著者
伊東 きぬゑ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.171-176, 1959-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9

魚肉蛋白の基本調理形態による消化率の変化を検討するために、生魚、30%塩魚干魚(素干)、酢魚(30%酢)、煮魚(白煮)、蒸魚(素蒸)、炒焼魚(素ソテー)、揚魚(空揚)とした鮒肉を用い総合消化による人工消化試験を行った。その結果(加熱調理は総合消化のみ、加熱調理以外のものは総合消化に自己消化の加わったものについてである)。生魚、煮魚、蒸魚、干魚は最も良好であった。酢魚、炒焼魚、揚魚はこれに次ぎ、焼魚は稍消化不良であった。塩魚は全消化時間通じて著しく消化不良であった。自己消化は微々たるものであった。そのうち塩魚は最も低率であった。以上から基本調理法としては、消化の点から刺身、煮物、蒸物、干魚粉物が最もよく、酢物、炒焼物、揚物がこれに次ぎ焼物は劣り、塩物は著しく不良な調理加工法と言い得る。但しこれらの応用形態については今後の研究問題であり又調理のために生ずる可溶性窒素、アミノ態窒素、ペプトン態窒素についても検討せねばならぬと思う。
著者
伊東 きぬゑ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.229-232, 1962-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
3

各種調理形態に於ける基本調理を施した塩魚の消化率が最低で著しく低かったところから食塩がどの様に魚肉蛋白の消化率に影響を及ぼすかを検討するために、塩分濃度0、1、2、4、8、16%の食塩で処理した魚肉(鮒)を用いて、Pepsin及びPancreatinによる人工消化試験を行った。その結果A Pepsin消化について1) 全消化時間通じて、塩魚は生魚に比して、消化率が著しく、低く其の消化順位は、生魚1、2、4、8、16%塩魚の順で16%塩魚が最低であった。2) 生魚と1%塩魚間の消化率の低下度が他の濃度別間の低下に比して、著しく大であった。3) 塩魚に於ける各濃度別間の差はほぼ同様であった。B Pancreatin消化について1) 消化率の順位は全消化時間を通じて、生魚、1、2、4、8、16%塩魚の順で、生魚が最高で、食濃塩濃度の大なもの程消化率は劣っていた。2) 可溶性窒素とアミノ態窒素の生成率に於いて、生魚に比して、塩魚は著しく劣っていた。特に生魚と1%塩魚の間の著しい差は注目すべきものがあった。其他の各濃度別の個々の差は生魚と1%塩魚の差に比しては比較的小であった。3) ペプトン態窒素の生成量は、Pepsin消化の場合と異り食塩濃度の大なもの程大であった。このことからPancreatin消化に於いては、食塩がペプトン態窒素からアミノ態窒素への分解に大きい影響を与えるという事が考えられる。これは注目すべき現象である。