著者
樋出 守世 井上 一彦 今井 奨 山本 実
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.206-213, 1991-04-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
31

1. Japanese third molars were divided into sample groups based on the donor's year of birth, and 90Sr level in each sample group of 10 teeth was determined to compare it with the previously reported data obtained from sample groups of 28 teeth.2. Trace and detection-limit amounts of 90Sr were detected in the teeth from donors born in 1929-1931. The 90Sr level increased in the teeth from donors born in 1935, and reached a peak value of 66.9-72.8mBq/g Ca in the teeth from donors born in 1953. It decreased afer 1954 and reached 25.5mBq/g Ca in the teeth from donors born in 1970.3. Compared with previous data using 28 teeth as a sample group, good accordance was observed in period showing detection-limit level of 90Sr, tendency of increase thereafter, peak period, radioactivity at peak period, tendency of decrease after 1953 and radioactivity after peak period.4. These results clearly indicate that a small sample, that is, 10 teeth, is sufficient for the examination of annual change in the 90Sr level.
著者
四野宮 澄子
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.257-267, 1959 (Released:2010-03-02)
参考文献数
43

Continuous observations were made on a total of 189 pupils, 89 boys and 100 girls, who were admitted as first grade pupils to two Grammar Schools in two villages outside of Tokyo City for a period of 9 consecutive years since 1949, having followed their physical and dental development.Measurements of height and weight and oral examinations were conducted four times a year, -April, July, October and January-making plaster models by taking alginate compound impres sions on both jaws, which totaled 13, 608 impressions and models of 72 consecutive models per examinee.Parallel studies were made on a total of 11, 060 girl students ranging from 1st to 3rd grades of 14 Middle Schools in Tokyo and 2 others in Chiba Prefecture.Surveys on menoplania were made every month for a period of 30 months during 1956 through 1958. Measurements of height and oral examinations were made on those at menoplania to determine the time element of parmanent teeth eruptions and to observe the growth and development of teeth.Having observed the time element of permanent teeth eruptions from the view point of height development and age, the frequency by the height factor demonstrated extremely narrower range than by the factor, i. e., it was learned that the height has much closer relationship with the eruptions than the age, as it had been known.It has also come to the attention that the eruptions of the second molar have closer relations with menoplania, therefore, observations were made on 1, 458 girls on whom the meneplania and the eruptions of permanent teeth were precisely determined.Examinee were segregated into five types; Type I with all four second molar eruptions, Type II with three, Type III with two, Type IV with single and Type V with no second molar eruptions.The Type I amounted to 81.41% of the total examined, and it was revealed that the menoplania coincided with the eruptions of bilateral second molar on both jaws.The average height and age of the Type I, or at the time of menoplania was 149, 5 cm and 13 years 6 months respectively.
著者
小松﨑 明 小松 義典 小野 幸絵 田中 聖至
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.436-443, 2013-10

日本の東北地方の農村地域に在住する幼児162名を対象として,1歳6か月児歯科健康診査を受診以降,2歳,3歳児歯科健康診査の口腔診査,問診結果,Dentocult^@-Strip mutansのスコアを調査項目として,同児の11歳のDMF歯数との関連性を調査・分析した。その結果,1歳6か月時の結果では間食規則性と昼間保育者の2項目で有意差(p<0.01)が認められ,間食時間未決定群でう蝕が多くなっていた。同様に2歳時では,仕上げ磨き(p<0.01),間食規則性(p<0.05),昼間保育者(p<0.01)およびDent-SM(p<0.01)との間で有意差が認められた。また,ロジスティック回帰分析からは,2歳時仕上げ磨き(4.501,p<0.01)などで有意なオッズ比が得られた。分割表分析およびロジスティック回帰分析の結果から,2歳時,3歳時のう蝕罹患(dft),仕上げ磨き,間食時間の決定,昼間の保育者,およびDentocult^@-Strip mutansスコアの各要因について,11歳時のDMFTとの関連が認められた。これらの結果から,幼児期からこれらの項目でハイリスク者をスクリーニングし,歯科保健指導を重視することが,永久歯う蝕の抑制につながると考えられた。
著者
近藤 武 矢崎 武 奥寺 元
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-51, 1973 (Released:2010-10-27)
参考文献数
9
被引用文献数
2 or 0

