著者
杉江 信之 伊東 宗行 岩井 聡美 大河内 博雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.501-504, 1995-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

10歳女児のガンゼル(Ganser)症候群を報告した. 主訴は意識混濁, 脱力, 失神卒倒. 連日数分間の意識混濁があり最寄りの総合病院を受診し, てんかん(複雑部分発作)の疑いで, バルプロ酸, カルバマゼピンなどの治療を受けたが改善がなく, 当院に紹介入院となった. 意識混濁は, 数分から数十分にわたる朦朧状態であり, その間は質問に対して見当違いの応答や, 幼児様の言葉使い, 絵や文字の鏡像表記がみられた. 時折, 幻覚や失神卒倒もみられた. 発作時脳波記録では, てんかん性異常発作活動を認めなかった. 詳細なる問診の結果, 患児の家族(曽祖母)の死去と本症発病との関違性が明らかになり, 一連の臨床症状はてんかん発作ではなく, Ganser症候群であると判明した. その後, 抗てんかん薬を中止し, 専門医によるカウンセリングによって症状の改善をみた.