著者
伊藤 晴祥
出版者
公益財団法人 損害保険事業総合研究所
雑誌
損害保険研究 (ISSN:02876337)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.101-127, 2017-08-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
11

小論では,積雪がある閾値以下となる日数を指数とする雪デリバティブを利用することによりどの程度企業価値が高まるかを検証した。まず,新潟県南魚沼市及び魚沼市の全16か所のスキー場入込数を利用して,15か所のスキー場で積雪リスクと入込数との相関係数の絶対値が0.4以上であり,殆どのスキー場でも積雪がリスク要因であることを示した。雪デリバティブの評価にあたり,その非完備性を考慮し,意思決定者のリスク回避性を価値評価に織り込むためにWang変換を利用した。シャトー塩沢のデータを利用した分析の結果,λが0.5以上の中程度リスク回避的な意思決定者である場合,雪デリバティブの安全割増が20%以下であれば,雪デリバティブの利用により企業価値が高まることを示した。現在保険会社から提供をされている天候デリバティブの安全割増は60%以上であると推計されており,このことが天候デリバティブの利用が進まない一因であるとも考えられる。