著者
佐久間 悠太
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.135-158, 2014-02-28
著者
手嶋 大侑
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.38-58, 2015-03-30

「三宮」は通常、太皇太后・皇太后・皇后の総称とされているが、史料を見ると、太皇太后・皇太后・皇后を指していない事例に多く出会う。この問題を解くために、各時代の史料を検討した結果、「三宮」の語は時代によって概念が変化していたことがわかった。すなわち、藤原威子の立后以前においては「三宮」は「三つの宮」の意で使用されており、「宮」と称されるものは「三宮」に含まれることがあった。そして、威子の立后以降、「三宮」は徐々に「三后」と同意語であるとの認識が浸透していき、十五世紀には完全に定着した。また、「三宮」概念に関連して、「准后」と「准三宮」も考察し、封千戸を与えることは「准后」に付随し、年官年爵は「准三宮」に付随することも指摘した。
著者
大野 裕美
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.91-106, 2008-12-23

本研究では、日本におけるシュタイナー教育の動向を紹介し、普及を推進した力は何かを分析した。教育分野において数多くの理論や思想が生まれては消えていくなか、約90年もの実績があり世界58カ国に広がるシュタイナー教育は国内でも注目されている。シュタイナー学校の授業形態は、ユニークな特徴ある方法のため国の定める学習指導要領にそぐわない。それゆえ、公認は容易でなく先進諸国のなかで公認されないシュタイナー学校は我が国だけであったが、2005年に公的に認可されたシュタイナー学校が誕生した。このことは、世界のシュタイナー教育の動向のみならず、我が国の教育の歴史において公教育のあり方を問う点でも画期的なものである。本論文では、はじめにドイツに端を発したシュタイナー教育の思想を概観し国内への移入および展開を紹介し特徴を明らかにした。次に、近年隆盛になっている国内でのシュタイナー幼児教育の位置づけを行い、シュタイナー学校との接続を考察した。さらに、公認シュタイナー学校の設立経緯として「学校法人シュタイナー学園」の事例を紹介し、今後のシュタイナー教育と公教育との関係やあり方を含めて論じた。
著者
村元 麻衣
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.151-170, 2006-12-24

本論文でほまず1章で、日本語とドイツ語におけるオノマトペの定義を検討した上で、オノマトペの定義をさだめる。2章では、ドイツ語の3つの辞典上でのオノマトペの記述を比較考察した後、ドイツ語のオノマトペの動詞・名詞・副詞といった品詞による分類と、子音に着目した音韻形態の分析を行う。さらに音と意味との関係を考察し、ドイツ語のオノマトペの特徴を探る。3章では、日本の文学作品のオノマトペとそのドイツ語翻訳版との比較、ドイツの文学作品のオノマトペとその日本語翻訳版との比較をし、それぞれの現れ方からドイツ語のオノマトペの表現法と特徴を考察する。4章では、ドイツ語のオノマトペの変遷と発展にふれ、この研究のまとめとした。日本語のオノマトペは擬音語・擬態語を指すのに対し、ドイツ語のオノマトペは主に擬音語に焦点が当てられている。ただし、例えば日本語のオノマトペ「バタバタ」のように、鳥が羽ばたく際に出る音としての「バタバタ」と、鳥が羽ばたく様を描写した「バタバタ」のような、両者にまたがるものもあり、ドイツ語のオノマトペも同様に擬音語と擬態語との区別がつきにくいものがある。また日本語のオノマトペは副詞が多く、「バタバタ」のように同じ音が二回あるいは三回重複した形で構成されているものが多いため見分けがつきやすいが、ドイツ語のオノマトペは動詞が多く、ある音あるいは様態を模写する働きの擬音・擬態の部分、つまり「音の響き」が、「quatschen(ベチャベチャしゃべる)」のように語全体に溶け込み一語となっているため、オノマトペとしての区別が付きにくいのである。本論文ではこの相違を、それぞれの「オノマトペ性」とし、分析を試みた。
著者
気駕 まり
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.115-124, 2004-01-10

