著者
小松 義典 仙道 悦子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.38-47, 2003-01-30 (Released:2017-12-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本報告は,著者らが昭和60年代まで重度のう蝕有病者率を示した地域において,昭和60年度以降乳幼児を対象にして口腔保健活動を行った10数年間の地域保健活動の取り組みと,その成果を述べたものである.活動の内容は1)3食をしっかり取る,2)砂糖を含むお菓子とジュース類の制限などの間食を含む食習慣の見直し,3)就寝前の保育者による仕上げ磨きの励行という生活習慣の見直し,4)可能な限り乳臼歯の予防填塞を行うことである.活動を行っている過程で,3歳児のう蝕有病者率は平成5年度に,一人平均う歯数は平成4年度に大幅な改善を示した.3歳児のう蝕有病者率は,活動前に80%以上だったものが平成10年度には40%以下に,3歳児の一人平均う歯数は,活動前に6.1本だったものが平成10年度には2.2本に改善した.これは1)間食を規則的に与えるようになったこと,2)飲み物が牛乳・お茶および水の割合が増加したこと,3)仕上げ磨きの実施率が増したことによる影響が大きいと考えられる.さらに,平成10年度の小学6年生におけるう蝕有病者率および一人平均う歯数は,活動前に比較しともに改善を示した.地域の特性を把握し,それに即した活動を行っている過程で,地域の口腔環境は改善できることを明らかにした.この活動の中心的役割を担ったのは歯科衛生士である.歯科医師は口腔保健活動の計画を作成し行政の理解を得られるように努力するべきである.