著者
肥後 昌男 磯部 勝孝 前川 富也 石井 龍一
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.3-10, 2011-04-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
43
被引用文献数
1

冬季に導入した種々の作物根に感染したAMFの群集構造の違いを明らかにするため,日本大学生物資源科学部附属農場(腐植質黒ボク土)において圃場試験を2箇年にわたり行った。2007年は11月にコムギを播種した11月播きコムギ区と4月にコムギを播種した4月播きコムギ区,ナタネ区の計3区を設けた。2008年はコムギ区,アカクローバ区,ナタネ区の計3区を設けた。両年とも冬作物の根におけるAMFの群集構造を調査した。2007年においては11月播きコムギ,4月播きコムギの根では共にGlomus属のAMFが共通して認められたが,Gigasporaceae科のAMFは4月播きコムギしか認められず,同じ作物でも播種時期の違いによって根に感染するAMFの群集構造が異なることが明らかになった。2008年では,コムギ,アカクローバの根ではGlomus属のAMFが共通して認められたが,Gigasporaceae科のAMFはアカクローバでしか認められなかった。本研究より,同一作物による播種時期の違いや栽培する作物の種類により根に感染するAMFの群集構造が異なることが明らかとなった。
著者
今田 貴之 RAZMJOO Khorshid 平野 純子 金子 誠二 石井 龍一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.225-235, 1993-09-20

寒地型芝草のペレニアルライグラス(PR)は,夏の暑さがストレスの原因となるような地域では芝草としての利用が制限される。現在,いくつかの品種が芝草として利用されているので,高温ストレス耐性品種を選抜することは可能だと考えられる。そして,異なる温度での明確な高温耐性の品種間差異を区別できる選抜方法を開発するこは,暑い地域でのPRの各品種の利用の可能性を検討することに役立つと考えられる。そこでこの実験は,PRの各品種の異なる温度での高温ストレス耐性品種の選抜と,その選抜技術を開発することを目的として行った。PR58品種は,人工気象室で栽培した。高温ストレスは,温度を29℃から1日1℃上昇させることにより加えた。そして高温ストレス耐性の評価は,36,38,42,44,46,48℃の各温度での生存率を目視で評価した。36℃のとき,最初の障害がいくつかの品種に発生した。ほとんどの品種は,38℃で耐性があり障害は認められなかった。42℃ではほとんどの品種の生存率は,50%以上で,いくつかの品種がその温度で耐性があると考えられた。さらに,44℃では数品種が生存率50%以上を示した。従って,PRの品種が生存できる温度は,44℃が限界と思われた。46℃のとき,JPR092,JPR123,JPR010は,生存率50%以上を示した。48℃のとき耐性のあった品種の障害は,この温度が生育にとって高すぎ,休眠したことを示していると考えられた。最も耐性の低い品種はJPR005で,耐性の高い品種はJPR178であった。全ての品種がその耐性の違いにより明確に区別できたため,この選抜技術は高温ストレス耐性品種の選抜に利用することができると考えられた。
著者
石井 龍一
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.33-48, 2006-03-15

国際的な安全保障の枠組として,国連本体(安保理,総会)と地域主義の双方を考える必要があるが,これを国連憲章レジームと名づけることができる。この様なレジームに対する各国の国内世論上のイメージ,信頼度には差異がみられ,これが各国の政策面にも影響を与えている。同時に,戦後秩序の一部変更としての意味をもつ安保理常任理事国の再構成についての日本の国内世論上の支持は,強いナショナリズムと強いインターナショナリズムの複合を背景としている点で,他に見られない特色を持っている。しかし,アメリカ等は政策上その安全保障の枠組として,上記のレジームに依拠していることを背景として,安保理常任理事国の再構成をこのレジームから切り離して推進するインセンティブを特に有していない。従って,このレジームそのものを対象とした安全保障の再構築,特に中国等との東アジア地域での政治・外交的な調整が伴う場合にのみ,右の意味のインセンティブが現実化し得る。以上を,各国の世論調査等の動向を勘案しつつ,若干論じた。
著者
氏家 和広 笹川 亮 山下 あやか 磯部 勝孝 石井 龍一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.59-64, 2007 (Released:2007-02-28)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5