女性のみを処罰の対象とする刑法の自己堕胎罪は、ジェンダーの視点から捉えて問題があると言わざるをえない。この自己堕胎罪について、保護法益を基点にして現代の日本に存在する意味、その矛盾点、背景にある文化的規範などを考察していきたい。まず、堕胎は殺人と同等とするには、あまりにも保護法益の前提量が違いすぎることを指摘する。次に、その前提の内容を検証することによって、そこから女性の自律した身体であり続ける権利を導き出す。このことによって、堕胎罪の法益を設定する前段階における一つの違法行為、男性の側からは発想しにくいであろう女性の権利の侵害行為が明らかになる。妊娠しないままでいる権利を法益とした場合、避妊しない性交は法益の侵害を意味する。行為の主体は男性で、客体は女性である。望まない妊娠があって、自己堕胎が発生するとしう因果関係を考慮するのなら、まず確立しなければならないのは、堕胎罪の運用方法より、この権利侵害の「犯罪」であろう。「犯罪」の刑罰を設定することによって、主体である男性は規範を動機づけられ、女性の権利侵害を安々と行わなくなる。これは、堕胎を減少させ、結局のところ堕胎罪が求める規範に合致するのである。
著者
浅岡 悦子
雑誌
人間文化研究 = Studies in Humanities and Cultures (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.68-44, 2017-01-31

卜部氏の職掌は亀卜を行うことだけではなく、大祓にも従事していた。卜部氏の氏文である『新撰亀相記』では卜占の起源のみでなく、大祓の元となったスサノヲ追放神話を詳しく述べ、卜部氏の関わる祭祀の起源を説く。亀卜・大祓などの神祇祭祀に供奉していた卜部氏は、『新撰亀相記』や『延喜式』によると伊豆・壱岐・対馬の三国の卜部氏から取られた卜部である。この三国の卜部氏の系譜には異同や混同が含まれるが、概ね中臣氏と同祖と見て問題ない。宮中の卜部は宮主―卜長上―一般の卜部という昇叙形態をとっており。『養老令』の段階で宮主三人、卜長上二人、一般の卜部最大十五人が取られていた。『新撰亀相記』では卜部の他に中臣・忌部などの祭祀氏族がわずかに確認できるが、『新撰亀相記』に記される神話の殆どが、卜部が関わる神祇祭祀について触れたものである。
著者
井上 禎男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.155-193, 2006-06-24

フランスにおける情報公開法制と個人情報保護法制とのかかわりを整理し、2004年改正1978年法下でのフランスの個人情報保護法制につき、とくに当該分野の第三者機関であるCNIL(情報処理と自由に関する全国委員会)の実務に焦点をあてながら検証する。
著者
小島 俊樹
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.177-190, 2011-02-01

名古屋市立高校における学校納入金の未納者数は、09年度6月において前年度の5倍以上となった。この原因は不景気を背景として、高校生の世帯に貧困層が拡大しているためと推測した。子どもの貧困率として相対的貧困率がよく採用されるが、これでは高校生のように養育費がかかる年齢には低すぎる基準と思われる。むしろ、自治体が用いる基準である、給与所得控除を足し夫婦2人世帯で年収450万円(2005年)が妥当な基準と考える。これを基準とすると、高校生世帯の約30%が貧困層であると推定される。授業料減免者数の生徒総数に対する割合の推移(1996年~2006年)をみると、11年間で約3倍になっており、貧困層の拡大が急激にすすんでいる。名古屋市立の全高校を対象にした調査から、授業料減免者を普通科・職業科・定時制で分けてみると、職業科・定時制に集中していることが明らかになった。さらに、授業料減免の対象者が市民税非課税で、ほぼ相対的貧困基準に相当するため、そこから高校生世帯の貧困基準に基づき推定してみると、職業科・定時制生徒の世帯の半数前後が貧困層に該当すると考えられる。最後に、学校納入金未納者の担任への調査を通じて、高校生の貧困世帯は、今回の不景気により親の失業などで新たに貧困層へ加わる世帯と、すでに貧困世帯であったがリストラや賃下げなど今回の不景気のしわ寄せで更に貧困となった世帯、これらの2類型があると思われる。
著者
米勢 治子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-106, 2006-01-10

