著者
鄭 宗義 今村 一信 大塚 純正 柴崎 好伸
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-54, 1997-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
28

審美的な顔貌の獲得のための矯正治療のゴール設定を目的として, 顔面形態と下顎前歯の位置について以下の検討を行った.研究対象は, 矯正治療を終了した88名で, これらについて審美的観点から調和群, 不調和群の2群に分類し, Rickettsの分析法を用いて, 顔面形態ならびに歯の比較検討を行った.特に, 側面頭部X線規格写真の計測からA-Pog線に対する下顎中切歯の植立状態と顔面形態が, 審美性に対してどのように関連しているのかを検討し, 以下の結果を得た.1.調和群の側貌の上唇は, Esthetic lineより0.2mm後方, 下唇は1.0mm前方に位置していた.一方, 不調和群では上唇は0.9mm前方, 下唇は3.0mm前方に位置しており, 不調和群の下唇は調和群に比べ有意に前方位を取っていた.2.下唇の前後的位置と下顎前歯の位置とに有意な相関が認められ, 側貌の調和には下顎中切歯の位置が関与していることが示された.3.A-Pog線に対する下顎中切歯の切端の位置は, 中顔型で3.7±1.4mm, 短顔型は3.6±1.6mm, 長顔型は4.7±2.0mmであった.一方, 下顎中切歯の歯軸傾斜には, 顔面形態による有意な相違は認められず, 平均25.6°であった.以上, 審美性の見地から矯正治療の目標を設定する際には, 顔面形態による相違を考慮に入れる必要があり, 特に長顔型の場合, 他に比べ下顎前歯の位置をやや唇側に植立するように留意すべきであることが示された.