著者
市坪 明子 伊東山 洋一 伊東山 徹代 野間 俊司 中村 智哉 河上 紗智子 池田 美穂 千代田 愛美 永田 英二 松崎 智範 工藤 理沙
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.333, 2010 (Released:2011-01-15)

【目的】パーキンソン病に対する理学療法とし ては、転倒なき歩行能力の確保が重要であり、訓練プ ログラムとしては様々なものがあるが、明らかな効果 を示すものは少ない。そこで今回、歩行能力の維持・ 向上を目的に、腹臥位療法を取り入れたところ、歩行 のみならずADLも改善し、効果が得られたので若干 の考察を加えてここに報告する。【方法】 対象者はパーキンソン病と診断された男女10名、年 齢は平均67.7±9.15才、発症からの経過は平均45.7 ±18.7ヶ月である。Yahrのstageは_II_が2名、_III_が4 名、_IV_が4名である。そこでこれらの症例に対して腹 臥位を20分間とって貰い、その前後で10mタイム、 10m間の歩数、10m中のすくみ足の回数を測定すると ともに、ADLはFIMとYahrの分類を用いて評価した。 統計学的処理は、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い て効果判定をした。有意水準は5%未満とした。尚、 本研究は症例に研究の意図を説明し、了承を得て実施 した。【結果】10mタイムは施行前34.0± 19.9秒、施行後25.0±11.5秒(p<0.05)。10m歩 数は施行前57.2±32.4歩、施行後43.0±23.9歩(p< 0.05)。10m中のすくみ足の回数は施行前3.2±1.4回、 施行後1.5±1.28回(p<0.05)。FIMの点数は施行前 58.2±19.3点、施行後65.9±17.1点(p<0.05)とな りYahrの評価では施行前3±0.67が施行後2.8±0.75 (p<0.05)となり、全ての項目に効果を示し、有意 差を認めた。【考察】パーキンソン病を有 する症例に対し、有働が提唱する腹臥位療法を取り入 れ、歩行改善を目標にプログラムを実施した。その結 果、歩行能力の改善のみならず、症例の中には一回の みの施行でADLが介助から監視レベルへと改善しYahr の重症度分類をも下げる程の効果を示した例もあっ た。その理由としては、腹臥位をとることで症例の持 つ自重により股関節ならびに脊柱がストレッチされ、 関節の可撓性の増大に繋がったからであろう。その事 で、姿勢アライメントならびに歩行時のダイナミック なバランスが改善され、パーキンソン病に特有のすく み足や突進現象の改善に効果を示したと考える。今回、 腹臥位療法の効果について確認できた事で、在宅や施 設でも簡単に出来る訓練法として更に推奨される訓 練法と考える。ただ、今回試行時間や持続性について は検討しておらず、今後とも研究を続けていきたい。 【まとめ】1.パーキンソン病を有する症例 に対して腹臥位療法を施行した。2.腹臥位療法 を行った前後で、歩行能力、ADLともに改善が見られ、 効果が確認できた。3.腹臥位療法の効果の持続 性や試行時間などは、今後検討が必要と考える。