著者
金子 希代子 福内 友子 稲沢 克紀 山岡 法子 藤森 新
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-21, 2015-07-25 (Released:2015-07-25)
被引用文献数
1 2

筆者らは以前から食品中のプリン体含量を測定してガイドライン附表などで報告しているが,本論文では新たに測定した品目を加えた292種の食品中プリン体含量を示すとともに量に従って分類し,それらの塩基別(アデニン,グアニン,ヒポキサンチン,キサンチン)含有率を比較した.卵類,果物,乳製品,芋類,穀類,野菜類,きのこ類,大豆製品は,どれも概ね50mg/100gの非常に少ない食品(ランク1)に分類され,主にアデニンとグアニンを含んでいた.肉類,魚類は100mg以上/100gの中程度以上の食品(ランク3)で,ヒポキサンチンを総プリン体の50%以上含むものも多かった.レバー,白子は300mg以上/100gの非常に多い食品(ランク5)であった.光沢のある魚の表面はグアニン結晶でできているが,これらの魚類はグアニンの比率が高かった.ヒポキサンチンは血清尿酸値を上昇させる作用が強く,グアニンはその作用が殆どないことから,総プリン体含量も多めでヒポキサンチンの比率の高い肉類,魚類の摂取は少なめにし,光沢のある魚は食べ過ぎずある程度摂取するのが望ましいと考えられる.卵類,果物,乳製品,芋類,穀類,野菜類,きのこ類,大豆製品はプリン体量も少なく勧められる食材である.
著者
竹内 裕紀 市田 公美 虎石 竜典 岩本 整 中村 有紀 今野 理 木原 優 横山 卓剛 池田 千絵 奥山 清 川口 崇 河地 茂行 尾田 高志 平野 俊彦 畝崎 榮
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.191-198, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)

背景:腎移植で使用される免疫抑制薬のアザチオプリンと高尿酸血症治療薬である尿酸合成阻害薬の併用は,アザチオプリンの活性代謝物6-メルカプトプリン(6-MP)の代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害することにより,6-MPの血中濃度が上昇し,重篤な骨髄抑制を起こす体内動態学的相互作用がある.しかし,添付文書の記載では,フェブキソスタットとトピロキソスタットは併用禁忌だが,アロプリノールは併用注意である.方法:アザチオプリンとアロプリノールの相互作用を起こした自験例や過去の報告により,併用の危険性を示し,添付文書におけるアザチオプリンと各尿酸合成阻害薬間における相互作用の記載内容の整合性について調査し,さらに文献値から求めた各尿酸合成阻害薬の臨床用量におけるキサンチオキシダーゼ阻害作用の効力比を比較することで,添付文書における尿酸合成阻害薬間の併用禁忌と併用注意記載の理論的な裏付けが存在するかも調べた.症例:生体腎移植後20年の女性患者で血清尿酸値が13mg/dLとなったためアロプリノールを開始することになった症例で,高度の腎機能低下患者(eGFR7.7mL/min)であったため,アロプリノールを50mg/ 日と減量して開始した.またアザチオプリンも75mg/ 日を服用していたため,,同時に50mg/ 日へ減量して併用を開始した.しかし,服用後に顕著な汎血球減少症が認められたため,即時アロプリノールを中止し,中止後は回復した.結果・考察:添付文書におけるフェブキソスタットとトピロキソスタットのアザチオプリンとの併用禁忌の理由は,「6-MPの血中濃度が上昇することがアロプリノール(類薬)で知られている.」からであり,実際のエビデンスはなかった.一方で,両剤の併用禁忌の理由の根拠薬であるアロプリノ-ルが併用禁忌となっていないことには矛盾があると考えられた.そこで,文献値から臨床用量におけるキサンチンオキシダーゼの阻害作用の相対効力比を算出した結果では,アロプリノールで弱く,相互作用は小さいことが推定された.しかし,5-FUとソリブジンの相互作用のように核 酸代謝拮抗薬の血中濃度を上げる相互作用は,骨髄抑制を起こす極めて危険な併用であり,本自験例や他の報告のように重篤な副作用を誘発する危険な相互作用であるため,併用注意のままでは問題があると考えられた.さらに,本症例を含め腎機能低下患者ではオキシプリノールの蓄積も加わり,6-MPの血中濃度が上昇しやすくなり,極めて危険な相互作用を起こす可能性が高くなると考えられ,少なくとも腎機能低下患者には併用禁忌とすべきと考えられた.
著者
石川 勲
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.145-157, 2010 (Released:2015-04-01)
被引用文献数
1 4

