著者
今井 雅和
出版者
消費者金融サービス研究学会
雑誌
消費者金融サービス研究学会年報 (ISSN:13493965)
巻号頁・発行日
no.5, pp.113-128,200, 2004

本稿の目的は、ロシアにおける個人ローンの現状と課題を明らかにすることにある。社会主義時代の「強制された貯蓄」から消費社会へと、ロシアは大きく変貌をとげている。国民の平均収入も実質で2桁の伸びを示し、国内総生産の約半分は個人消費によるものである。個人の銀行預金が増加し、個人向けのローンもようやく始まり、急成長している。個人ローンは、3年未満の販売信用、3年超の住宅ローン、クレジットカードに分類される。参入者増による競争激化もあり、貸出金利は低下傾向にある。ルーブル建ての販売信用は、他のローンに比べ、金利レベルが高く、当該顧客の信用レベルが不安定なことを示唆している。販売信用ビジネスでは、ルースキースタンダルト銀行が初期参入者利益と卓越した戦略によって強みを発揮している。クレジットカードビジネスでは7割、販売信用でも4割近いシェアを握り、第一位を占めている。同社の強みの一つは債権リスク管理である。住宅ローンは、制度の不備もあって、担保ローンの普及率が極めて低い。長期の個人ローン市場をほぼ独占する、最大手のズベルバンクは、担保ではなく、複数の保証によって住宅ローンを急速に伸ばしている。住宅ローンの課題は、担保権の確実な執行、担保ローンの債券市場の整備である。