日本の代表的産地の緑茶について, その浸出液中フッ素濃度を測定した結果, 一般的に高級茶 (玉露) に高濃度のフッ素を認め, さらに1回目の浸出で比較的多量のフッ素が浸出され2回目以後は少ない傾向がみられた。これらはお茶のおいしさを決める一つの科学的方法となるかもしれない。日本人のお茶からの平均的フッ素摂取量は0.48~0.97mg/日と計算され, 1日の食品よりのフッ素摂取の主要な部分を占るものと考えられた。成人男子について飲用実験を行つたところ, 緑茶浸出液中のフッ素の吸収はNaF溶液にくらべ遅れるが, 排泄は比較的速かに行なわれる傾向が認められ, NaFと緑茶中のフッ素との代謝のちがいを思わせた。また, この実験中, 尿中に排泄されるフッ素量について検討したところ, 尿中フッ素濃度 (ppm) は採尿量, 採尿時間により変動が大きいために, 尿中フッ素の測定と評価は一定時間内の蓄尿中のフッ素量 (μg) をもつて行なわれるべきものと考えられた。
著者
稲葉 大輔 釜阪 寛 南 健太郎 西村 隆久 栗木 隆 今井 奨 米満 正美
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.112-118, 2002-04-30
被引用文献数
10 or 0

馬鈴薯澱粉由来のリン酸化オリゴ糖(カルシウム塩;POs)が,溶液中ミネラルの不溶化と沈澱形成を阻害することが確認されている。本研究では,リン酸化オリゴ糖を配合したシュガーレスガムがエナメル質の再石灰化に及ぼす効果を口腔内実験により検討した。健常成人12名(男6名,女6名;平均年齢:21歳)を被検者とし,ランダムに3群に分け(n=4/群),二重盲検デザインの口腔内実験を行った。各被検者は,3個の脱灰エナメル質試料を接着した口蓋プレートを装着して,キシリトールガム, 2.5%POs配合キシリトールガム,ショ糖ガムのいずれかのガムを1日4回組閣した。実験期間中,フッ化物は使用せず,また試料の乾燥を防止した。エナメル質試料は1,2および4週間後に順次回収し,マイクロラジオグラフィで脱灰深部ld(μm)を評価した。2週間後,POsガム群の脱灰深度は40±3μmで,ショ糖ガム群(58±13μm)およびキシリトールガム群(61±6μm)よりも有意に低い値を示した(pく0.05)。また,4週間後では,POsガム群の説灰深度は29±3μmで,ショ糖ガム群(72±16μm)の60%,またキシリトールガム群(56±14μm)の48%へと有意に減少していた(p<0.01,p<0.05)。 2.5%POs配合シュガーレスガムを毎日利用することは,エナメル質の再石灰化を著しく促進することが示唆された。
著者
野村 裕信 上村 参生
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.187-198, 1996-04-30
参考文献数
39
被引用文献数
23 or 0

初期齲蝕形成エナメル質表面の脱灰・再石灰化現象を経時的に表面微細構造,結晶構造,表面化学組成および接触角の変化から解明することを目的として本研究を行った。AFM観察の結果,表層下脱灰エナメル質表面には,酸侵襲経路と考えられるエナメル小柱結晶間隙の拡大が認められた。また,4時間脱灰以降の表層下脱灰エナメル質表面には,健全エナメル質結晶とは異なる形状の再石灰化結晶が観察され,この結晶物質はbrushite結晶であると考察された。ESCA分析によるCaおよびPの相対濃度から,脱灰時間の経時的変化にともなって,Pの減少によるCa/P比の増加を認め,表層下脱灰エナメル質表面は,Pの欠乏状態にあることが明らかとなった。接触角の測定結果から,表層下脱灰エナメル質表面は,健全エナメル質表面に比べて,親水性に傾くことが明らかとなった。以上のことから,初期齲蝕発生過程を想定した表層下脱灰エナメル質の表面微細構造およびその表面性状を明らかにするとともに,エナメル質表面で起こる脱灰・再石灰化現象を微細構造学的,化学的および物理化学的に解明することができた。
著者
西口 栄子 伊ケ埼 理佳 鈴木 幸江 藤野 富久江 渡部 恵子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.314-321, 1995-07-30
被引用文献数
10 or 0

