著者
江黒 節子 篠原 親 柴崎 好伸 中村 篤 大野 康亮 道 健一
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.68-73, 1997-03-31
参考文献数
3
被引用文献数
1

上顎前歯歯槽部が過度に露出した上顎前突症患者 (Angle Class II division 1) に対し, 矯正治療に加えLe Fort I型骨切り術と下顎枝矢状分割術を併用することで, 顔貌と咬合の改善を計った.Le Fort I型骨切り術は, 術直前に, 上顎左右第二大臼歯を抜去することで得られた抜去空隙を利用し, 後方移動量を増大させた.結果, 上顎中切歯切縁にて, 上方に7.0mm, 後方に5.0mm, 上顎第一大臼歯近心咬頭頂にて, 上方に4.5mm, 後方に7.0mmの移動が可能となり, 更に, 下顎枝矢状分割術の併用により, ANB角は7.0度から3.9度へ改善された.これより本法は, 著しい上顎前突症患者に対し, 良好な顔貌および咬合状態を得る有用な方法と考えられたので, その概要を若干の考察を交え報告する.
著者
鄭 宗義 今村 一信 大塚 純正 柴崎 好伸
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-54, 1997-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
28

審美的な顔貌の獲得のための矯正治療のゴール設定を目的として, 顔面形態と下顎前歯の位置について以下の検討を行った.研究対象は, 矯正治療を終了した88名で, これらについて審美的観点から調和群, 不調和群の2群に分類し, Rickettsの分析法を用いて, 顔面形態ならびに歯の比較検討を行った.特に, 側面頭部X線規格写真の計測からA-Pog線に対する下顎中切歯の植立状態と顔面形態が, 審美性に対してどのように関連しているのかを検討し, 以下の結果を得た.1.調和群の側貌の上唇は, Esthetic lineより0.2mm後方, 下唇は1.0mm前方に位置していた.一方, 不調和群では上唇は0.9mm前方, 下唇は3.0mm前方に位置しており, 不調和群の下唇は調和群に比べ有意に前方位を取っていた.2.下唇の前後的位置と下顎前歯の位置とに有意な相関が認められ, 側貌の調和には下顎中切歯の位置が関与していることが示された.3.A-Pog線に対する下顎中切歯の切端の位置は, 中顔型で3.7±1.4mm, 短顔型は3.6±1.6mm, 長顔型は4.7±2.0mmであった.一方, 下顎中切歯の歯軸傾斜には, 顔面形態による有意な相違は認められず, 平均25.6°であった.以上, 審美性の見地から矯正治療の目標を設定する際には, 顔面形態による相違を考慮に入れる必要があり, 特に長顔型の場合, 他に比べ下顎前歯の位置をやや唇側に植立するように留意すべきであることが示された.
著者
福原 達郎 槙宏 太郎 柴崎 好伸 鐘ケ江 晴秀 平出 隆俊 加藤 博重
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

本年度は、本システムによる立体復構モデルを、実際の臨床における外科手術前の診断・術後の予測に応用した。まず、顎顔面部の左右非対称性がみられる患者において、三次元画像上におけるミラ-テクニックを用いた外科手術のシミュレ-ションをおこない、立体モデルとの比較をおこなった。その結果、三次元画像は、それまでのセファログラムの比べて、外科的な骨削除の部位や移動方向のおおよその推定は可能であるが、立体モデルと比べて、離断部位、削除量などが不正確であることが示された。また、本システムを用いた正確な部位の確認と削除量、移動量の検討により、顎関節部の形態、位置関係を前後的、上下的に容易に観察できるため、術後の骨片の動きなどを予測することが可能となった。モデルの作成に要した時間を以下に示す。1.CT撮影・外形線の抽出70(分)2.イメ-ジリ-ダ-による各断層像座標値の取り込み403.CAD内でのモデル構築204.CAMへの出力ならびに切削3005.積層時の外枠形態の出力(一体加工)406.積層・接着20したがって、本システムによる立体モデルは、外科矯正治療における診断・予測のうえで非常に有用であり、治療の支授システム、または、術者間のコミュニケ-ションツ-ルとしての大きな効果が期待されるものと考えられた。
著者
大城 卓寛 塩谷 あや 横谷 浩爾 佐藤 友紀 柴崎 好伸 佐々木 崇寿
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.121-129, 2002-06-30

