視点から皮膚を観ることや、 皮膚に直接接触することの重要性について論じた。
著者
山口 創
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.132-140, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
4
被引用文献数
1

皮膚と心の関係について、特に癒しとの関連ついて生理学や心理学の研究をもとに紹介した。まず皮膚は脳と同じ外胚葉から発生し、皮膚も情報処理器官であることを指摘し、皮膚感覚が心に及ぼす影響について述べた。次に皮膚をなでることによって生じる振動には、1/fゆらぎの特徴をもつ振動が発生し、それが快の気分を生じさせる可能性について述べた。また触れることによってオキシトシンという生理物質が脳内で分泌され、それが相手との親密な人間関係の構築に役立つことや、 癒しをもたらす実験について紹介した。さらに触れる際に重要な点は、ゆっくりした速度で手を動かして触れることと、弱い圧で触れることである点を指摘した。前者はC触覚線維の発火によってもたらされる効果あり、後者は副交感神経が高まるためである。 これらの特徴をもつ触れ方によって、人は最大の癒しを得ることができ、快の感情が最大に高まると考えられる。最後に、皮膚を入力と出力の両面の視点で捉える必要性について述べた。皮膚に触れることは刺激の入力としての視点であるが、皮膚は内臓など身体内部や心の働きが表出される部位でもあるため、 出力としての視点もまた重要である。従って皮膚に触れることを通じて、相手の内部状態を把握する態度が重要になると考えられる。
著者
松岡 憲二 北村 清一郎 金田 正徳 堺 章 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.195-202, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15

解剖実習用遺体において, 〓門, 天柱, 風池, 完骨, 翳風の5経穴に針を深刺し, 以後, 針を抜くことなく表層より解剖をすすめ, 刺入針と後頸部の構造との関連を調べた。〓門, 天柱, 風池の各穴への刺入針は, いずれも後環椎後頭膜や脳硬膜などを貫通し, 最終は延髄に達していた。刺入点より脳硬膜までの深さは頸周囲39.1cmの遺体でそれぞれ50mm, 51mm, 49mmであった。また, 風池穴の深部約40mm付近には椎骨動脈, 完骨穴の部では後頭動脈, 翳風穴の部では外頸動脈や顎動脈が浅層の部を近接走行しており, 刺針の際, 手技や深さに充分な注意を払うことが望まれる。
著者
真柳 誠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.605-615, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)

日本は中国で失われた多くの佚存古医籍や善本を保存し、現代に伝えている。それらに基づき江戸末期まで高度な古典研究がなされ、明治以降は近代医学を導入して鍼灸の研究と教育方法が体系化されてきた。一方、鍼灸療法は清朝後期に廃絶政策が実施され、中国の鍼灸は中華民国初期にほとんど壊滅状態にいたっていた。さらに民国政府は中国医学を廃止しようとした。しかし中国伝統医師達は日本の研究成果も援用した反対運動を行い、中国医学は存続された。また承淡安が日本から導入した鍼灸医学と教育方法は、新中国以降に中国鍼灸学が復興する礎となった。このような背景により形成された新たな中国医学が、いま日本に再び渡来している。過去の歴史は今後の歴史に連なるのである。
著者
菅田 良仁 東家 一雄 大西 基代 戸田 静男 黒岩 共一 木村 通郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.241-245, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

われわれは, 前報で透熱灸が生体内にあたえる温度変化について報告した。その際, 皮下では50℃以上に上昇することを示したが, 今回の隔物灸 (生姜および大蒜灸) でも同様に, 皮下で50℃をこえる温度変化が認められた。しかも, 透熱灸にくらべ50℃以上の状態を維持する時間が長く, 温熱刺激を緩和すると考えられている隔物灸が, むしろ透熱灸より強い刺激をあたえている可能性があることがわかった。また, その隔物灸の生体内におよぼす温度変化は, 隔物の含水量と皮膚組織の含水量の影響を強く受けることが予想された。
著者
松田 博公
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.156-165, 2008 (Released:2008-09-02)

内外の情勢は、 日本の鍼灸界に日本鍼灸学の構築を要求しています。 日本鍼灸の特色の一つを、 自然治癒力思想を根幹とすることだと考え、 そのルーツを探るのが本発表の課題です。 現在われわれが口にする自然治癒力思想を顧みると、 それは、 中国伝統医学を継承したものではなく、 江戸中期に輸入された蘭学由来のものであるという仮説が浮かび上がります。 幕末に刊行された江戸期最大の養生書 『病家須知』 に記された<自然作用力>というキーワードに着目し、 和田啓十郎の漢方復興運動の論拠となった<自然良能>の思想などを振り返りながら、 日本の鍼灸家が親しんできた自然治癒力思想が、 西洋のヒポクラテス医学のものであることに迫ります。 そして、 江戸期の日本人がヒポクラテス医学の自然治癒力思想を受け入れた背景には、 <邪正一如>という日本独自の治癒力思想があったという仮説も提出して、 検討に供したいと思います。
著者
山口 創
出版者
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.132-140, 2014

