著者
宮田 桂司 伊東 洋行
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.128, no.2, pp.104-107, 2006 (Released:2006-08-31)
参考文献数
10

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は脳腸相関が深く関与する疾患の代表である.致死的な疾患ではないが,患者のQOLに及ぼす影響は大きく,より有効な薬剤の開発が望まれている.その発症メカニズムは複雑であり,消化管機能異常の発現する部位や発現パターンに依存して下痢型,便秘型およびその交替型に分類され,特に便秘型IBSの便通異常に関する病態モデルがないなど,創薬にとっては難しい疾患の一つでもある.一方,下痢型IBSに関しては,臨床予測性の高い便通異常および痛覚過敏に関する病態モデルが複数存在している.現在,制限付きではあるが,米国でセロトニン5-HT3受容体拮抗薬が下痢型IBS治療薬として上市され,我が国においても5-HT3受容体拮抗薬の上市は間近である.さらに,腸管神経叢における情報伝達機構が明らかになるにつれ,新たな神経伝達物質をターゲットとした創薬研究も行われており,今後の展開が注目される.