ヒト乳歯の生理的歯根吸収の細胞機構を調べるため, 破歯細胞における液胞型H<SUP>+</SUP>-ATPase, カテプシンK, MMP-9, RANKLの免疫組織化学的発現を調べた.H<SUP>+</SUP>-ATPase, ライソゾーム性のタンパク分解酵素であるカテプシンK, MMP-9はそれぞれ, アパタイト結晶の脱灰と1型コラゲンの分解に重要な酵素群である.さらにRANKLは, 破骨細胞の形成と機能発現に重要な調節分子の一つである.破歯細胞は吸収中の歯根象牙質表面に, 波状縁と明帯を広範囲に形成した.免疫電子顕微鏡像では, 液胞型H<SUP>+</SUP>くATPaseの発現を示すコロイド金粒子の分布が破歯細胞の空胞の限界膜と波状縁の形質膜に沿って観察された.破歯細胞におけるカテプシンKは, 空胞内, ライソゾーム内, 波状縁の細胞間隙, および吸収面の象牙質表層の基質に観察された.破歯細胞におけるMMP-9の発現はカテプシンKの発現と類似していた.RANKLは象牙質吸収面に局在する単核の間質細胞と破歯細胞の両方に見出された.これらの結果から, (1) 破歯細胞はH<SUP>+</SUP>-ATPaseによるプロトンイオンの能動輸送によるアパタイト結晶の脱灰, そして (2) カテプシンKとMMP.9の両方による象牙質1型コラゲンの分解に直接関与しており, (3) 破歯細胞の分化と活性は, 少なくとも部分的には, RANKLによって調節され, さらに (4) RANKLは吸収組織において単核の間質細胞と破歯細胞自身によって生成されていることが示唆された.このように, ヒト乳歯の生理的歯根吸収における細胞機構は破骨細胞性骨吸収機構と極めて類似していることが明らかとなった.
著者
中村 靖 斉藤 茂 山崎 健一 柴崎 好伸 Yasushi NAKAMURA Shigeru SAITO Kenichi YAMASAKI Yoshinobu SHIBASAKI 昭和大学歯学部歯科矯正学教室 昭和大学歯学部歯科矯正学教室 昭和大学歯学部歯科矯正学教室 昭和大学歯学部歯科矯正学教室 Department of Orthodontics School of Dentistry Showa University Department of Orthodontics School of Dentistry Showa University Department of Orthodontics School of Dentistry Showa University Department of Orthodontics School of Dentistry Showa University
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 = The journal of Japan Orthodontic Society (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.159-169, 1995-06
参考文献数
47
被引用文献数
4

矯正学的歯の移動時には, 歯槽骨を形成している細胞と歯根膜細胞が矯正力というmechanical stressに対してさまざまな反応を示すことが知られている.そこで本研究は同一外科矯正患者から同時に採取した下顎骨片と健全な下顎第一小臼歯から骨系細胞と歯根膜細胞を剥離して培養した.両細胞に間欠的遠心力(50&acd;250回転)を付与し, DNA合成能, 細胞内アルカリフォスファターゼ(ALPase)活性, サイクリックAMP(cAMP)産生量, プロスタグランディンE_2(PGE_2)産生量, インターロイキン6(IL-6)産生量, 骨吸収能を測定した.両細胞に付与した間欠的遠心力が上記測定項目に対してどのような影響を与えるかを検討し, あわせて両細胞の反応性の相違についても比較検討した.その結果, 1. DNA合成能および細胞内ALPase活性は, 250回転において両細胞とも有意に促進された.2. 骨系細胞において, 遠心力の付与によりすべての回転数でcAMPおよびPGE_2産生量が有意に抑制され, IL-6産生量に関しても50回転において抑制傾向があった.3. 歯根膜細胞においては, 遠心力を付与してもcAMP, PGE_2, IL-6の産生量がほとんど変化しなかった.4. 骨吸収能は遠心力を付与した培養上清を用いると両細胞とも150回転で有意に抑制された.以上のことから, DNA合成能と細胞内ALPase活性は高回転の間欠的遠心力に対して両細胞とも促進することが示された.また, 骨系細胞の骨吸収能はPGE_2, IL-6の影響を直接的に受けやすいが, 歯根膜細胞に関してはPGE_2, IL-6以外にも骨吸収能に影響を与える何らかの因子が存在することも示唆された.It has been shown that bone cells and periodontal ligament (PDL) cells have various responses to mechanical stress during orthodontic tooth movement. The following experiments were performed to compare the responses of these two cell types to mechanical stress. Cortical bone specimens derived from mandible and PDL of first premolars were obtained at the same time from the same patient undergoing surgical orthodontics. In the confluent phase, intermittent centrifugal forces (ICF) were applied to the cultured bone cells and PDL cells at 50&acd;250 rpm. After centrifugation, the cultured cells were used for the assays of DNA synthesis, alkaline phosphatase (ALPase) activity and cyclic AMP (cAMP) production, and the cultured media were used for the assays of prostaglandin E_2 (PGE_2) production, interleukin-6 (IL-6) production and bone resorption activity. The results were as follows : 1. ICF at 250 rpm significantly induced DNA synthesis and ALPase activity in each cell type. 2. In bone cells, the amounts of cAMP and PGE_2 were significantly decreased by ICF at all magnitudes of force tested, and those of IL-6 tended to be decreased by ICF at 50 rpm. 3. In PDL cells, the amounts of cAMP, PGE_2 and IL-6 were hardly changed by ICF at all magnitudes of force tested. 4. ICF at 150 rpm significantly inhibited the bone resorption activity in each cell type. These results suggested that DNA synthesis and ALPase activity are stimulated by high-speed ICF in each cell type. These results also suggested that bone resorption activity caused by ICF in bone cells was directly affected by PGE_2 and IL-6. However, in PDL cells, there may be agents that affect bone resorption activity other than PGE_2 and IL-6.