- 著者
-
仲宗根 瑠花
宇都宮 英綱
影山 悠
原田 敦子
福屋 章悟
前野 和重
来田 路子
大西 聡
起塚 庸
南 宏尚
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児神経学会
- 雑誌
- 脳と発達 (ISSN:00290831)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.4, pp.261-265, 2019 (Released:2019-10-26)
- 参考文献数
- 11
MRI所見が症候性developmental venous anomaly (DVA) の病態をよく反映していた症例を経験したので報告する. 症例は11歳, 男児. 炎天下で遊んでいたところ突然の嘔気・嘔吐に続き意識障害が出現し, 救急搬送された. 入院時, 左共同偏視と左顔面のけいれんを認めた. 入院時のCTで, 右側頭葉から側脳室三角部まで連続する火の玉状の高吸収域を認め, 脳血管奇形が疑われた. 入院3日目のMRIでは, 磁化率強調画像で右側脳室に向かって集簇する髄質静脈を認め, 集簇点から側頭葉脳表に向かって浅中大脳静脈と連結する著明に拡張した中心髄質静脈を認めた. この所見から, 表在還流型DVAと診断した. 同時に行った造影MRIでは, 中心髄質静脈の増強効果はみられず血栓化が示唆された. 第8病日の造影MRIでは中心髄質静脈は描出されており再開通と考えた. 抗凝固薬は使用せず点滴加療のみで症状は改善し, 入院10日目に独歩退院した. 症候性DVAの症状発現機序は未だ不明な点が多い. 本症例では, 中心髄質静脈に血栓化をきたし, 局所の脳静脈圧が亢進したことによる灌流障害を生じたことが症状発現の一因になったと考えられた. また, 血栓化の要因としては元来中心髄質静脈の還流障害があり, これに脱水が加わって血栓形成を助長したと推察された.