1990年の出入国管理及び難民認定法の改正に伴い、ブラジルを中心に多くの日系人が来日するようになった。愛知県は日系労働者が集住している地域であるが、出稼ぎとして来日した彼らが、地域住民とコミュニケーション手段を持たないまま、滞在が長期化するなかで、いくつかの問題が顕在化してきた。多文化共生社会到来との掛け声のなか、彼らへの言語保障をどのような形で行うのか、具体的な施策が必要とされている。戦後、国内の日本語教育は留学生教育として発展し、日本の経済成長と国際情勢の変化ともにさまざまなタイプの外国人を受け入れてきた。彼らへの日本語教育の進展に伴い、その専門性も確立されたが、地域日本語教育と呼ばれるボランティアを主体とした新たな局面を迎えるにあたって、今日的な課題が生まれた。すなわち、日本語教育を求める学習者への対応は可能であっても、日本語教育が必要と思われるすべての人々への対応にはいたらないことである。外国人住民の日本語能力に関する調査はないが、その潜在的な学習ニーズを推測することによって、日本語教育実施状況とのギャップが大きいことが分かる。受け入れた人々への言語保障の視点を持つならば、ボランティアによる地域日本語教育では限界がある。移民先進国の第二言語教育施策には、参考にすべきことも多い。そして、日本語学習機会が保障されてもなお、ボランティアによる活動は、多文化共生社会構築のために必要不可欠なものである。
著者
樋澤 吉彦
出版者
名古屋市立大学大学院人間文化研究科
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 = Studies in humanities and cultures (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.32, pp.25-40, 2019-07

本稿は、2016(平成28)年7月26日未明、神奈川県相模原市にある障害者施設「津久井やまゆり園」において発生した障害者支援施設入所者等殺傷事件(「事件」)を契機とした精神保健医療福祉の動向に関する第一報及び二報に続く第三報(最終報)として、精神保健福祉分野のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)の職能団体である日本精神保健福祉士協会(協会)による、「事件」を経て2017(平成29)年2月8日に公表され、同28日、第193回国会に上程され結果的には継続審議の後いったん廃案となった精神保健福祉法改正法案(29年改正法案)に至るまでに発出された11の見解・要望の詳解を行うことを目的としている。29年改正法案「当初」案までの協会の一貫したスタンスは、(1)29年改正法案は「事件」の「検証」の場でなく、2013(平成25)年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律改正(25年改正法)第41条第1項及び附則第8条に基づき2016(平成28)年1月7日に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」(あり方検討会)において議論すべき、(2)「社会防衛」、「再発防止」のための措置入院制度改革には反対、という2点に収斂させることができるが、(1)については当該スタンスを明示している見解公表より前に再開されたあり方検討会の場に、「事件」の「検証」目的のために厚生労働省内に設けられた「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」により2016(平成28)年9月14日に公表された「中間とりまとめ~事件の検証を中心として~」(「中間とりまとめ」)が資料として配布されている。また(2)のスタンスは措置入院制度の中身ではなくそれの名目上の提案趣旨(目的)のみに対するものであることが、29年改正法案「当初」案の趣旨の削除とその直後の見解によって顕在化する。29年改正法案「当初」案の提案趣旨は、参議院厚生労働委員会の場において(同様の事象の)「再発防止」に関する箇所が法案の中身の実質的な修正はなされないまま厚労相の「お詫び」とともに突如削除された。しかし法案内容自体は修正されず、当該委員会は、そもそもの根拠(立法事実)の存否をめぐって混乱し、廃案に至ることとなる。協会は以上の顛末に比して趣旨の削除プロセスに肯定的評価を示している。協会の肯定的評価の姿勢の背景には、法案における排他的職能の要望が示唆される。29年改正法案は25年改正法の附則に基づくものであるということを名目にしながら、実際は「事件」を契機として措置入院制度に焦点化されている。協会が本来この時点で行わなければならないことは、中身はそのままで外装のみ「社会復帰(の促進)」という趣旨へと転換された29年改正法案の本質的な趣旨の剔出とその批判的検証でなければならない。しかし協会は、この検証を「単なる批判」として切り捨ててしまっている。このことは29年改正法案「当初」案における本質的な趣旨―すなわち「再発防止」―を逆に補強する可能性があると考える。
著者
原口 耕一郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.204-188, 2008-06

