著者
清水 徹 今西 努 加藤 大
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.143-149, 2007 (Released:2012-11-27)
参考文献数
9

尿路結石症は,痛風の合併症のなかでも尿酸が直接あるいは間接に関与する重要な合併症であるが,その実態には未だ不明な点が多く残されており,痛風患者における腎結石の有病率でさえも正確に杷握されていない.統計学上の定義に従うと,有病率(prevalence)は「ある一時点において疾病を有している人の割合」であり,痛風患者における腎結石の有病率は,結石の有無を横断的に検査することにより求めることができる.従来,腎結石の状況をリアルタイムに検査する適切な手段はほとんど見当たらなかったが,マルチスライスヘリカルCTの普及に伴い,他の方法では困難とされていた小結石やX線透過性の尿酸結石の診断が可能になった.最近4年間に来院した原発性痛風患者312例の内,初診時に腎臓をマルチスライスヘリカルCTで検査した253例について調べたところ,23.7%に相当する60例に腎結石が認められた.一方,問診による尿路結石歴の調査では,CTを施行した253例の結石歴陽性率は312例における陽性率よりも1.2倍高かった.これは臨床上のCT撮影の必要性というバイアスが関与しているためと考えられることから,23.7%を1.2で補正して得られた「19.8%」が,痛風患者におけるほぼ適正な腎結石有病率と推定された.