市販の各種清涼飲料水の歯牙エナメル質におよぼす影響を観察した。その結果、(1)各種清涼飲料水116銘柄について,そのpHを測定した結果,コーヒー飲料,ミルク入り紅茶飲料,茶飲料を除いて 他の清涼飲料水のpHは,2.3〜4.9の強酸性であった。(2)10銘柄の清涼飲料水に歯牙(中切歯)を浸漬して,エナメル質の脱灰状態を観察した結果,果汁入り清涼飲料水,無果汁清涼飲料水共に,pH 2.3〜3.7の清涼飲料水では,浸潰後1分間でエナメル質の脱灰が観察された。(3)1mM,10mM,100mMの乳酸および塩酸溶液に歯牙を浸漬して,エナメル質の脱灰状態を観察した結果,乳酸溶液塩酸溶液共に,1mMの濃度でエナメル質は脱灰した。その脱灰の程度は,塩酸溶液の方が強かった。これらの結果から,強酸性の清涼飲料水によって,歯牙エナメル質は脱灰し,その脱灰は,低pHによって起ると考える。
著者
坂本 治美 日野出 大輔 武川 香織 真杉 幸江 高橋 侑子 十川 悠香 森山 聡美 土井 登紀子 中江 弘美 横山 正明 玉谷 香奈子 吉岡 昌美 河野 文昭
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.322-327, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
25

近年,妊娠期の歯周病予防は周産期の重要な課題とされているが,日本における歯周病と低体重児出産や早産との関連性を示す報告は少ない.本研究の目的は観察研究により妊娠期の歯周状態と低体重児出産との関連性について調査することである.徳島大学病院の妊婦歯科健康診査受診者190名のうち,年齢バイアスの考慮から対象年齢を25~34歳とし,出産時の状況が確認できない者,多胎妊娠および喫煙中の者を除外した85名について,歯周状態と妊娠期の生活習慣や口腔保健に関する知識および低体重児出産との関連性について分析を行った.その結果,口腔内に気になる症状があると答えた者は61名(71.8%),CPI=3(4 mm以上の歯周ポケットを有する)の者は29名(34.1%),CPI=4の者は0名であった.また,対象者をCPI=3の群と,CPI=0, 1, 2の群とに分けてχ2 検定を行った結果,低体重児出産の項目,およびアンケート調査では,「歯周病に関する知識」,「食べ物の好みの変化」の項目について有意な関連性が認められた.さらに,ロジスティック回帰分析の結果,低体重児出産との有意な関連項目としてCPI=3(OR=6.62,95%CI=1.32–33.36,p=0.02)および口腔内の気になる症状(OR=5.67,95%CI=1.17–27.49,p=0.03)が認められた.以上の結果より,わが国においても,妊婦の歯周状態が低体重児出産のリスクとして関連することが確認できた.本研究結果は,歯科医療従事者による妊婦への歯科保健指導の際の要点として重要であると考えられる.
著者
渋谷 莉加 岡澤 悠衣 日野出 大輔 土井 登紀子 中江 弘美 玉谷 香奈子 吉岡 昌美 米津 隆仁
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.475-480, 2016 (Released:2016-12-08)
参考文献数
11

本研究の目的は,徳島市内在住の幼児に対するフッ化物配合歯磨剤利用とその口腔保健行動を調査することである.3~6歳児の保護者を対象として2010年では140名,2013年では116名へアンケート調査を行った.歯磨剤を「使わない」幼児は2010年調査の27.9%と比較して,2013年調査では12.1%と低い割合となった.2013年調査では歯磨剤利用者におけるフッ化物配合歯磨剤の利用率は100%となり,2010年調査の値と比較して歯磨剤使用後の洗口回数は有意に減少した(p<0.05).以上のように,2010年と2013年調査の比較による幼児のフッ化物配合歯磨剤使用状況において好ましい変化が認められた.しかし,依然として多数回の洗口を行う幼児も多く存在するなどの課題も明らかとなった.
著者
筒井 昭仁 中村 寿和 堀口 逸子 中村 清徳 沼口 千佳 西本 美恵子 中村 譲治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.341-347, 1999-07-30
被引用文献数
15 or 0