『古事記』『日本書紀』においては、かなり古い時代の記事から隼人は登場する。この隼人関係記事の信憑性をめぐって、大きく二つの議論がある。一つは天武朝以降の記事からならば、それなりに信を置くことができるとする理解であり、これは現在の通説になっているといえよう。もう一つは、天武朝より前の時期の記事にも史実性を認めようとする理解である。小論は、これまでの隼人研究史を回顧し、隼人概念の明確化をはかり、『記・紀』に史料批判を加え、天武朝より前の隼人関係記事については、ストレートには信を置きがたいことを論じようとするものである。つまり、可能な限り通説の擁護を目指すことが小論の目的である。まず、文献上にあらわれる隼人様を整理し、隼人概念の明確化を行う。次に考古資料と隼人概念との対比を、最近の考古学研究者の見解を踏まえながら行う。さらに畿内隼人の成立について触れる。その結果、『記・紀』編纂時における政治的状況、すなわち日本型中華思想の高まりの中で、政治的に創出された存在としての隼人の姿が明らかにされるであろう。このような、現在の隼人理解において中核的なテーゼをなす、「隼人とは政治的概念である」という主張を確認したうえで、天武朝より前の隼人関係記事は漢籍や中国思想により潤色/造作を受けていることを明らかにする。
著者
原口 耕一郎
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.204-188, 2008-06-25

『古事記』『日本書紀』においては、かなり古い時代の記事から隼人は登場する。この隼人関係記事の信憑性をめぐって、大きく二つの議論がある。一つは天武朝以降の記事からならば、それなりに信を置くことができるとする理解であり、これは現在の通説になっているといえよう。もう一つは、天武朝より前の時期の記事にも史実性を認めようとする理解である。小論は、これまでの隼人研究史を回顧し、隼人概念の明確化をはかり、『記・紀』に史料批判を加え、天武朝より前の隼人関係記事については、ストレートには信を置きがたいことを論じようとするものである。つまり、可能な限り通説の擁護を目指すことが小論の目的である。まず、文献上にあらわれる隼人様を整理し、隼人概念の明確化を行う。次に考古資料と隼人概念との対比を、最近の考古学研究者の見解を踏まえながら行う。さらに畿内隼人の成立について触れる。その結果、『記・紀』編纂時における政治的状況、すなわち日本型中華思想の高まりの中で、政治的に創出された存在としての隼人の姿が明らかにされるであろう。このような、現在の隼人理解において中核的なテーゼをなす、「隼人とは政治的概念である」という主張を確認したうえで、天武朝より前の隼人関係記事は漢籍や中国思想により潤色/造作を受けていることを明らかにする。
著者
村田 志保
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.205-219, 2009-12-23

