著者
御堂 直樹 仰 暁清 池田 浩二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.182, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】温かいスープはそのエネルギー量から予測される以上の満腹感をもたらすことが報告されている。その要因としては、品温、風味、粘度、油脂量等が複合的に関与していると考えられるが、明確になっていない。本研究では要因の1つと推測される品温に着目し、満腹感との関連を評価した。品温から受ける感覚は、夏と冬では異なると考えられることから、季節の違いについても併せて検討した。【方法】健常な成人16名(男性7名、女性9名、28.6±5.8歳)を対象とし、異なるサンプルは別の日に評価するクロスオーバー法にて評価を実施した。サンプルは、市販の粉末キノコスープ1食を150 mlの熱湯に溶かし、65℃(温スープ)または10℃(冷スープ)まで冷却したものとした。対象者にはスープを朝食の代わりに摂取してもらい、Visual Analog Scale (VAS)により、官能、満腹感、食欲および満足感の評価を行った。同様の評価を、夏(室温28.0±0.0℃、外気温28.8±2.6℃)と冬(室温17.3±1.3℃、外気温0.4±0.7℃)に実施した。【結果】夏の評価では、温スープと冷スープによる満腹感は摂取直後に上昇し、徐々に低下するという同様の推移を示し、双方の間で有意差は認められなかった(直前9.4±3.3 vs. 8.1±2.5 mm、直後53.5±7.2 vs. 56.3±7.2 mm、30分後32.6±6.0 vs. 37.4±6.1 mm、60分後15.5±4.8 vs. 14.9±4.0 mm)。一方、冬の評価では、温スープは冷スープに比べ、摂取直後および30分後の満腹感が有意に高かった(直前10.0±3.4 vs. 7.1±1.7 mm、直後61.5±7.4 vs. 50.3±6.6 mm、30分後40.3±6.7 vs. 29.0±5.1 mm、60分後15.5±4.7 vs. 15.2±4.6 mm)。満足感についても同様の傾向が認められており、満腹感または満足感を目的変数、官能評価各項目を説明変数とした重回帰分析の結果、摂取30分後の満腹感や満足感はおいしさと相関した。従って、季節に合った品温のスープのおいしさが、満腹感や満足感をもたらす要因の少なくとも1つであると考えられた。