社会人の歯科的問題の程度を企業の生産性および経済面から把握することを目的とした。福岡市に本社を置く電力供給に関連する大型電気機械を製造する企業の工場部門の全従業員421名を対象とした。年齢は20〜65歳に分布していた。質問紙の配布留置法により過去1年間の歯科的問題に関連した1日休,半日休,遅刻・早退,作業効率の低下の情報を収集した。これらの情報から労働損失時間を算出し,さらに金額にも換算することを試みた。質問紙回収率は96%であった。工場全体で歯科的問題に関連する労働損失経験者は22%で,全損失時間は年間1,154時間,日数換算で144日であった。1人平均労働損失時間は年間2.85時間であった。この労働損失は生産高ベースで約1,200万円,生産コストベースで約800万円,人件費ベースで約400万円の損失と算定された。一企業を単位に歯科的問題に関連した欠勤や生産性の低下を把握,収集したとき社会・経済的損失は多大であることがわかった。DMFTやCPIなどの客観的指標にあわせてこれらの情報を明らかにすることは,労使双方に強いインパクトを与えるものであり,産業歯科保健活動の導入,展開に寄与するものであると考える。
著者
一宮 頼子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.196-214, 1995-04-30
被引用文献数
7 or 0

本研究は口腔内状況を表す指標が健康習慣や食生活とどのように関連するのかを検討することを目的に行われた。調査対象は1991年6月から1992年10月にわたって実施された,住民健康診断の受診者である20歳から91歳までの女性282名とし,以下の結果を得た。1. 本調査対象の成人女性は,年齢が上昇するのに伴って歯周疾患の重症化,喪失歯数の増加が認められた。2. 20-39歳群は朝食の欠食傾向や油脂類,肉類,加工食品の多用がみられた。さらに,70歳以上の高齢者になるとエネルギーがごはんに偏りがちであった。3. 50歳以上では山本式咀嚼能率判定法が口腔内状況の悪化に伴う咀嚼食品の変化を示していた。さらに50,60歳代では,適正体重を保っていない群は,歯周疾患状況が悪く,喪失歯数も多い傾向が認められた。4. 因子分析により年齢と口腔内状況,油脂類,緑黄色野菜類,肉類の摂取頻度が関連しあうことがわかった。さらに口腔内状況を表す指数として,末処置歯数,喪失歯数,処置歯数,歯周疾患指数の4変数が選択された。5. 咀嚼食品の種類やごはん,油脂類,緑黄色野菜類の摂取頻度は喪失歯数の影響を大きく受けていた。しかしながら,肉類,煮物,揚げ物の摂取頻度には喪失歯数より年齢の因子が大きく関わることがわかった。
著者
小野 幸絵 田中 彰 末高 武彦 澤 秀一郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.208-213, 2007-07-30
被引用文献数
6 or 0

2004年10月23日夕方に新潟県中越地方で最大震度7の地震が発生した.著者は,地震直後に村ぐるみで避難しその後も仮設住宅で生活しているY村住民を対象として,地震前,地震直後,仮設住宅入居以降(地震から約50日)における歯磨きの状況などについて,2005年4月にY村診療所患者のうち協力が得られた388名に調査を行った.その結果は以下のようである.1歯磨き回数は,地震前に比べて直後では減少したが,仮設住宅入居後では地震前よりわずかに増加した.また,歯磨きの仕方について地震前と入居後で比較すると,地震前と同じ者が半数以上で,雑になった者は10%あまりであった.2地震直後は,うがい液でうがいをした者あるいは口をすすいだ者が多かった.歯ブラシは80%以上が3日以内に入手した.3地震直後に必要としたものは,歯ブラシ,うがい用のコップ,うがい液の順で多かった.今回の調査参加者は一地域のみで年齢的にも偏りがあるが,被災時そして被災前後の歯磨き状況についての実態と需要を把握することができた.
著者
佐藤 節子 水枝谷 幸恵 日野 陽一 於保 孝彦
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.117-125, 2007-04-30
被引用文献数
5 or 0

