著者
長坂 昌一郎 今川 八束 村田 道里
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.591-596, 1991-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

伊豆諸島では古くから「七島熱」と呼ばれるつつが虫病の流行が知られ, これまでに大島, 新島, 式根島, 神津島, 三宅島, 御蔵島, および八丈島で患者が確認されているが, 流行区域内の利島では報告がなかった. 今回我々は利島において, 1988年12月, ついで1989年12月にあいついでつつが虫病の症例を経験したので報告する.第1例は73歳男性, 第2例は83歳女性で, 両症例とも, 発熱, 発疹, 刺し口の主要症候を認めたが, リンパ節腫脹, 肝脾腫は認めなかった. 治療はテトラサイクリン系抗生物質の投与をおこない, 両症例とも速やかに解熱し, 発疹も徐々に消腿した. 血清学的には間接免疫蛍光法により, IgG抗体はKarp, Gilliam, Katoの各標準株に対して上昇し, IgM抗体はGilliam株にのみ上昇を認め, Gilliamないしその類縁株による感染が強く疑われた.
著者
福山 正文 今川 八束 原 元宣 田淵 清 伊藤 武 尾畑 浩魅 甲斐 明美
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.508-512, 1994-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
22

ヒトのVero毒素産生性大腸菌 (VTEC) 感染症に対する感染源や感染経路を究明する一環として, 1991年10月から1992年3月までの期間に相模原市, 横浜市および平塚市で飼育されていた健康な家畜 (ウシ, ブタおよびヤギ) の新鮮糞便を採取し, VTECの分離を試みたところ, ブタ105例中1例 (1.0%), ウシ55例中2例 (3.6%) およびヤギ13例中12例 (15.4%) からそれぞれVTECが認められた.特にヤギについてはわが国では初めての分離例であった.分離菌株の血清型と毒素 (VT) 型の組合わせはウシ由来株ではO116: H21 (VT2) とO163: H19 (VT2), ブタ由来株ではOUT: H19 (VT2vp), ヤギ由来株ではすべてOUT: H21 (VT1) であった.以上の成績からウシおよびヤギから分離されたVTECは, ヒト由来のVTECが産生するVTと同じ毒素型のVTを産生していることが明らかとなり, これらの家畜がヒトの感染源に関与していることが考えられた.