著者
高田 寛治 伊藤 由佳子
出版者
京都薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インスリンをペプチド薬の代表として取り上げ、その経皮吸収を可能とする新規のDDSであるマイクロニードルの製剤としての可能性について研究を行った。インスリン含有マイクロニードルを調製し、-80、20および40℃で1および3ヶ月間インキュベートしたが、いずれの条件下においても約99%の残存率を示した。ヘアレスラットの皮膚にEvans Blueで着色を施したインスリン・マイクロニードルを投与した後、組織学的観察を行ったが、皮膚への障害は認められなかった。また、in vivoにおける溶出性について検討を行ったところ、低水分環境下にあるにもかかわらず投与3時間後にはほぼ溶出が完了していた。吸収率を求める目的でエリスロポエチンEPO・マイクロニードルを調製し、マウス皮膚に投与を行い、その後24時間にわたり血漿中EPO濃度を測定し、薬物動態学的解析を行ったところ、約80%のバイオアベイラビリティBA(吸収率)が得られた。他の蛋白薬への適用の可能性を探索する目的でインターフェロンおよび成長ホルモンを含有するマイクロニードルを調製してラットを用いてin vivoにおける吸収実験を行った。その結果として得られたBA値は、インターフェロンで100%超、成長ホルモンで87%という値が得られた。さらに多糖類の代表である低分子ヘパリンについてもラットにて可能性試験を行ったところ、約80%のBAが得られた。以上の薬物動態試験に引き続いて、インスリン・マイクロニードルからのインスリンの薬効薬理実験をビーグル犬を用いて行った。1頭あたりインスリンの1.0および2.0単位をマイクロニードルとして投与した後、血糖降下率を8時間にわたり測定したところ、同量のインスリン皮下注射時と同等の血糖降下率が得られた。EPOについてもラットを用いて薬効薬理試験を行ったところ、1000および2300IU/kgの投与量時に有意な循環血液中赤血球数の上昇が認められた。以上より、マイクロニードルは新規の経皮吸収DDSとして極めて有望であるとの結論に達した。