著者
今田 貴之 RAZMJOO Khorshid 平野 純子 金子 誠二 石井 龍一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.225-235, 1993-09-20

寒地型芝草のペレニアルライグラス(PR)は,夏の暑さがストレスの原因となるような地域では芝草としての利用が制限される。現在,いくつかの品種が芝草として利用されているので,高温ストレス耐性品種を選抜することは可能だと考えられる。そして,異なる温度での明確な高温耐性の品種間差異を区別できる選抜方法を開発するこは,暑い地域でのPRの各品種の利用の可能性を検討することに役立つと考えられる。そこでこの実験は,PRの各品種の異なる温度での高温ストレス耐性品種の選抜と,その選抜技術を開発することを目的として行った。PR58品種は,人工気象室で栽培した。高温ストレスは,温度を29℃から1日1℃上昇させることにより加えた。そして高温ストレス耐性の評価は,36,38,42,44,46,48℃の各温度での生存率を目視で評価した。36℃のとき,最初の障害がいくつかの品種に発生した。ほとんどの品種は,38℃で耐性があり障害は認められなかった。42℃ではほとんどの品種の生存率は,50%以上で,いくつかの品種がその温度で耐性があると考えられた。さらに,44℃では数品種が生存率50%以上を示した。従って,PRの品種が生存できる温度は,44℃が限界と思われた。46℃のとき,JPR092,JPR123,JPR010は,生存率50%以上を示した。48℃のとき耐性のあった品種の障害は,この温度が生育にとって高すぎ,休眠したことを示していると考えられた。最も耐性の低い品種はJPR005で,耐性の高い品種はJPR178であった。全ての品種がその耐性の違いにより明確に区別できたため,この選抜技術は高温ストレス耐性品種の選抜に利用することができると考えられた。