接頭辞「お」は、日本語の敬語体系に属しており、尊敬語、謙譲語、美化語に関係している。しかし、接頭辞「お」の付いた形(「おかばん」「お菓子」「おやつ」など)自体は、尊敬語、謙譲語、美化語ともに変化はなく、みな同じ形である。そのため、日本語教育において、接頭辞「お」を扱う場合、同じ形をどう教えるかが、問題となってくる。本稿では、日本語教育において、接頭辞「お」をどのように扱うとより学習しやすくなるのかを踏まえながら、接頭辞「お」の持つ用法分類を検討した。先行研究より接頭辞「お」は、一般的な敬語分類において、「尊敬語」「謙譲語」「美化語」に関連していることがわかっているが、実際の現場においては、「美化語」ではなく、「丁寧語」という解釈もある。このような扱いについて、敬語の5分類にこだわらず、接頭辞「お」の用法として学習者に説明するという立場から、「おかばん」などの語を代表とする[敬意の「お」]、「お菓子」などの語を代表とする[丁寧の「お」]、「おやつ」などの語を代表とする[名詞化した「お」]という三つの用法に分類するという仮説を提案し、それらについての検証方法を考察した。
著者
谷口 幸代
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.354-340, 2008-12-23

大正七年自費出版の『愛の詩集』、『抒情小曲集』が認められ、室生犀星は詩壇に登場した。そして長い放浪生活から抜け出て、東京に居を構える。新進詩人はその翌年に「中央公論」に投稿した『幼年時代』など三作が認められ、一躍、文壇に登場した。以後、詩、俳句、短歌、小説、随筆、童話と、多岐にわたる足跡を残すことになる。その犀星の十五冊の日記は現在、新潮社版の全集別巻一、二に収められている。日記には原稿料や印税がそのつど丹念に書き込まれており、昭和時代の一部には原稿料を受取るまでの経過や交渉の事情まで書き留めているものもある。この原稿料授受の記録を注解しながら、筆一本の売文生活の実態と文士気質を明らかにすることが、小稿の目的である。犀星が文壇に登場した大正時代は、新聞の発行部数が飛躍的に増え、雑誌界では各種の女性誌が次々に創刊され、原稿料が飛躍的に上がった時である。総合雑誌の「中央公論」と「改造」というライバル雑誌での犀星の評価は原稿料ではかることができるほどである。昭和時代は円本ブームで始まり、戦時中に戦費調達のため源泉徴収制度が施行され、昭和二十年代は、敗戦直後の物資不足と激しいインフレによる原稿料の急騰、新円発行の金融緊急措置令による不況のため、支払の遅延や未払いの様が書き込まれている。昭和三十年代の週刊誌ブームの頃、創刊間もない「週刊新潮」の目玉だった谷崎潤一郎『鴨東綺譚』がモデル問題で中絶したとき、ピンチヒッターとして立ったのが犀星だった。円地文子は「原稿を書くことは文学者の生命なのだから、それによつて得る報酬もなおざりに考えてはいけないというお考えだつた」と回想する。
著者
伊藤 静香
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.99-107, 2013-06-30

日本におけるジェンダー平等政策は、新自由主義的改革が展開した時代と同時期に「男女共同参画」という国策で進められた。特に日本の経済活性化のために、女性の労働力活用が求められ、女性の就労を支援するさまざまな法・制度の整備が進められた。しかしながら、経済的・政治的にも女性の参画や男女の格差解消は十分ではない。「日本的経営」でオイルショックによる経済危機を乗り切った日本では、ジェンダー分業を内包したまま女性の労働力活用が促進され、新自由主義的改革のもとで女性の自立と社会参画をめざす「男女共同参画」政策が進められた。その結果、女性たちは男性社会のルールの中で、「競争」と「選別」を余儀なくされ、その選択は「自己責任」に帰されている。筆者が研究テーマとする女性/男女共同参画センターにおける労働現場では、低賃金・非正規雇用の問題などが指摘され、女性の就労における課題の典型であると言われている。本研究ノートは、筆者の研究テーマである女性/男女共同参画センターのあり方に対する視角を固めることを目的として、日本における新自由主義的改革と男女共同参画政策の関係性に焦点をあてた研究成果をアメリカのフェミニスト理論家であるナンシー・フレーザーの論考からヒントを得て、整理・検討を試みた。