容易に入手できるペットボトルや缶入り飲料の種類は多岐にわたる.われわれはう蝕予防の観点から62種類の飲料のう蝕誘発性に関する4つの要因,すなわち飲料のpH,中和に要するアルカリ量,う蝕細菌Streptococcus sobrinusによる酸産生および接着性不溶性グルカン合成を評価した.その後,4つの評価で得られたスコアを統合してう蝕誘発性リスクのレーダーチャートを作成した.その結果,炭酸飲料,スポーツドリンク,果・野菜汁および乳飲料のpHは,エナメル質脱灰の臨界値5.5より低かった.それらの飲料の中和には多量のアルカリが必要であり,特に果・野菜汁の中和には最も多くのアルカリを必要とした.また, S. sobrinusとの反応の結果,天然水飲料,無糖茶飲料および無糖コーヒー以外の飲料は, 5.5以下のpHを示した.さらに調査した飲料の半数が,接着性不溶性グルカンを産生した.レーダーチャートの評価により,全飲料は4つの特徴的なパターンに分類された.このレーダーテャートを用いて,茶飲料や天然水飲料等の低う蝕誘発性飲料とその他の高う蝕誘発性飲料を容易に区別することが可能であった.以上の結果から,われわれは飲料の潜在的なう蝕誘発性について認識する必要があること,そしてそのリスクについてのレーダーチャートは飲料の特徴を認識するのに有用であることが示唆された.
著者
齋藤 俊行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.310-317, 2011-07-30
被引用文献数
1 or 0

長崎大学は福島県の要請を受け,福島第一原発の北側20〜30km圏域に位置する人口約7万の南相馬市において在宅の自力移動困難者および避難所住民を対象に,歯科医療・口腔ケアを行った.同地域は原発事故により自主避難,屋内退避区域に指定され,医療・介護従事者を含む70%以上の住民が避難したが,多くの高齢者・障がい者は残っていた.市町村が収集した159人の自力移動困難者のリストをもとに,2011年4月4〜9日,医師・看護師・行政からなる6チームが高齢者や自立度の低い者から巡回診療を始めた.巡回時に口腔内観察と歯科医療・口腔ケアニーズ調査票への記入を依頼し,それをもとに必要性の高い者や自立度の低い高齢者・障がい者から,歯科医師と歯科衛生士のチームが翌日訪問し,応急処置と口腔ケアを行った.巡回以外では圏域内の避難所を訪問したが,自ら症状を訴え治療を希望する者は少なく,自立度の低いと思われる高齢者等を中心に積極的に声かけを行い介入,口腔内を診査し口腔ケアと応急処置を行った.6日間で87人(在宅15人,62〜93歳,避難所72人,1.6〜93歳)に口腔ケアや応急処置を,また複雑な治療が必要な者には再開し始めた歯科医院への紹介を行った.在宅,避難所いずれにおいてもプラークが多量に堆積した者が多く,ほとんどの者に義歯の清掃を含む口腔ケアを実施した.行政や自衛隊の協力のもとに,医療巡回チーム→歯科医療巡回チーム→歯科医院とつなげることで効率の良い支援が実施できることがわかった.
著者
福本 恵美子 川崎 浩二 林田 秀明 古堅 麗子 北村 雅保 福田 英輝 川下 由美子 飯島 洋一 齋藤 俊行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.176-183, 2007-07-30