本研究は,我が国でキノアの経済栽培を行う際に必要な基礎データを集収するために行ったものである.一連の研究の最初に,我が国の気象条件下でのキノアの播種適期を検討した.実験1では,南米の高地で栽培されているValleyタイプの品種と,高緯度・低地で栽培されているSea-levelタイプの品種を人工気象室内で栽培し,日長,気温が子実肥大および収量に及ぼす影響を調べ,播種適期を予測しようとした.Valleyタイプは,長日条件によって子実肥大が著しく抑制された.このため,関東地方南部においてValleyタイプを栽培する場合には,子実肥大期が短日条件にあたる7月以降に播種する必要があると考えられた.一方,Sea-levelタイプでは,子実肥大に日長は影響しなかったが,高温条件下で多収となった.そのため,子実肥大期が高温期にあたる3月~5月が播種に適すると考えられた.実験2では,上記のことを実証するために,屋外で播種時期を変えてポット栽培した.その結果においても,Valleyタイプは7月播種が,Sea-levelタイプは3月あるいは5月播種が,他の播種期に比べて高い収量を示したので,これらが関東地方南部における各タイプの播種適期であることが確認された.また,二つのタイプ間で収量を比較すると,Sea-levelタイプの3月,5月播種区の方がValleyタイプの7月播種区よりも多収であったことから,関東地方南部ではValleyタイプよりもSea-levelタイプの品種の方が適していると考えられた.
著者
磯部 勝孝 氏家 和広 人見 晋輔 古屋 雄一 石井 龍一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.167-172, 2012 (Released:2012-03-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2 10

起源地が異なるキノア2品種を人工気象室で栽培し,昼夜の気温が子実肥大に及ぼす影響を明らかにした.供試した品種はValleyタイプのAmarilla de Marangani(以下,AM)とSea levelタイプのNL-6である.両品種とも播種から開花始めまでは昼温25℃,夜温10℃,日長13時間で栽培し,開花始めに昼温を25℃,夜温を10℃(25/10℃区),15℃(25/15℃区),20℃(25/20℃区)の3段階に設定する区,および夜温を17℃,昼温を20℃(20/17℃区),25℃(25/17℃区),30℃(30/17℃区)の3段階に設定する区の合計6区を設けた.全ての区において,開花始め以降の日長は11時間とした.キノアの子実肥大に対して10℃から20℃の範囲では夜温の影響はなかったが,昼温が20℃から30℃の範囲では両品種とも低いほど子実肥大が促進された.その結果,昼温が20℃の時の1000粒重が最も大きくなったが,これは粒径に対する影響であり,粒厚に対しては影響が小さかった.昼温を20℃にするとValleyタイプのAMは1000粒重と粒数が増加し,昼温が20℃から30℃の範囲では昼温が20℃の時に子実重が最も大きかった.一方,Sea-levelのNL-6は昼温が低くなるほど粒数が減少し,子実重は昼温が30℃の時が最も大きかった.このことからAMとNL-6では子実肥大の機構に及ぼす昼温の影響は異なると考えられた.
著者
石井 龍一
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.332-338, 2003-12-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
7
著者
石井 龍一
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.19-31, 2004-03-15

経済不況下で進捗するグローバリゼーションと国家の役割をめぐり,各種の議論がみられるが,「ナショナリズム」「コスモポリタニズム」「普遍主義」等のキーワードの意味内容は,必ずしも一定していない。特に,「普遍主義」についは,硬直的,原理的なインプリケーションを有するとの理解も見られる。そこでこれらの用語の比較,整理と若干の考察を試みた。