皮膚と心の関係について、特に癒しとの関連ついて生理学や心理学の研究をもとに紹介した。まず皮膚は脳と同じ外胚葉から発生し、皮膚も情報処理器官であることを指摘し、皮膚感覚が心に及ぼす影響について述べた。次に皮膚をなでることによって生じる振動には、1/fゆらぎの特徴をもつ振動が発生し、それが快の気分を生じさせる可能性について述べた。また触れることによってオキシトシンという生理物質が脳内で分泌され、それが相手との親密な人間関係の構築に役立つことや、 癒しをもたらす実験について紹介した。さらに触れる際に重要な点は、ゆっくりした速度で手を動かして触れることと、弱い圧で触れることである点を指摘した。前者はC触覚線維の発火によってもたらされる効果あり、後者は副交感神経が高まるためである。 これらの特徴をもつ触れ方によって、人は最大の癒しを得ることができ、快の感情が最大に高まると考えられる。<BR>最後に、皮膚を入力と出力の両面の視点で捉える必要性について述べた。皮膚に触れることは刺激の入力としての視点であるが、皮膚は内臓など身体内部や心の働きが表出される部位でもあるため、 出力としての視点もまた重要である。従って皮膚に触れることを通じて、相手の内部状態を把握する態度が重要になると考えられる。
著者
形井 秀一 大田 美香 辻内 敬子 大塚 素子 伊田屋 幸子
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.2-13, 2015 (Released:2015-08-06)
参考文献数
6

お灸が、 現代の日本の鍼灸治療においてどのような役割を担えるのか、 その可能性を探るために、 灸の基礎的・臨床的効果や現代における灸の有り方を検討した。 大田美香氏は、 バイオインフォマティクスにより灸の実験対象を絞り込むことが可能である事を紹介し、 バイオインフォマティクス解析から灸の“熱”をキーワードとした研究結果を報告し、 今後、 灸の作用予測研究の発展の可能性を示した。 辻内氏は、 1980年代から、 開業鍼灸師の立場で灸の魅力を伝えるお灸の普及活動を始め、 産科領域の臨床研究に取り組み、 同領域に於ける灸の効果について、 多くの成果を明らかにしてきたことを述べた。 また、 大塚素子氏は、 灸が 「治療文化」 として愛媛で継承されてきたことの意味を明らかにし、 また、 愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室での鍼灸臨床や、 周産期母子センターでのセルフ灸指導の実践等を紹介し、 時系列分析を踏まえて、 灸が人生の途上で重要な役割を担った例を紹介した。 そして、 米国在住の伊田屋幸子氏は、 2008年にMoxafricaが、 アフリカにおいて始めた結核に対する直接灸の実践とその成果を報告し、 その成果を踏まえて、 今後、 鍼灸がさらに大きく発展する可能性があることを強調した。
著者
坂本 裕和 藤井 亮輔 光岡 裕一 坂井 友実 秋田 恵一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.218-225, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
20

【目的】経絡経穴とその周囲構造物との位置関係を形態学的に明らかにする一環として、 下肢後面における経穴について検討した。 【方法】東京医科歯科大学解剖学実習体3体6側を使用した。 下肢後面における足の太陽膀胱経に刺鍼を施し、 その部位を中心とした局所解剖を行った。 【結果】1. 承扶・殷門は、 大腿二頭筋の表層を走行する後大腿皮神経および深層を走る坐骨神経より内側に位置した。 2.浮ゲキ・委陽は、 大腿二頭筋停止腱の内側縁に沿って総腓骨神経の走路に位置した。 3.委中・合陽・承筋・承山・飛揚・フ陽・崑崙・申脈は、 内側腓腹皮神経、 腓腹神経およびは小伏在静脈に沿って位置した。 4. 委中・合陽・承筋・承山は、 深層では脛骨神経および膝窩動脈、 後脛骨動脈に沿って位置した。 【結論】1.後大腿皮神経および坐骨神経は承扶・殷門より外側を走行する傾向が強く、 これら神経への刺鍼は承扶・殷門より外側に施す必要性が示唆された。 2. 下腿後面の腓腹神経および小伏在静脈は、 末梢に向かうにつれて経穴に沿う傾向が強くなる。 3.下腿後面の深層を走る脛骨神経への刺鍼は、 委中・合陽・承筋・承山が効果的であることが示唆された。