指しゃぶりは約半数の乳幼児が経験していると報告されており,その習慣化は歯列に大きく影響を与える.本研究の目的は,指しゃぶりの誘発とその習慣化の要因を明らかにすることである.3歳児健康診査を受診した3歳児(36〜47か月)512名を対象とした横断調査をもとに,指しゃぶりの開始と習慣化に関連する要因について分析した.対象者の36.3%が指しゃぶりを経験していた.3歳児健康診査時において指しゃぶりが習慣化している児の割合は,全対象者の15.8%,指しゃぶり経験者の43.5%であった.指しゃぶり開始の要因解析結果から,有意であったものは「郡部」と「兄弟姉妹の指しゃぶり有」であり,オッズ比はそれぞれ1.67(p<0.05),3.05(p<0.001)であった.指しゃぶり経験者における,その習慣化にかかわる要因解析では,「郡部」「弟妹の妊娠無」「母乳終了月齢12か月未満」で有意な関連が認められ,オッズ比はそれぞれ2.56(p<0.05),5.00(p<0.05),6.14(p<0.001)であった.以上の結果から,指しゃぶりの開始には「郡部」「兄弟姉妹の指しゃぶり有」が誘発要因として挙げられ,指しゃぶりの習慣化を防ぐためには母乳栄養を少なくとも生後12か月までは継続することが重要であることがわかった.
著者
安藤 雄一 石田 智洋 深井 穫博 大山 篤
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.41-52, 2012-01-30
被引用文献数
3 or 0

歯科医院への定期受診の全国的実態は必ずしも明らかとはいえないため,われわれは20〜60歳代の男女から成る調査会社のモニタ計3万人に対してWeb調査を行い全国の概況把握を試みた.質問項目は定期歯科受診の有無と最後の歯科受診時期とその診療内容で,対象者の属性として性・年齢・居住地区・職業の情報を用いた.定期受診者の割合は35.7%(男性31.5%,女性39.9%)であった.過去1年間における歯科受診ありの割合は50.3%(男性45.9%,女性54.7%)であった.定期受診の有無についてクロス集計とロジスティック回帰分析を男女別に行ったところ,年齢階級,職業,居住地区,診療内容が有意性を示した.定期受診者の割合は高齢層が高く(男女共通),東北地方(男女共通)と北海道・四国・九州地方(女性のみ)で低かった.最後に受けた診療内容が「歯周疾患」・「歯ならびやかみ合わせ」・「その他」だった人は定期受診者の割合が高く,「むし歯」,「抜けた歯の治療」だった人では低かった(男女共通).職業では,男性において自営業,パート・アルバイト,学生などが低率を示した.さらに性・年齢階級で層別したロジスティック回帰分析を行ったところ,若い年齢層ほど,また女性より男性において職業による差が顕著であった.本調査結果は全国を代表するものとは言えないものの,歯科定期受診の全国的な実態を示す記述疫学情報として有用と考えた.
著者
森岡 俊夫 森田 恵美子 鈴木 和雄
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.437-441, 1982
被引用文献数
5 or 0

本研究はQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを用いることにより歯石・歯垢を含む歯面付着物や歯質着色が安全に, かつ容易に除去しうるかどうか研索したものである。これらの付着物や着色の除去は予防歯科学領域での関心事である。<BR>エネルギー密度1.2~2.7J/cm<SUP>2</SUP>/パルスのレーザー光を歯面着色, 歯質着色, 歯石・歯垢付着, 小窩裂溝内容物を有するヒトの抜去歯牙39歯のエナメル質に照射すると, 付着物や着色の部位や種類により除去の難易性に若干の差異はあるが, これらの物質は有機性窩溝内容物を含めいずれも除去された。また臼歯部の小窩裂溝についても, 有機性の窩溝内容物は除去され, 窩溝壁や深部が部分露出した。Q-スウィッチを使用しないノーマル発振の同レーザー光では, このような結果は得られなかった。除去後のエナメル質表面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で調べると, 歯面の照射部位にチョーク様のスポットやクレーターは認められなかった。これらの結果からQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを歯石・歯垢などの歯面付着物, 歯面・歯質着色および小窩裂溝内容物除去の目的に臨床的に用いうる可能性が示唆された。
著者
谷 宏
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.411-435, 1980
被引用文献数
4 or 0

