著者
伊藤 寿隆
出版者
東北学院大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

◇研究の目的大学経営人材として職員の役割に期待が集まっているが、大学の規模(職員数)によっては、単独で職能開発に取り組むことが難しい状況にある。そこで、大学経営を担う人材の職能開発には、複数の大学連携による取り組みが有効と考えた。本研究は、大学職員の職能開発(SD)に関する地域別の実態を明らかにしたうえで、仙台地区の私立大学において実行可能性のある職能開発プログラムの提起を目的として実施した。◇研究方法1. 大学職員の職能開発に関する将来構想と先行事例を概観するために文献による調査を行った。2. 職能開発の実態と課題を抽出するため、仙台地区の私立大学にアンケート調査を実施した。3. 京都地区の大学とコンソーシアム組織及び札幌地区の大学にヒアリング調査を行い、仙台地区における実態との比較による検証を行った。◇研究成果調査の結果、職能開発の実態は大学の職員数や事務組織の規模による差があることを把握できた。仙台地区においては、大学単独では職能開発が進んでいないといった課題が明確になった。職能開発の機会が限られていることは、大学間競争の際に脆弱性をもたらすこととなる。一方で京都地区においては多様な職能開発のプログラムが用意されていることから、大学職員の職能開発には大きな地域間格差があることが実証できた。また、大学職員の役割の高度化・複雑化への対応として政策立案力などの資質を備えるため、職能開発プログラムの内容もより進化したものが求められるようになり、ますます大学単独での実施が困難を極めるようになってきた。このような実態を踏まえ、仙台地区私立大学における共通の課題を解決するためには、大学協働型職能開発プログラムが不可欠と考えられる。導入するまでには、いくつかの環境整備が必要となるが、学都仙台コンソーシアムなどの機関で具体的な方策を検討できるよう基礎資料の提示を計画している。