著者
小林 由佳 吉澤 重克 金子 誠二 清水 敏克
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.158-164, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

現在,消毒剤として広く使用されている次亜塩素酸ナトリウムに比して,人体への影響が少なく,有機物存在下でも殺菌効果が期待できる亜塩素酸水について,Escherichia coli (E. coli)の殺菌効果とネコカリチウイルス(feline calicivirus: FCV)の不活化効果およびその濃度と効果との関係を検証した.  亜塩素酸水は有機物としてのウシ血清アルブミン(bovine serum albumin: BSA)存在下でも,殺菌・不活化効果があり,この時の遊離塩素濃度と殺菌・不活化効果に高い相関性が認められた.  さらに,亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムを,有機物としてのBSAと接触させ,接触前後の遊離塩素濃度の推移並びに溶液に対するE. coliの殺菌効果およびFCVの不活化効果を検討した.  亜塩素酸水のBSA接触後の遊離塩素濃度は,30分以上の接触時間でほぼ一定となり,残存遊離塩素は40~70%であった.高濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液でもBSAと30分間接触後の遊離塩素は激減した.  亜塩素酸水はBSA接触後,E. coliおよびFCVに対する有効な殺菌効果およびウイルス不活化効果が確認されたが,次亜塩素酸ナトリウムではそれらが認められなかった.  亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと比較して有機物との共存下における遊離塩素濃度が高く,有機物存在下でも消毒効果が期待できる薬剤であると考えられた.
著者
今田 貴之 RAZMJOO Khorshid 平野 純子 金子 誠二 石井 龍一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.225-235, 1993-09-20

寒地型芝草のペレニアルライグラス(PR)は,夏の暑さがストレスの原因となるような地域では芝草としての利用が制限される。現在,いくつかの品種が芝草として利用されているので,高温ストレス耐性品種を選抜することは可能だと考えられる。そして,異なる温度での明確な高温耐性の品種間差異を区別できる選抜方法を開発するこは,暑い地域でのPRの各品種の利用の可能性を検討することに役立つと考えられる。そこでこの実験は,PRの各品種の異なる温度での高温ストレス耐性品種の選抜と,その選抜技術を開発することを目的として行った。PR58品種は,人工気象室で栽培した。高温ストレスは,温度を29℃から1日1℃上昇させることにより加えた。そして高温ストレス耐性の評価は,36,38,42,44,46,48℃の各温度での生存率を目視で評価した。36℃のとき,最初の障害がいくつかの品種に発生した。ほとんどの品種は,38℃で耐性があり障害は認められなかった。42℃ではほとんどの品種の生存率は,50%以上で,いくつかの品種がその温度で耐性があると考えられた。さらに,44℃では数品種が生存率50%以上を示した。従って,PRの品種が生存できる温度は,44℃が限界と思われた。46℃のとき,JPR092,JPR123,JPR010は,生存率50%以上を示した。48℃のとき耐性のあった品種の障害は,この温度が生育にとって高すぎ,休眠したことを示していると考えられた。最も耐性の低い品種はJPR005で,耐性の高い品種はJPR178であった。全ての品種がその耐性の違いにより明確に区別できたため,この選抜技術は高温ストレス耐性品種の選抜に利用することができると考えられた。
著者
平井 昭彦 金子 誠二 仲真 晶子 石崎 直人 小田桐 恵 甲斐 明美 貞升 健志 新開 敬行 矢野 一好 諸角 聖
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.86-92, 2005-06-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
17
被引用文献数
8 8

PCR法により市販牛乳244検体のCoxiella burnetii 汚染状況調査を行った結果,131検体(53.7%)からC. burnetii 遺伝子が検出された.このうち22検体についてマウスによる菌分離を試みたがすべて陰性であった.次にPCR法による鶏卵中のC. burnetii 検査法の検討を行った.卵黄に1 mol/L NaCl加phosphate bufferを等量加え,ホモジナイズ後遠心することで多量のタンパク質や脂質を除去できC. burnetii を沈渣中へ集菌することができた.SDSで消化後NaI法によりDNAを抽出しPCR法でcom1 遺伝子を確認した.本法のC. burnetii 検出感度は3.2×101個/卵黄1 gであった.本法により市販鶏卵200検体を調べたが,C. burnetii は検出されなかった.