著者
伊藤 泰子
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.201-215, 2008-12-23

「聞こえない」状態を医学的障害としてみる場合は、「聞こえない人、聞こえにくい人、聾者、聴覚障害者、難聴者、補聴器装用者、人工内耳装用者」などの言葉で表される。そして、「手話を使う人」のみが聞こえないことを医学的障害として捉えるのではなく、手話を使う、聞こえないことを社会文化的な違いとして捉える言葉である。次に口話法優先教育か手話法優先教育かのどちらかを受けたかによって、「聞こえない人」はグループ分けできる。そして、これらのグループ分けは、社会での立場、すなわち、アイデンティティについてのグループ分けにつながる。「聞こえない人」は、異なる「社会での立場」によって分かれる。障害者として自助努力を強いる同化主義的社会、と公的支援を得られる手話言語をもった社会ではアイデンティティが変化する。人工内耳、補聴器、口話法訓練など自助努力をして「聞こえる人」の社会で生きるか、手話通訳支援を提供され、手話通訳者の養成や手話を公用語にしようとする法律などの公助努力が進められている社会に生きるかによってアイデンティティは異なる。本稿では異なる「聞こえない人」のアイデンティティがあることを検証することにする。
著者
吉田 美穗子 伊藤 泰子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_11-5_16, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
13

自然界では量的な大きさに左右されない、ある図形の部分と全体が相似であるという自己相似性が多く存在している。また、造形的なリズムの中での意外性の混在はわれわれに心地よい環境をもたらし、デザインを豊かなものにする。フラクタルはこの両面の性質をもっている。われわれにとってフラクタル幾何学図形を組み込むことは、自然界に存在する形のシステムを内包する新しい建築・インテリア形体を造ろうとする試みであると考える。フラクタル図形のもつ自己相似性のプログラムをCADに転用して空間構成を行った。大きさを持たないフラクタルに尺度を与えることで空間は幾何学図形の「美」を感じさせる、より自然形体に近いものとなった。フラクタルは居心地の良い空間を生成することのできる有効な手段であるとの確信を得た。