著者
岩佐 光啓 真田 睦郎 伊東 拓也
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.265-268, 2000
被引用文献数
1 4

1999年6月, 北海道沼田町在住の主婦(49歳)が自家の山で草刈りの合間の昼寝の後, 「ゴロゴロ」という雷のような耳鳴りを自覚し, 深川市の耳鼻咽喉科医院に来院した。この患者の外耳道左鼓膜一面に径約0.5mmの赤色小斑点が十数個と黒点1個を認め, 耳洗浄を行ったところ, 無弁類ハエ成虫一匹が生きたまま出現した。このハエを検討したところ, Family CarnidaeのCarnus hemapterus Nitzsch, 1818であることが判明した。本種は, ヨーロッパ, 北アフリカ, ロシア, アメリカ, カナダに分布し, 日本からは未記録であった。また, 本種が属する科も日本で初めての記録となり, 科の和名をチビコバエ科(新称)とし, 種の和名をトリチスイコバエ(新称)とした。本種は樹洞性をはじめとする様々な野鳥の巣のヒナに寄生・吸血することが知られているが, 今まで人体寄生例はなく, 今回が初めての症例報告となる。