運動後急性腎不全とは,「短距離を全力疾走するなど無酸素運動後に,強い背腰痛を伴って発症する非ミオグロビン尿性の急性腎不全」をいう.したがって,従来から知られている,マラソンなど有酸素運動後に発生するミオグロビン尿性急性腎不全(Exertional rhabdomyolysis with acute renal failure)とは異なるものである.またこの「運動後急性腎不全」は症状の特徴から ALPE(Acute renal failure with severe Loin pain and Patchy renal ischemia after anaerobic Exercise)とも呼ばれるので,著者らは「運動後急性腎不全(ALPE)」と記載することを提唱している.運動後急性腎不全(ALPE)は患者の98%が男性で,年齢の中央値は19歳(IQR:16〜26)と,主に若い男性に発生する.典型例は,運動会や体育祭で200m走を複数回全力疾走し,その数時間後に,強い背腰痛,嘔気・嘔吐を訴えて,夜間救急外来を受診するというものである.しかし強い痛みから尿路結石と診断されることが多く,血清クレアチニンを測定しないと,急性腎不全の診断がつかない.また多くは非乏尿性急性腎不全で,尿の色に変化はなく,褐色尿も認めない.血清CK値は基準値内か高くても9倍以内である.221例の集計によると受診時の血清クレアチニン(中央値)4.0mg/dl,最高値(中央値)5.6mg/dlで,大部分は保存的治療で回復しているが,23%の症例では血液透析が必要になる.また報告例の58%が腎性低尿酸血症患者であり,腎性低尿酸血症は,この運動後急性腎不全(ALPE)の発生リスクとして最も重要なものである.発生機序についてはまだ解明されていない.しかし著者らは,delayed CT(造影24-48時後の単純CT)で,両腎に楔形の造影剤残存がみられることから,無酸素運動によって筋肉から何らかの腎血管攣縮因子が発生し作用するからという仮説を考えている.一方,腎性低尿酸血症患者に起こりやすい理由としては,急性尿酸腎症が起こるから,あるいは低尿酸血症で活性酸素消去系がうまく働かないから,さらには尿酸トランスポートの異常からなど,種々の説がある.
著者
金子 希代子
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.119-131, 2007 (Released:2012-11-27)
参考文献数
33
被引用文献数
2 3

食品に含まれるプリン体は,呈味性ヌクレオチドとして知られるように,うま味の素となっている.プリン体の由来は,主に細胞に含まれる核酸である.そのため,プリン体は,美味しいものや細胞数の多いものに多く含まれる.食事で摂取されるプリン体の5~9割は24時間以内に排泄される.しかし,尿酸の排泄は限られているため,尿酸は体内に残りやすくなっている.尿酸値を上げる食品として,プリン体,フルクトース,アルコール,下げる食品として,タンパク質(特に乳製品),ビタミンC,ポリフェノール,フラボノイド,食物繊維,コーヒーが報告されている.食品中のプリン体含量を種類別に示した.一部の高プリン体食品の摂取には気をつけた方が良い.生活習慣病に奨められる通常の1食分には,140-180mgのプリン体が含まれる.豆腐・卵・野菜を中心とした食事に含まれるプリン体は30-60mgであるため,痛風・高尿酸血症では,1食を豆腐・卵・野菜を中心とした食事にすることにより,ガイドラインで奨められる1日400mgを実施することができると思われる.
著者
瀨山 一正 野村 希代子 下岡 里英 高川(神原) 彩 箱田 雅之
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-122, 2016-12-20 (Released:2016-12-20)

進化医学によると,190万年前に始まったヒト種としての進化の過程で,約1万年前の農業導入前までほとんど99%の時間を,ヒトは運動量の多い狩猟採集生活をしていたと考えられる.食は,自生している植物性食品を主体に動物性食品も加えた雑食性で,この間の身体活動も含めた生活環境に適応していたと考えられる.従って,ヒトの遺伝子にこの時代までの生活環境の情報が分子的記憶として書き込まれていると言える.旧石器時代までの植物性食を主体とした食物の代謝後には体内でアルカリ成分が酸性成分より多く生成され生理的代謝性アルカローシスが生じていたと推測される.これに対して,現代食は構成食品の特色から必ず酸生成量がアルカリ生成量を超えるので,生理的代謝性アシドーシスを惹起する.この総説では,酸‐塩基平衡に関する遺伝子上の適応条件と現代食の代謝後の生理的条件が合致しない事が高尿酸血症・痛風発症の一要因になりうることを議論する.これを基に,従来からのこの疾患に対する食の介入に新たに酸-塩基平衡の視点から下記の条件を提案する.1 )食の代謝により生成される酸負荷を70 mEq/day以下とする.2 )食材の準備段階で,たんぱく質含量(P)(g表示)とK+含量(K+)(mEq表示)から求めたP/K+比を1.5 以下とする.3 )尿pHは6.0以上にする.
著者
加藤 玲奈 久保田 優 東山 幸恵 永井 亜矢子
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.43-48, 2014 (Released:2014-07-25)
被引用文献数
4 4

痛風に関する調査は成人を対象としたものが大部分であり,小児科領域での痛風の頻度を含めた実態はほとんど明らかになっていない.そこで今回,小児期および思春期における痛風の頻度とその実態に関する全国規模の調査を行った(調査期間:平成25年5-7月).小児科を有する全国の935病院を対象に,過去5年間(平成20-24年度)における小児科入院・外来患者数,痛風症例数を一次アンケートにて調査した.痛風症例が報告された場合は,その病態を二次アンケートにて調査した.回答病院数は512(54.8%),痛風報告症例は7例(男児6例,女児1例)であった.痛風発症時の年齢は中央値13.8(範囲12.7-18.3)歳,尿酸値10.1(8.5-11.4)mg/dlであり,7例中6例が何らかの基礎疾患を有していた.今回の調査により,小児期および思春期における痛風の頻度は極めて低く,多くの場合基礎疾患を有していることが明らかとなった.小児および思春期における痛風の頻度は極めて低いが,基礎疾患を有する患児が高尿酸血症を伴う場合には痛風発作に注意する必要があることが示唆された.