近年の学童の齲蝕罹患の地域差を明らかにすることを目的として本研究を行なった。昭和52年から53年にかけ, 北海道4地区, 沖縄県2地区, 東京都世田谷区内の1地区に居住する小学校1年生から中学3年生まで, 8,672名について歯科検診を行なった。東京の小学校6年生と北海道の小学校6年生, および北海道の中学生については質問紙により, 清涼飲料の摂取頻度と歯ぶらしによる刷掃頻度についても調査した。その結果, 東京の学童は北海道や沖縄の学童に比べ, 歯科保健状態ははるかに良好であり, 北海道辺地の学童が最も悪かった。北海道の学童は齲歯数が多いばかりではなく, 東京や沖縄の学童に比べ, 前歯部に齲歯を持つ者の率がはるかに高く, 比較的齲蝕罹患性の低い前歯部の唇面齲蝕も多く, 中学2年生で約20%の生徒に唇面齲蝕がみられた。前歯唇面齲蝕は隣接面や舌面齲蝕とは異なり, 前歯部に齲蝕を持つ者の率が約20%程度蔓延すると, その地区で唇面齲蝕が発生するようになることが示唆された。<BR>北海道の学童では毎日清涼飲料を摂取する者が多く, 清涼飲料を毎日摂取する者は齲歯数も多く, 前歯に齲蝕を持つ者が多い傾向がみられた。北海道の学童では毎日歯をみがく者の率は全国平均に比べて高いが, 日常の刷掃頻度と齲蝕罹患性との間に明瞭な関係はみられなかった。<BR>市販の清涼飲料10種について糖量を分析した結果, sucrose量は8.3~14.1g/dl, glucose量は0.13~3.429/dl含まれていた。pHは2.5~3.5であった。また清涼飲料を毎日摂取している者とほとんど摂取しない者各々20名の歯垢を調べた結果, 前者は後者に比べ歯垢中の総生菌数に対するStr. mutansの存在比は極めて高かった。<BR>国民栄養調査の結果からも, 北海道の人々は他地域の人々に比べ清涼飲料をよく飲むようであり, 北海道の学童における齲歯の多発, 前歯の齲蝕発生は清涼飲料の摂取頻度の高いことと関連があると考えられた。
著者
西 真紀子 熊谷 崇 ウェルトン ヘレン
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.399-407, 2016 (Released:2016-08-03)
参考文献数
14

リスク評価(CRA)に基づき,患者個人にカスタマイズドしたう蝕予防,つまりパーソナライズド・カリエス予防(PCP)は日本人にまだ新しい医療サービスである.Rogersのイノベーション普及理論によると,普及の初期段階のキーパーソンは,イノベーションについての知識が高いとされている.われわれは,PCPプログラムへのアクセス困難が,この新しいプログラムの普及を妨げていると仮定した.アンケート調査による本横断研究の目的は,う蝕と歯周病のリスク評価を促進することを目的としたあるNPO 法人(PSAP)を通した成人(20 歳以上)を対象に,(1)PCP 利用者の割合を調べ,(2)PCPプログラムを受けていない理由をまとめ,(3)カリエスリスクについての知識がPCPへのアクセスと関係しているかを決定することにより,この仮定を調査することである.被験者はPSAPの初期の賛同歯科医院会員の患者(グループA:N=389),新規の賛同歯科医院会員の患者(グループB:N=78),新規一般会員(グループC:N=68)とした.主要なアウトカム変数は,患者によるPCPプログラムの利用,PCPプログラムを受けていない理由,選ばれたカリエスリスクファクター/インディケータの合計と,8つのリスクファクター/インディケータを選んだ回答者の割合である. グループAはPCPプログラムの利用率が最も高く(83.0%, 99% CI: 71.4–94.7),グループB (59.0%, 99% CI: 21.8–96.1),グループC (27.9%, 99% CI: 13.4–42.5)と続いた.グループAとCには,統計学的有意差があった(p<0.01).PCPプログラムを受けていない最も多い理由は,グループAB(グループAとBの混合)で"それについて知らなかった"(68.4%),グループCで"かかりつけ歯科医がしてくれない"(53.1%)だった.彼らはグループABのPCP非利用者よりカリエスリスクの知識が高く,リスクファクター/インディケータの中にはグループABのPCP利用者よりもよく知っているものもあった.これらの知見を一般化すると日本における潜在的なPCP利用者は,彼らの歯科医師がこのサービスを提供していないためにPCPプログラムへアクセスする機会がないのだろう. 結論として,PCPプログラムへのアクセスは,歯科医師が提供しているサービスに決定され,患者の知識はPCPへのアクセスに関係なかった.日本において社会決定要因へのアプローチを通してPCPプログラムの利用可能性を高めるために更なる努力が必要である.