著者
宮本 英揮 長 裕幸 伊藤 祐二 筑紫 二郎 江口 壽彦
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.86-91, 2009-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
5 2

本研究では,静電容量式水分センサー・EC-5 (Decagon Devices 社)の出力電圧(V ) に及ぼす間隙水の電気伝導度(σw)の影響を実験的に評価し,任意のσw に対応し得るセンサーの校正方法を検討した.EC-5 は,従来の5 MHz 型静電容量式水分センサーに比べ,σwの影響を受けにくいセンサーである.とりわけ,θ ≤ 0.15 m3 m-3の低水分域では,σwの大小によらず,メーカーが推奨する校正式に基づき,V 値から体積含水率(θ) を決定可能である.しかし,0.15 m3 m-3を超える水分域では,同一のθを持つ土壌であっても,測定されるV 値はσwによって大きく異なるため,V 値からθを適切に評価するためには,σwに関する校正式の修正が必要であることが明らかになった.本研究では,σwの影響を考慮したセンサーの校正方法として3点校正法を提案した.同法を適用するには,σwが既知であることが前提となる.そのため,σwが大きく動的に変化する環境下では,EC-5の単独利用で高精度の水分計測を実施できないものの,σwの変化量が小さい場合に限れば,同法で算出した校正式に基づき適切に水分計測を実施可能である.飽和水分条件におけるV 値のみから,様々なσwの土壌の校正式を即座に得られる3点校正法は,θの異なる土壌に対して実施する従来の校正に比べ,はるかに簡便であると考える.本研究では,数ある土壌および静電容量式水分センサーの中の一条件における検討である.よって,今後は,他の土壌やセンサーについても3点校正法の有効性を検討するとともに,σwの動的環境下における高精度水分計測法の確立を試みる予定である.